「それは新しいのぞみ」
「新大阪↔小倉間 1時間59分」
「新大阪↔博多間 2時間17分」
「300km新幹線 500系のぞみ、発信!」
(以上、石坂浩二のナレーションをイメージしてお読みください)
山陽新幹線が全通した1975年。
新大坂〜博多間の所要時間は3時間44分なのであった。
当時私は小学生で父のふるさとの岡山までたまに新幹線に乗車したが岡山までの所要時間は約1時間であった。
それが現在では45分。
ちなみに阪急電車で梅田から京都河原町まで特急で43分なので大阪〜岡山と大阪〜京都の所要時間はほぼ同じになっている。
で、新大阪と九州方面はとみると最速のぞみ号で新大阪〜小倉は2時間12分で新大阪〜博多は2時間28分。
CM当時より10分ほど時間が余計にかかるようになったのは新神戸駅と姫路駅または福山駅などに停車する時間が増えたことと500系がのぞみ号を引退したことが挙げられる。
恐らくダイヤの混雑度も影響しているに違いない。
過去最速だった500系はともかく現在のN700系ののぞみ号は新大阪〜博多間を553.7kmを148分で走り抜けるので平均時速は224km/h。
最初期の新幹線0系の最高速度が210kmであったことを考えると、すでに平均速度が当時の最高速度を超えていることになる。
それでは東京〜新大阪はどうかというと、現在の最速のぞみで2時間30分。
実距離は515.4km。
平均速度は206km/h。
こちらも当初の最高速度に近い速度に達している。
東海道新幹線が山陽新幹線より遅いのは都心の地下鉄並みの混雑ダイヤとカーブの多さが原因で、最高速度が285km/h抑えられている結果だ。
山陽新幹線は最高速度が300km/hなのだ。
このN700系は数年前に外国メディアと鉄道関係の要人を招いてデモンストレーションに使われた時、京都〜米原間を時速340kmで安定して走行。
多くの鉄道ファンをびっくりさせた。
「これは早い。」
と。
そして、
「リニア不要なんとちゃうの」
という声が数多く出てきた。
現状よりも50km/hも早いN700系のデモンストレーション速度で東京〜新大阪を走ると単純に比較して現在よりも30分ほど短縮することができて所要時間は2時間ジャスト。
これが東北新幹線はやぶさ並に時速360km/hで走行すると2時間の壁を突破する。
冒頭の山陽新幹線のCMの新大坂〜小倉間のセリフが新大阪〜東京間になるわけだ。
新幹線の技術はリニアの開発が進んでいる中でも進歩を遂げた。
その最大のポイントは「乗り心地」「スピードアップ」だ。
ところがもっと大きなポイントが新幹線にはある。
「高度な互換性」
なのだ。
新幹線は東北上越新幹線と東海道新幹線こそ接続していないが電圧を除くと線路幅は同じで異なる新幹線路線に乗り入れることができる。
また軌道を3本レールで対応することで狭軌の在来線部分へ乗り入れることも山形新幹線以来一般化していて、技術的にも問題はない。
東海道新幹線もダイヤさえ組めば東京から鹿児島まで乗換なしに移動することも可能なのである。
リニアはこれができない。
独自の軌道を走行するため新幹線も在来線もその線路の上を走ることができない。
名古屋まで開通させても乗り換え時間を考慮すると東京〜大阪間は航空路に勝てない。
まして岡山、広島方面は乗り換えがめんどくさく航空路に圧倒的な軍配が上がるだろう。
私は大阪から名古屋へ行く時、近鉄特急を利用するが新幹線との乗車時間差1時間はあまり気にならない。
同様のことがリニアにも言えるのではないか。
9兆円を越えるという工費をかけるのであれば、他に優先度の高い使いみちもあることだろう。
ましてや必ず会って話をしないと行けない時代、社会ではなくなってしまった。
1時間縮めるためだけに9兆円もかけるんですか。
費用対効果に大いに疑問があるところだ。