去年の11月。
一昨年に引き続き富有柿を求め西吉野へ向かったときに途中通過した五條の町並みに気なるところを見つけた。
そこは国道と旧街道と思しき道路が交差するところで、その信号のある交差点からちらっと横目で見ると何やら映画のセットのような光景を目にしたのだ。
「これはもしかすると凄いところかもしれない」
その時はただそう思っただけでそこを通過。
そのまま吉野川にかかる橋を渡って西吉野を目指した。
奈良県五條市。
ここは和歌山県と大阪府の府県境にある街だ。
とはいえ大阪からは非常に行きにくいところでもあった。
五條市は大阪府河内長野市と千早赤阪村と隣接しているのだがその市境には標高1000メートルの金剛山がある。
その金剛山が壁の役割をしている。
だから大阪から五條市へ行くには山越えの道を通るか和歌山県橋本市か北の大和川が流れる亀の瀬や旧竹内街道を経由しなければならなかった。
JR線も大和路線、和歌山線を経由して天王寺から2時間以上かかる場所でもあった。
この状況が数年前に変わった。
2017年に大阪の泉北ニュータウンの最南端部から和歌山県かつらぎ町を貫く鍋谷峠・父鬼バイパスが開通したからだ。
これまでは車一台がやっと通れる山道を峠越えする必要があった。
そんなに狭くても国道480号線なのだが、このバイパス道路の完成で大阪外環状線道路から京奈和道までわずか20分ほどで抜けられるようになった。
結果、私のように大阪南部で生活している者にとっては高野山や吉野方面が劇的に近くなったのだ。
つまりうちのようま真言宗の家ではいつでも本山の高野山にお参りできるようになったというわけだ。
でも、実際はそんなに信心深くないので、高野山へもめったに行くこともなく、たとえ行ったとしても、
「さすが高野山は夏も涼しくていいね。ごま豆腐でも食べて帰るか」
とか、
「羽田空港から飛んできた関空に着陸する飛行機はこの高野山の上をかすめるように飛んで和歌山市の沖合で関空に進入するんだ」
などと単なる観光気分かヒコーキマニアなのである。
そんなこんなで途中にある五條市も自動車でなら我が家からは1時間かからない距離になった。
壁である金剛山の向こうの街、ではなくなったのであった。
つづく