<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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ずっと以前から映画やテレビの時代劇に私はちょっと不満を抱いている。
それは舞台のほとんどが「江戸」であるということだ。

遠山の金さん、
鬼平犯科帳、
大岡越前、
むっつり右門捕物帳、
剣客商売、
大江戸捜査網、
長七朗天下御免

いずれも江戸ばかり。
江戸以外はないかいな、と考えてみたら、

水戸黄門(全国漫遊)、
NHK大河ドラマ(全国色々)、
清左衛門残日録(海坂藩=庄内藩)

などと、全国津々浦々が舞台になるか、地方が舞台。

つまり私は何が言いたいかというと大阪が舞台の時代劇の少ないこと。
いくら考えても1作品も思い浮かばない。
桂枝雀が主演して途中で主演が芦屋雁之助になってつまらなくなった「なにわの源蔵」は明治時代が舞台なので時代劇というには無理がある。

どうして大阪舞台の時代劇ができないのだろうか。
江戸の武家社会に対して大阪の商人社会。
江戸時代の大阪を舞台にした面白そうな経済時代劇ができそうに思うのだが、だれもチャレンジしたものはいないようだ。

古地図の出版の世界も東京~江戸というものは時々出版されるものの、大坂~大坂というようなものは、なかなかお目にかかる機会がなかった。

創元社から出版された「大阪古地図むかし案内」本渡章著は、江戸時代に出版されたいくつかの大阪古地図をたどりながら、大阪の歴史と文化と地理を楽しめる珍しい一冊だった。

私自身、大阪は生まれた街であるだけに昔の姿には興味津々。
小学校5年生あたりから大阪の歴史を習ったけれども、それがもちろんすべてではない。
例えば、住友の銅精錬所はどこにあったのか、なんてことは長い間知らなかったし、どこが島の内でどこが船場なのか、大阪の地名の明確な場所も知らなかった。
今回この古地図むかし案内を読んでそれらの場所がどこにあったのか、はたまたどのような街造りが成されていったのかが概略だけでもわかってきて、非常に楽しかった。

また、そういう地理的な面だけではなく、大和川の付け替えには反対する人たちがいた、というような「江戸時代って、けっこう民主的だったんだ」と思わせるようなエピソードも紹介されていて引き込まれる。
ただ単に今の街並みと比べるだけではなく、遠い江戸時代を身近に感じることができるようになる不思議なガイドブックなのであった。

なお、折込み付録の古地図はもっと鮮明な印刷をしていただきたかったのが、残念ではある。


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