萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

第73話 暫像act.2―another,side story「陽はまた昇る」

2014-01-24 23:30:19 | 陽はまた昇るanother,side story
there is a dark 存在の陰翳



第73話 暫像act.2―another,side story「陽はまた昇る」

砂埃、それから窓の反射と人体たちの動き。

それらが遮らす向うに標的はあるとスコープは映しだす。
銃身の重みは冬の記憶に構えのコツが解かる、その感覚に集中が細まらす。
ただ尖鋭になってゆく意識と視界にイヤホンの指示かかる、そして周太はトリガーを弾いた。

「的中、」

低い声が隣から告げた同時、標的は倒れて発射衝撃が肩を貫く。
この感覚すら慣れのままスコープから離した目に双眼鏡つけた。

―標的は、

視線すばやく索敵する、その一点に意識が止まらす。
塵埃くゆらす空間の先で反射光が蠢く、それが何か視認する。

―違う、携帯電話、

あれは武器じゃない、その確認に視点すぐ他へ移らせ判断した。

「行きます、」

告げて、自分の声がマスクに低い。
いまヘルメットとマスクに覆われて声すら変わる、そんな自分に途惑う。
けれど躊躇の一瞬も無いまま駆け出してゆく、その隣から低い声が言った。

「遅い、」

短い低い声、けれど端的に鋭い。
この指摘に自分の現実を見つめて周太は駈けながら頷いた。

「はい、」
「1秒だ、」

低く短く指導が告げて防弾バイザーの視線が射す。
シャープな瞳は厳しいけれど深い、そして頼もしいと思えてしまう。
だから何も考えず頷ける、ただ信頼と緻密な集中のまま周太は駈けた。

―昏い、でも見える、

意識から集中させる現在位置は薄暗い、乏しい照明に蒼い硝煙ゆらいで視界を遮らす。
遠い銃声は実弾の共鳴、その音を聴きながら視界めぐらせイヤホンの指示を聴く。
今は何を考えることも出来ない、そんな時間を訓練場に駈けてゆく。




ネクタイ締めて、ゆっくり呼吸しながら胸もとへ掌ふれさす。
シャツ越しの心音も肺の動きも異常ない、ほっと息吐いて周太は微笑んだ。

―よかった、発作とか大丈夫みたいだね…よかった、

喘息兆候は感じられない、この安堵ごとタオルで髪を拭う。
いま訓練にかいた汗はヘルメット内にも溜った、けれど今は解放された感覚にほっとする。
ロッカールームは隊員たちであふれて、けれど口数少ない整然が今までの空気と違い過ぎて戸惑う。

―七機だと皆もっと雑談とかしていて、リラックスした感じで…ここの人は本当に寡黙なんだね、適性どおりに、

警視庁特殊急襲部隊 Special Assault Team 通称SAT
この警視庁警備部第1課に所属する特殊部隊は適性診断され選抜される。
身長170cm前後といった体格規定から分析力や記憶力、そして性格から配置が決定づく。

寡黙、冷静沈着、高度な集中力、孤独志向

これらがSAT狙撃チームの性格適性と言われている。
けれど自分は入隊テストで指示に背き被弾した受験者の応急処置をした。
もし本当に冷静沈着なら別の対応もあったろう、けれど目前の事態に必死で自分も被弾しかけた。
それでも箭野に助けられたから無事に済んでいる、そんな自分を「冷静沈着・孤独志向」と判断する筈がない。

―口数が少ないのは解かるけど、冷静沈着とか集中力は…あまり僕は該当しないのに、

自分はそぐわない、そう解かっているだけに違和感がある。
それを知っているだけに自分がこの場所にいることは不思議で、周囲との微妙な隔てを感じてしまう。
それでも今こんなふうに毎日は続いてゆく、その涯を自分は約束してしまった記憶が今朝の夢を呼んだ。

『俺はSATからでも周太を攫うよ、今から一年以内に周太を辞職させて療養させる。もう始まったんだ』

英二、なにが始まったの?

「なにかきのう…ぁ」

唇から思案こぼれかけてタオルを口許あてる。
独り言も危ないかもしれない、そんな場所に自分は居る。

―お父さんがここに居たのは強制的だったかもしれないんだ、だから、

父は警察官になりたかった、とは今は想えない。

この一年前は父の意志から職を選んだと思って、だからこそ追いかけて警察官になった。
けれど今、あれから一年間に辿った父の現実たちは全く違う真相を自分に告げてくれる。

―オックスフォードに留学するべき人が警察官になるなんて、変だ…東大でも進学出来たのにどうして、

父は東京大学文学部で英文学を専攻して卒業後、オックスフォード大学へ進学が決まっていた。
その留学を祖父の死で辞退したことは納得も出来る、けれど母校での進学すら選ばなかった理由が解らない。

―田嶋先生も解らないって言ってたもの、お金の理由とかだけじゃない…たぶん小説の通りに、

髪拭いながら廻らす思案に、ふっと鏡が視界に入る。
そこに映された額の生え際、ごく小さな傷痕が鼓動をうった。

「…あ、」

もう薄れている小さな傷痕、けれど記憶は去年の夏あざやかに映しだす。
この傷は警察学校寮で作ってしまった、そのとき見あげた貌が懐かしい。

『ごめん、大丈夫か、』

外泊日、寮室へ迎えに来てくれた鉢合わせに扉ぶつけた。
角で切った額から血は流れて、それをハンカチで抑えてくれた長い指の手が懐かしい。

『見せて、…医務室行こう』

あのときが英二の初めての応急処置だった?

そう気がついて想い温められてしまう、だって初めては何だか嬉しい。
嬉しい、そんなふう今でも想うほど鮮やかな感情は枯れない花でいる。

―あの日だって話してくれた、英二が僕を好きだって自覚したのは…あの公園のベンチで、

あの公園のベンチ、

あの場所で幾度、自分は唯ひとり想ったのだろう?
いま見つめる額の傷が生まれた日、あの日あのベンチに初めて二人座った。
それから幾度も自分ひとりでベンチに座って本を読んだ、そのたび唯ひとり想っていた。

あのベンチには自分が再び座れる日は、ある?

―もう一度でいいから座りたい、ううん、あと何度も座るんだ、

あのベンチに再び自分は座れる、そう信じていたい。
あの場所から今が始まったのなら必ず還る日も廻ってくる、そう想いたい。
こんなふう想う本音に一年間ふり積もった記憶と感情は篤くて、哀しみも喜びも色褪せてくれない。

あのひとが好き、唯ひとり。

―逢いたい英二、もう一度だけでも…ううん、約束通りに一年で帰るんだ、

ほら、また心が独り言つぶやいて勇気ひとつ抱きしめる。
まだ入隊3日目、それなのに幾度も懐かしさごと想いこみあげて帰りたい。
還りたい、そんな願いひとつ確かめながら鏡に微笑んで、そっと逸らした視線に真直ぐな瞳ぶつかった。

「湯原、行くぞ、」

低く透る声が告げて精悍な貌が背中を向ける。
身長は高くない、けれど広やかな背中がどこか似て心詰らせる。

―どうして似てるって想うんだろう…伊達さんと英二と、なぜ?

なぜか途惑う、その理由が今はまだ見えない。
それでも後姿へ追いついた隣、凛とした瞳が周太を見た。

「返事は?」

湯原、行くぞ。そう呼びかけられて、けれど返事しそびれていた。
その迂闊に首すじから熱昇りだす、こんな幼稚なミスに周太は頭下げた。

「はい、失礼しました、」
「ん」

短く低い返答が周太を見、端整に制服姿は歩いてゆく。
どこまでも凛然とした男、そんな容子はSAT狙撃手に相応しい。

―完璧主義なんだろうな、真面目で堅い感じ…あ、

思案に想い行き当たって、ため息吐きかけて呑みこます。
完璧主義の堅物、そんな性向は英二も同じで本質ともいえるだろう。
伊達と英二の共通点はそうかもしれない、そう納得した隣から落着いたトーンが言った。

「上の空が多すぎる、今も、」
「…ぁ、すみません、」

指摘に謝って驚かされてしまう。
こんなふう伊達は察しが良い、それだけ完璧な相手は少し息詰まらされる。
だから尚更に不思議で仕方ない、どうして伊達のようなトップと自分がパートナーを組む?








(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Book I[Patterdale] 」】

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk ふたり暮らしact.17 ―Aesculapius act.27

2014-01-24 09:38:10 | short scene talk
二人生活@birthplace
Aesculapius第2章act.17と18の幕間




Short Scene Talk ふたり暮らしact.17 ―Aesculapius act.27

「雅樹さん、茶道具はどこにあるね?(旨い茶を点てたいね雅樹さん喜んでくれるかな)」
「水屋にあるはずだよ、こっちなんだ(こんなふうに案内するのなんか幸せだな嬉)」
「ほんとデカい屋敷だね、吉村のバアサン独りで手入れしてんの?(コンダケ広いと掃除も大変だろね)」
「うん、場所を決めて少しずつ毎日掃除してるんだ(そうだ光一きっと自分だけで頑張るとか言いだすだろなでも光一ひとりで掃除させるの大変すぎる引越して来たら考えないと僕も協力して)」
「じゃあ俺もそうしたらイイかね?(ばあさんの真似っ子だね笑)」
「そうしてほしいな?学校の勉強や部活もあるから無理しないでね、僕も家事するから(ああやっぱり言ってくれるんだね萌ほんと僕もがんばらないと開業なら時間の自由も今より作れるし)」
「ん、ありがとう雅樹さん(極上笑顔)(雅樹さん優しいね嬉でも俺きっちり自分でがんばろっと主夫だもんねっ)」
「うん、ちゃんと僕を頼ってね(笑顔)(ああ光一その笑顔ほんと可愛い綺麗どうしよう僕いま幸せ照萌)」
「ね、雅樹さん?こんな広い家にふたりきりって自由だね、庭の森で外から見えないしさ(御機嫌笑顔)(ここに住むのも楽しみだね)」
「じ…照(自由だホントにこの家で何しても外に聴こえないし見えないよね僕いろいろ照萌あっだめだ妄想しそう困るでも嬉悶々)」




Aesculapius第2章act.17と18の幕間、
雅樹と光一の会話@吉村本家、雅樹の照れ喜び×悶々4です、笑

昨夜UPした第73話「暫像2」倍くらい加筆校正の予定です。
Savant「Vol.4 Icebound 言の氷塞 act.2」加筆校正Ver貼りました、また読み直し校正しますが。

Eventually Comes True「May.2012 act.3 ―清香、親愛なる君へ」校了しています。
Aesculapius「不尽の燈18」も校了、養父を想う@雅樹の本宅でのワンシーンです。
校正ほか終わったらAesculapiusを掲載予定です、そのまえに短編他UPかもしれませんが。

朝に取り急ぎ、




にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk ふたり暮らしact.16 ―Aesculapius act.26

2014-01-23 01:11:01 | short scene talk
二人生活@drive4
Aesculapius第2章act.16と17の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.16 ―Aesculapius act.26

「雅樹さんっ、アレって蓮華草じゃない?あのピンクになってるトコ(御機嫌笑顔)」
「ぴ…照(って僕なに考えてるんだソンナことあるわけないだろ照困)あ、ほんとだ蓮華草畑みたいだね(笑顔)」
「ね?蓮華草もう咲くんだね、綺麗だね(御機嫌笑顔)(おふくろが好きだよね蓮華草オヤジがいつも花輪作ってあげて…泣きたくなるね)」
「光一、ちょっと車停めて見よう?(笑顔)(蓮華草は奏子さん好きだったな家の田圃でいつも明広さんが花輪を作ってあげて)」
「ん、ありがとね(笑顔)(雅樹さんも好きだよね蓮華草みたいな野の花とか山の花も)」
「あ、やっぱり蓮華草畑だねっ(御機嫌笑顔)可愛いね、きれいだね、雅樹さん?」
「うん、きれいだね、(笑顔)(蓮華草に喜んでる光一が可愛い綺麗だ花が似合うな光一って照萌)」
「雅樹さん、ナンカ日帰り温泉って看板があるよ?(この辺ケッコウ湧いてるもんね)」
「ほんとだね、光一は(いりたいよねでも駄目だ照焦)…花、蓮華草の花すこし摘む?」
「摘みたいね、でもココって人ん家の田圃だよね?勝手に花摘んだら怒られないかね?(いつもオヤジはウチの田圃で摘んでたね)」
「道に生えてるのなら良いよ?いちおう公道だし(光一ちゃんとルールを解かってるホント心身とも綺麗な子だよねだから温泉とか心配で)」
「うんっ、じゃあ3つ摘んでくね?おふくろと俺と雅樹さんの(極上笑顔)(お揃いの花だもんねっ喜おふくろには家の写真にあげよっと)」
「僕にも摘んでくれるの?照(ああほんと可愛い光一どうしよう僕もう照こんな可愛くて綺麗だから公衆浴場は遠慮させたくなる悶々)」




Aesculapius第2章act.16と17の幕間、
雅樹と光一の会話@四駆車内、雅樹の照れ喜び×悶々3です、笑

Eventually Comes True「May.2012 act.3 ―清香、親愛なる君へ」草稿UPしました、また加筆校正します。
Aesculapius「不尽の燈18」校了です、養父を想う@雅樹の本宅でのワンシーンです。
校正ほか終ったら週刊連載+Aesculapiusか第73話の続きを掲載予定です。

眠いけど取り急ぎ、笑




にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk ふたり暮らしact.15 ―Aesculapius act.25

2014-01-22 02:06:22 | short scene talk
二人生活@drive3
Aesculapius第2章act.16と17の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.15 ―Aesculapius act.25

「光一、道の駅があるよ?ちょっと休憩しようか、(ソフトクリームとか光一好きだから喜ぶだろうな)」
「うんっ、野菜とかイイのあったら買いたいね、(ご機嫌笑顔)(旨いもん雅樹さんに食べさせたいね)」
「そうだね、新鮮なの売ってるだろうから(笑顔)(ご機嫌になってる光一ほんと可愛いな照萌)」
「雅樹さん、運転おつかれさま(ほんと運転いつもありがとね雅樹さん)」
「光一こそお疲れさま(笑顔)(光一いつもお疲れさまって言ってくれる優しいな可愛い大好き照)」
「あ、雅樹さん、おやき売ってるね、雅樹さんが好きな南瓜のあるよ(アレ俺も作れるようになりたいね)」
「うん、一つ買おうかな(一つが良いんだよね照)すみません、南瓜の一つ下さい(笑顔)」
「はいよ180円ね、ってあれまあ、お兄さんカッコいいねえ笑(ほんとカッコいい兄さんだわコッチも若返っちまいそうだよ笑)」
「だよね、雅樹さんカッコいいよねっ、(ドヤ笑顔)(ほらオバサンだってカッコいいって思っちゃうね当り前だねっ)」
「そうだねえ、ほんとカッコいい兄さんだよねえ(笑顔)あんたもズイブン綺麗な子じゃないか、美男美女カップルお似合いだねえ笑(ほんと目の覚めるような綺麗な子だねえ驚)」
「び…照(美男美女っていうより美少年なんですホント美少女に間違われるな光一こんな綺麗だと仕方ないのかな照萌)」
「だねっ、お似合いでしょ?ふふんっ(ドヤ笑顔)(雅樹さんにお似合いって嬉しいね喜でも美女って言われたね?)」
「ホントお似合いだよ、あんた達(笑顔)はいどうぞ、」
「ありがとね、(笑顔)雅樹さん、どうぞ(極上笑顔)」
「ありがとう照(ああその笑顔ほんと可愛い光一もっと笑ってくれるかな照)はい、半分どうぞ(照笑顔)」
「ありがとう雅樹さんっ(極上笑顔)半分こってイイね、夫婦って感じするね?」
「ふ…照(夫婦だなんて嬉しい恥ずかしい幸せどうしよう照萌)」
「ナンデも分けっこするんでしょ、嬉しいも哀しいも夫婦なら(笑顔)(雅樹さんとならナンデも分けっこしたいね)」
「そうだね、なんでも分け合って一緒にいよう?(照笑顔)(ああこんな台詞プロポーズだ照でも光一ちゃんと解かってるんだ夫婦の意味を)」
「うんっ、分けっこで一緒だね(極上笑顔)俺たち風呂もベッドも一緒で分けっこだもんねっ、(今夜は二人きりのんびりだね嬉)」
「べ…照(風呂もベッドも一緒で分けっこって光一それ誘ってくれてるの僕ほんと期待したくなるよ困るよ照×悶々)」



Aesculapius第2章act.16と17の幕間、
雅樹と光一の会話@四駆車内、雅樹の照れ喜び×悶々2です、笑

いま第73話「暫像1」校了しています。
Aesculapius「不尽の燈17」また加筆校正します、それ終わったら短編連載などUP予定です。

眠いけど取り急ぎ、笑




にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk ふたり暮らしact.14 ―Aesculapius act.24

2014-01-21 01:30:18 | short scene talk
二人生活@drive2
Aesculapius第2章act.16と17の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.14 ―Aesculapius act.24

「雅樹さん、三つ葉躑躅が咲いてるよ?富士も麓は春だね(笑顔)」
「うん、新緑がきれいな時季だね(笑顔)(可愛い光一すっかり春の車窓にご機嫌だ萌)」
「だねっ、新緑の季だね?往きは気づかなかったけど、今は朝陽できれいだねっ(ご機嫌笑顔)(ほんと五月は綺麗だね嬉)」
「そうだね、往きは夜明け前で昏かったからね?(ああほんとご機嫌だ可愛いなこんな可愛い貌されると幸せで照)」
「きっと今日は雅樹さんの誕生日だからだね?お気に入りの雅樹さんのために富士もハリきって別嬪顔してるね、ほらまたキレイに花咲いてる(極上笑顔)(きっと惚れてるね俺と一緒だね楽)」
「僕のこと富士山が気に入ってくれてるの?(笑顔)(そうだと嬉しいけどそれ以上に僕は光一の笑顔が嬉しいな照萌)」
「うんっ、富士山も雅樹さんのこと大好きだね、だからちっとご機嫌ナナメだったのかもね?(たぶんそうだね富士?)」
「僕のこと大好きだとご機嫌ナナメになるの?(どういう意味だろうな)」
「だって雅樹さんたら新妻の俺を連れて来ちゃったからね、チットは嫉妬しても仕方ないね?富士は姫神サンだしさ(御機嫌笑顔)」
「に…照(新妻だなんて照れる嬉しいどうしよう照喜)光一、新妻なんて言葉どこで覚えたの?照」
「オヤジの本棚の小説で読んだね、(笑顔)(あオヤジのこと思い出すと泣きそうになるねでも今ちゃんと幸せだから照)」
「明広さんの本ならありそうだね照(ああ新妻って嬉しい僕どうしよう照萌)でも次は登らせてくれるかな、富士山、」
「次はきっと大丈夫だね、今ちゃんとキレイな花を見せてくれてるしさ、富士もご機嫌治してくれてるね、(笑顔)」
「そうだね、富士山もきっと…僕と光一のこと祝福してくれてるよね照(どうか祝って下さい富士の神さま僕ほんと生まれた時から光一のこと好きなんです照だから赦して下さいませんかお願いします照)」
「きっと祝福してくれてるねっ、だって雅樹さんがしてくれる夢見させてくれたもんねっ(極上笑顔×照)」
「僕がして…って照(ああそれ夢のなかでも寝れない悶々にも僕覚えあります照喜)」
「ね、雅樹さん?夢でまでしちゃうなんてソンナに俺のこと…照(こんなこと訊くの照れるね幸せで照)」
「あ…うんそうだよ照真赤(うんって言っちゃった僕こんなの変態だでも本当の本心だし大好き過ぎて昨夜も我慢を照)」
「雅樹さんもキスの夢見てくれてたんだねっ、同じだね?(極上笑顔)(夢でキスしてくれたの雅樹さんも一緒に夢見てたんだね嬉)」
「あ、照(キスだけだったんだ光一の夢は)うん夢で僕、光一にキスしたよ照真赤(キスの先もしました僕いろいろ光一に照だけど光一の夢は違うんだ悶々)




Aesculapius第2章act.16と17の幕間、
雅樹と光一の会話@四駆車内、雅樹の照れ喜び×悶々です、笑

いま第73話「暫像1」加筆校正ほぼ終りました、読み直し校了またしますが。
それ終わったらAesculapiusか短編連載かナンカUP予定です。

眠いけど取り急ぎ、笑




にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第73話 暫像act.1―another,side story「陽はまた昇る」

2014-01-20 18:40:00 | 陽はまた昇るanother,side story
The mind of man is framed even like the breath 思考の柱



第73話 暫像act.1―another,side story「陽はまた昇る」

梢が鳴る、そして黄金が舞い落ちる。

木洩陽に黄葉の風なびく、その涯から青空と太陽ふらす。
きらきら森あわく輝いて落葉の音から薫る、この乾いた音も香も懐かしい。
見あげる梢は緑の夏から黄金の秋へ移ろう、そんな端境にある森を周太は微笑んだ。

―…きれいだね、いろんな色の葉っぱいいね?

仰ぐ枝は空を抱く、そこに色彩は時を並べる。
緑、橡、茶色、黄色、黄金色、光あざやかな濃淡は樹幹の黒が支えて佇む。
黒、この全てを融かしこんだ色の深く水が流れて森めぐらす、その木肌ふれて綺麗な低い声が呼んだ。

「周太、」

ほら、あの人が名前を呼んでくれる。

誰より綺麗だと見つめてしまう唯ひとり、そう想い始めたのは何時だったろう?
もう思いだせないほど深まらす想い振り向いた先、黄金の杜に深紅の登山ジャケット翻った。

「周太、たしかに俺は嘘吐きな男だよ?でも周太への気持ちは嘘なんて一つも無い、絶対の約束も今だって俺は本気だ、」

その言葉を聴いたのは、黄金の杜じゃない。
けれど記憶のまま端整な白皙の貌は佇んで、綺麗に笑った。

「約束だよ、周太。俺はSATからでも周太を攫うよ、今から一年以内に周太を辞職させて療養させる、」

そんな約束をなぜ、あなたは出来るの?

そう問いかけたいのに声が出ない、それでも見つめる金色の光にダークブラウンの髪がきらめく。
陽に透ける髪は深紅を艶めかす、その風と光に切長い瞳は自分を真直ぐ見つめて穏やかに微笑んだ。

「もう、始まったんだ、」




「…えいじ、なにがはじまったの…」

呼びかけて、その声に視界ゆるやかに披きだす。

薄蒼い天井はまだ夜明け前の証、そんな認識に時間と場所が知らされる。
いま自分は単身寮の一室に独り、このワンルームは一般社会と人間から隔つ。
そこに眠る時間から醒めてゆく、そんな感覚ごと起きあがり周太はそっと微笑んだ。

「夢、見てたんだね…今、」

夢は、奥多摩の秋にいた。
去年11月の幸せだった瞬間、あの場所で大切な人は微笑んだ。
その記憶のまま夢は黄金の光に満ちて、けれど言葉は数日前と未知を映した。

“俺は嘘吐きな男だよ?
 でも周太への気持ちは嘘なんて一つも無い、絶対の約束も今だって俺は本気だ、
 約束だよ、周太。俺はSATからでも周太を攫うよ、今から一年以内に周太を辞職させて療養させる”

そう告げてくれたのは数日前、実家の自分の部屋だった。
入隊前の身辺整理、そのための休暇に英二は帰ってきてくれた。
また逢えるなんて思っていなくて、だから尚更に嬉しかった再会と約束は温かい。

「でも夢まで見るなんて…」

ほっと溜息に微笑んでベッドを降り、カーテンすこし開けて見る。
ガラス越し空は鉄格子の向こう遮られて摩天楼の遥か藍色が狭い。
まだ夜明けまで1時間はある、そんな空の色と鉄格子に俤が遠い。

―英二、今どんな夢を見てるの?

心呼びかけて、左手の感触に初めて気がつかされる。
ずっと握りしめたまま眠っていた?その掌に独り言こぼれた。

「携帯、持ったまま寝ちゃったんだね…」

握りしめたままの携帯電話、そんな自分の左掌に本音が映る。
こんなにも本当は待ってしまう、その想いごと開いた手のなか赤いランプが点滅した。

「ん、…メール、」

微笑んで画面を開き、受信1通を確かめる。
このランプに送信人が誰かは見えて、開いた画面に微笑んだ。

From  :英二
Subject:遅くごめん
本 文 :いま3コールだけ鳴らしたよ、もう寝てるよな?
     少しでも声聴きたかったけど我慢して俺も寝ます、夢で逢って話すよ?

「…だから僕の夢に来てくれたの、英二?」

そっとメールに問いかけて、ふわり夢の声が記憶を戻す。
いま夢のなか英二は何を告げていた?

『もう、始まったんだ、』

始まったのは、何?

「英二…何か始まったから声、聴きたかったの?」

少しでも声聴きたかった、そうメールで告げる理由は「夢で逢って話す」にある?
そう考えるなら暁の夢は辻褄が合うようで、けれど「始まった」だけしか告げてくれない。

―それとも僕の思い過ごしなのかな、昨日と一昨日と考えごとしてるから…

昨日、一昨日、考えごとに自分も過ごしている。
その理由に今日も顔合わせるだろう、そしてまた思案する。
この廻りは昨日の初対面から気がつくと考えこんで、けれど誰に相談も出来ない。

―伊達さんは狙撃班でもトップなんだ、それなのに僕がなぜ?

なぜ不適格の自分が入隊テストを合格出来たのだろう?
どうして不適格者が伊達東吾のパートナーに選ばれる?

自分は入隊テストで命令違反を犯した、こんな自分は当然のこと不適格判定だろう。
それなのに合格した現実には父が警察官に「ならされた」普通じゃない真相の近似値がある。
そんな推測は出来ている、けれど「不適格」な自分がトップと組まされた事情も相手にも考えこむ。

『伊達東吾です、』

2日前が初対面、その相手はどこか英二と似ていた。

肌も浅黒く精悍な風貌は白皙の美貌と真逆で、けれど眼差しの底が似ている。
身長も10cmは差があるだろう、それでも端整な体躯は身長以上に大きく見え際だつ。
常に冷静沈着、そんな空気は仕草ひとつ無駄ない機敏に隙が無くて、その空気感もどこか似ている。

英二と伊達、二人とも瞳の底は鋭いほど澄んで、綺麗で、どこか陰翳が深い。

―伊達さんも英二と同じ空気がある、優秀な人の…そんな人と僕がパートナー組むなんて普通じゃない、箭野さんがSATにいることも…どうして?

どうして?

そう疑問めぐらすままメール画面を眺めて、仄暗い暁闇に凭れかかる。
こつり額ふれた窓ガラスに摩天楼の空は昏い、それでもメール相手の空と繋がらす。
そんな想いに少しだけ鼓動から寛いで、吐息ひとつ微笑んだ向こう今日初めての光が一閃した。

「ん…朝になる、ね?」

そっと独り言に空を見上げて、今日が始まる。

今日も伊達と業務に就くだろう、それは昨日と変わらない。
昨日と同じに二人一組で行動して1日を過ごす、そうして現場の呼吸に備える。
そんな1日は昨日と同じで、けれど今日、入隊最初の訓練がある現実ごと携帯電話を握りしめた。

「英二…ごめんね、」

ごめんね、そう告げた言葉に微笑んで返信のボタンを押す。
もしかしたら今この1通が最後になるかもしれない、その覚悟に指ひとつずつ想い綴らす。
こんなふうにメール送るひと時はたぶんきっと、今この瞬間から毎朝の習慣になってゆく。

「…僕も逢いたいよ、だから今日も」

想い、独り声こぼれて指先から手紙を綴る。
本当は話したいことが多すぎて、けれど守秘義務の壁深く何も言えない。
この不自由は佇んだ窓の鉄格子にすら明らかで、全てが檻のなか鎖される場所だと思い知る。

―それでもここは、絶望ばかりじゃないよね…そうでしょう、お父さん?

心呼びかけて俤を見つめて、その眼差しにメール相手の笑顔が重ならす。
どこか父と似ている、そう見あげてきた笑顔は父の再従兄の息子だった。
だから似ていることも納得できる、だからこそ気遣わしい事実が哀しい。

英二は、祖父の拳銃をどこに隠しているのだろう?







(to be continued)

【引用詩文:William Wordsworth「The Prelude Book I[Patterdale] 」】

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山岳点景:光色の花

2014-01-19 09:45:00 | 写真:山岳点景
golden spot



山岳点景:光色の花

蝋梅の花が近場の森で咲きだしました。

黄金に透ける花は青空くっきり映えて清々しい香が佳いです。
明るい花色と香は目立ちます、誘われるよう散歩らしき人達は立ちどまり花を仰いでいました。




ジャージ姿の中学生たちも立ち止まって、携帯で写真撮ってる子もいたんですけど男子学生でした。
花に興味があると男の癖にとか言う人もいますが、華道家元も花写真のカメラマンも花卉栽培農家も男性多いしね、笑
ジャージ君も楽しそうに写真撮って友達に見せていました、綺麗なモンは綺麗だと笑って言えるヤツなんだろなってカンジで。
そういうヤツってなんか好きです、笑

第10回 昔書いたブログも読んで欲しいブログトーナメント



短編連載「Lettre de la memoire,another 天露の光、睦月act.2」校了しています。
昨夜UPのAesculapiusは倍くらい加筆予定です、

朝から取り急ぎ、




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Short Scene Talk ふたり暮らしact.13 ―Aesculapius act.23

2014-01-18 00:59:04 | short scene talk
二人生活@bothy5
Aesculapius第2章act.15と16の幕間



Short Scene Talk ふたり暮らしact.13 ―Aesculapius act.23

「大好き、雅樹さん…ずっと幸せだね(極上微笑)(雅樹さんと一緒ならずっと幸せだね)」
「うん、僕も大好きで幸せだよ、(笑顔)(ああそんな貌で言われたら僕ほんと困るくらい大好きだ照愛)」
「ね、雅樹さん?雪の山小屋で抱きあってキスって、ナンカ小説みたいだね照(羞笑顔)」
「そういう小説を読んだの?(笑顔)(ちょっと照れてくれてる光一ほんと可愛い布団ひとつだし萌照)」
「うんっ、オヤジの本棚の読んだね(あオヤジ思いだすと泣きそうになるねでも今幸せだから照)」
「明広さんの?(なら話聴くと僕今ちょっと困るかも照って思っただけで今もうなんだか照困)」
「だねっ、あのね、寒いからって一枚の毛布くるまって裸で抱きあってね、愛を確かめるって話だね(ご機嫌笑顔)」
「その話って光一、(ってこのまま聴いたらダメだ僕ほんと今ちょっと照困なにか他の話を)あ、」
「ね、俺たちも一つの布団で愛を確かめ合っちゃってるね?(極上笑顔)(キスしちゃったもんねっ大喜)」
「あ…光一もしかして照(いまセックスしようって誘ってくれてるのかな嬉ってダメだここ山小屋だでも僕もう照)」
「入籍お初のお泊り旅行だもんねっ、愛を確かめ合うってイイね、(極上笑顔)(新婚旅行って雅樹さん前に言ってたもんね喜)」
「うん…お初のお泊り、だね?照(お泊りワードだ照どうしよう愛を確かめ合うって言ってくれてるのに僕なにも応えないって不実だでも)」
「雅樹さん、大好き(極上笑顔)ずっと愛してるねっ(ほんと大好き雅樹さん今度は俺からキスしよう照喜)」
「あ、照(光一からキスを照×大喜=幸せ無限大)」
「…光一、ぁ、(どうしようキスまた嬉これやっぱり誘ってくれてる照大喜こんなの応えないなんて僕不甲斐無いって思われるよねよし照喜)」
「光一、愛してる…(ああ光一の唇やわらかい温かい水仙の香する甘い大好き愛してるフェラだけでもしたい十日ぶりだな照喜)」
「ん、…まさきさん(極上笑顔×寝惚け)(まさきさんのキスうれしい温かいね…あったかくて…ねむくなってきちゃっ)」
「…光一、いい?照(ってあれ)光一?」
「…ん…まさきさん(寝笑顔)」
「あ…寝ちゃったの光一?(ああ眠っちゃってる落胆でも寝顔ほんと可愛いよく眠ってくれるなら嬉しいな)」
「おやすみ光一、(笑顔)(おでこ可愛いキスしちゃおう照…っあ、)
「…どうしよう(僕がオヤスミ出来そうにない元気で照どうしよう山小屋だとトイレもばれるそれより申し訳ないしでも悶々)」
「光一、ほんと僕…好きすぎて困るよ?照悶(また僕が勝手に煽られたんだよね照困こんなに愛欲強いんだ僕5年間よく平気だったな溜息)」
「はぁ…幸照(ほんと可愛い寝顔だなキスおでこには赦してくれるよね照ほんと5年分の我慢で余計に歯止め利かないのかな悶々)」
「…光一、どんな夢見てるの?(笑顔×照困)(こんな可愛い寝顔を抱いて僕は悶々してる困笑でも十日間しないでこれたんだし我慢)」
「ぁ、照(十日間しないでこれた我慢とかって僕まるで明日の夜に期待大って感じ照そんなの駄目だ光一まだ13歳なんだ僕しっかりしろ悶々)」




Aesculapius第2章act.15と16の幕間、
雅樹と光一の会話@富士山小屋の布団シーン、雅樹の悶々です、笑

いま第73話「残像6」加筆校正終りました、読み直し校了またしますが。
Aesculapius「不尽の燈16」は校了しています、当初からアレコレ加筆ズミです。
第73話の校了したらナンカUPします、眠いんで朝以降ですが、笑

眠いけど取り急ぎ、笑




にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第73話 残像act.6-side story「陽はまた昇る」

2014-01-17 20:53:49 | 陽はまた昇るside story
arraignment 罪状と認否



第73話 残像act.6-side story「陽はまた昇る」

もう空は暮れるだろう、けれど解らない。

壁に廻らす書架と作業台、そんな自分の視界に窓は無い。
いま地下書庫でコピー台に向かいながら経年の書類たちに囲まれる。
これはタイムスケジュールとは違う現状で、けれどチャンスかもしれない。

―密室だからな、ここなら、

与えられた「今」に微笑んで英二はコピーボタンを押した。
機械音に光はしり印刷紙は吐かれだす、また蓋を上げてページを繰る。
こんな作業はあまり好きじゃない、それでも従わす本音が仮面の底を冷たく嗤う。

―俺の一日を隈なく検分したいんだろ、観碕?

今朝から寸刻も離れない、そんな相手は今も背後で坐っている。
こうして今日を一日ずっと貼りつくつもりで来たのだろう、その意図がキーボード微かに鳴る。

―ここのパソコンから誰がアクセスしたのか捜してるんだろ?でも、俺に好都合だ、

第七機動隊舎書庫室、そこに眠らす「鎖」を誰が目覚めさせたのか?

それを観碕は知ろうとして現場に出向いてきた。
この書庫室のパソコンから「鎖」は鍵を開かれ閉じられた、その犯人を捕捉したい。
そんな意図に「書庫の直近使用者」を指名して該当者を検分に来た、けれど観碕は探せない。

―今は指紋照合でもしてるんだろ、おまえのパソコンからアクセスして…ほんと俺に好都合だ、

資料編集をここでしたい、だから手伝ってくれ。

そう告げて自分を引留めた男は1時間前、持参のパソコンを開いた。
その前は山岳救助レンジャー第2小隊の訓練を「観覧」して警備現場係の男を先に返している。
それより前は消防庁の表彰式まで同行して、そして戻り後の昼食まで共にされたのは本音可笑しかった。

―おまえと同じ釜の飯食うのは予想外だったよ、俺でもな?

官僚のなかでもエリートだった男が第七機動隊舎食堂で飯を食う。
こんなこと可笑しくて笑ってしまう、そして納得できる。

―こうやって相手を誑しこんできたんだろ、観碕?

どんな相手でも同じ目線に立ってしまう、そんな態度が観碕のカリスマ性でいる。
その効果は今日も即効性に現われて午後の訓練見学すら特別許可を惹きだしてしまった。

―普通なら上が許可しない、元警察庁キャリアで警視庁に在籍しても、

普通じゃない「特別」が許される男。
そこにあるのは印象と立場と二つ理由があるだろう。
この二つとも組織に揃えた男に対して任官2年目ノンキャリアの自分が挑む。

―観碕は普通じゃない、でも俺もあまり普通じゃないか?

普通じゃない、そんな共通点に笑いたくなる。
その一部を観碕も既に知った、お蔭で観碕の感情は有利に傾きだした。

『宮田君の祖父上を私は存じ上げているでしょうね、宮田次長検事と似ておられる、』

そう言って観碕は消防庁からの帰路、祖父との交流を話してくれた。
同じ官僚で頂点にあるもの同士、そんな同朋意識が信頼を惹きだしかける。
そうした空気に連ねられた言葉は率直な賞賛と少しの非難で、偽りは見えない。

『清廉潔白、そう言われる通りの方でしたよ?私も警察庁なので宮田次長検事にはお世話になりましたが、町弁になられたのは、』

褒め言葉、けれど最後を疑問視で終わらせた。
そこに観碕の社会観と倫理観がある、それは祖父と真逆だと自分は知っている。

―でも観碕には祖父の気持ちは解らない、ただ勿体ないと思っているだけだ、

町弁になられたのは「勿体ない」から惜しい。
そう言外に観碕は言っていた、その「勿体ない」は何に対してなのか?
それは個人的感情では無い、観碕の年代なら共有する信念のようなものかもしれない。

―お国のため働くべきだ、そう言いたいんだろ?

国家への奉職、

そんな意識が観碕には強い、だから「勿体ない」と言う。
この意識を現実に観碕から聴かされて、だから今もう確信は根ざす。
そんな想いにコピー機の蒼い光見つめながら14年前を記憶の会話から呼び上げる。

“周太くんに話しかけていた警察の人間がいた、通夜のときだ、
 当時は80歳位のはずだ、たしか最後は神奈川県警の本部長だったよ。話したことは無いが、射撃大会で何度か見てるんだ。
 全国大会と警視庁の大会と、両方でよく臨席していた人だ。だから優勝常連者の湯原を知っていたのは、不思議は無いんだが。
 でも、そんなお偉いさんが、なぜ通夜に来たのか不思議だったよ。どうして周太くんに話しかけるのかも不思議でな、印象的だった、”

夏、安本が語った「お偉いさん」は何を「勿体ない」から周太に話しかけたのか?
その意図から50年に綯われてきた現実が浮びだす、このリアルに微笑んで英二は最後のコピーを終えた。

「観碕さん、こちら終わりました、」

昨日、先に揃えておいた資料に加えて新たにコピーを取らされた。
その資料たちは聴いていた案件と直接の関連は無い、そこに観碕の意図がある。

―用意周到な男ならコピーくらい先に取る、そう思ったからだろ?

今日一日「書庫の男」を検分する。
そう決めて来たなら手伝わす理由を何重か作るだろう。
そのために指示を態と甘くしておいた、そんな相手はパソコンから顔上げ微笑んだ。

「ありがとう、追加してすまなかったね、」
「いえ、」

笑いかけて渡す、その指元を視線が一瞬撫でた。

―俺の指紋を確実に採取ってことだろ?今のコピーとりは、

視線に相手の意図を見て、また可笑しくて仮面の底が嗤いだす。
こうして目の前でコピーを取らせた用紙なら指紋は確実に「本人」から付着する。
いま目前で採取した指紋なら信憑性は当然のこと高い、そこから生まれる罠に英二は微笑んだ。

―おまえには発想も経験も無い、それでも指紋の罠に気づけるか?

指紋、

世界で唯ひとつしかない指先の紋様は個人認証に遣われる。
それは拇印として証文に用いられるほど「常識的」に信憑性が高い。
だからこそ生体認証として指紋は遣われて、けれど現代技術に常識は変化し始めた。

“もし指紋が一人に二つあったなら、どうなる?”

この想定は生体認証の機器、例えばスマートフォン等を使っていれば思いつく。
または現職として生体認証機器の犯罪に関わる立場にあれば考えつくのだろう。
けれど戦前生まれでエリート階級にいる男ならいずれも縁遠い、それが「普通」だ。

だから楽しみになる、ずっと「特別」に生きる男が「普通」だと自覚させられる時、どんな貌をするのだろう?






にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へにほんブログ村

にほんブログ村 写真ブログ 心象風景写真へにほんブログ村

blogramランキング参加中!

人気ブログランキングへ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山岳点景:風の凍晶

2014-01-15 23:09:01 | 写真:山岳点景
零下、瞬間の凍結



山岳点景:風の凍晶

樹氷、中禅寺湖@栃木県奥日光のワンシーンです。

この日は風と雪がある時で、湖面も波立っていました。
凛と鳴りそうな冷たい風にグローブ無しだと指も凍るなってカンジです、笑
で、車に戻ったらカメラがありえんほど冷え切っていました。




下の写真も同じ中禅寺湖畔にて。
柵から雪解水がそのまま氷柱になって、氷の幕を連ねています。




いま『Savant』加筆校正版を貼りました、読み直し校正ちょっとします。
このあと1月15日=元・成人の日にちなんだ話をUPする予定です。
他予定の『Aesculapiusu』等は眠くて順延かもしれんです、笑

取り急ぎ、


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする