新国立劇場小劇場
作 ラジヴ・ジョセフ
翻訳 小田島創志
演出 小川絵梨子
出演 成河 亀田佳明
濃密な90分の二人芝居。二人の役者が見事に演じきった。未来予測の遊びが、清涼剤。
組織と個人の対立という重いテーマをムガル帝国のインドを素材に提示している。
個人と組織が対立する場面は、突き詰めていくと、正義とか自由なんだろう。
芝居を観るときに、なぜこの芝居が今かかっているかを考える。シェークスピアや歌舞伎は、古典となり普遍的な価値がある。それより新しい芝居も、再演されて、それぞれの時代に価値を獲得していくのだと思う。
この芝居のテーマ、個人と組織の問題は重く普遍的だ。カラマーゾフに通ずる正義の問題もある。
個人と組織の問題が歪んで展開されると、経済的な格差、支配と被支配の問題になる。映画ジョーカーで描かれた世界だ。
マイケルサンデルが、行き過ぎた資本主義に警鐘を鳴らしている。それは、資本主義に内在する格差が大きくなりすぎると、自由や民主主義が危機にさらされ、ブーメランのように資本主義も危機に陥るということではないか。ダボス会議という資本主義の「勝ち組」においても格差が議論されていることが証左ではないか。
今生きている時代に、こういう作品を上演する意味はあると思うし、いろいろと考えさせられる。