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大好きだった二人のベテラン個性俳優が相次いで死去した。

映画やテレビドラマでは主演のスター俳優はもちろん欠かすことのできない要素だが、この人が脇役にいるからこそ物語が引き締まる、という俳優はある意味主演俳優よりも大切なときがある。
そういう意味では北林谷栄と佐藤慶というベテラン個性派俳優は「出演すると物語が引き締まる」役者だったことは間違いない。

両者とも主演をはる役者ではない。
かと言って誰でも良いと言う役を演ずるような役者でもない。むしろこの人だからこそピッタリとマッチするという役柄が多かったのではないだろうか。

残念ながら私はそんなに古い日本映画やテレビドラマは知らないのだが、例えば北林谷栄の出演した映画で最も印象に残っているのは岡本喜八監督の「大誘拐」(1991年東宝)。
警察役の緒形拳を煙に巻く絶妙な演技は忘れることができないし、NHK水曜時代劇「腕におぼえあり」(92年)の主人公青江又八郎の母役も「本当にこういう母が小藩のお武家にはいたに違いない」と思わせるものがあった。
鬼平犯科帳に登場した「お熊」役もどうに入っていて中村吉右衛門との掛け合いが面白かった。

この人が脇役で出演しているのを発見すると、なんとなく見てしまう。
そんな役者であったと記憶している。

佐藤慶は容姿よりも、もしかすると声の魅力の割合が大きな俳優だったかもしれない。
NHKの大河ドラマにも度々登場し、そのドラマの重厚さを増させる雰囲気を持っていた。
一旦佐藤慶がセリフを話しだすと、その場の雰囲気が冷たく重い、緊張した雰囲気が漂うのだ。
このためドキュメンタリー番組のナレーションや吹き替えにも登場することが多く、例えば「東京裁判」(83年東宝)では、その難しいテーマを淡々と語っていたのが印象に残っている。
この重厚な声を逆手にとったのがNHKドラマ「國語元年」と三谷幸喜脚本の舞台劇「君となら」だ。

「國語元年」では元南部藩下級藩士だった強盗の男を演じた。
井上ひさしの方言を使った代表作といってもいい「國語元年」で、その難しい南部訛りを巧みに操りドラマに緊張と笑いを漂わせるのもまた魅力だった。
さらに、「君となら」では斉藤由貴演じる若いムスメの老いた婚約者として登場したのだが、いつものような重厚さがやたら真面目に感じられられ、物語の可笑しさを増幅させていた。

ともかくまたもや、良い役者さんを失ってしまった個性俳優好きの私は、ただただ、悲しい。

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