いたどりの芽がのびてきました。
子どもの頃、わたしたちは「いたんぽ」 と、呼んでいました。 遊んでいるとき見つけると、皮をむいでおやつがわりにかじったものです。
「いたどり」くらいいろいろな呼び名がある植物をわたしは知りません。
結婚してこちらに来たとき 「ごうさ」 というものが話に出てきたのですが、わたしには何なのかわからなくて話がこんがらがったことを思い出します。 皮をむいで食べるとすっぱいだの、手のひらでたたくとかぽんと音がするだの、水につけて水車を作るだの、いろいろ説明を聞いてやっとそれが「いたどり」だとわかりました。
それに比べると「すかんぽ」などは、どこか他県の呼び方だったと思うのですが、なんとなく呼び名が似ていてそれとわかります。
「たしっぽ」は新居浜に勤務していたとき聞いたかな? これもなんとなくわかりますね。
こんな風に愛媛県の東予という狭い地域でもいくつかの呼び名があるのが「いたどり」です。 ほかの植物、たとえばタンポポはたいていどこでもたんぽぽ、すみれはすみれなのに。 おもしろいです。
この「いたどり」、手入れされた田んぼの畦などにはありません。 どちらかというと、草も木もはえるがままに放置されたところに生えるようです。 ですから田園地帯にそだったわたしたちにとっては「いたんぽ」は貴重品でした。 でも、柿畑が広がるこの土地では、どこでも目にすることができます。 (恥ずかしながら、うちの庭にも生えてきます。)
ところで、母は「いたどり」の煮たのが大好き。 いつも山の畑や、おきまりの場所に行って大量にとってきます。
料理にはちょっと手間がかかるのですが、
1 皮をむぎます。 これは父の仕事。
2 熱湯にくぐらせます。 ここがむずかしいところ。 油断するとくたくたになってしまいます。
3 4,5センチに切った物をふたつわりします(2と3の順序は逆でもよい)
4 水にさらします。 流水がいいのですが、ためた水でときどき水をかえるのでもいいです。
丸1日くらいさらしておきます。 そうすると酸味が抜けて全く味がなくなります。
5 水気を切って油で炒め、だし汁とみりん、砂糖、しょうゆなどで味付けします。 「いたどり」は油と相性がいいようです。 油揚げと一緒に煮てもおいしいです。
わらびにしても、つくしにしても、山野草を食べるのは手間ひまかかります。 何でも簡単に、簡単にしようとする現代にあっては、 ある意味、贅沢な食べ物かもしれません。 うちの子どもたちも山野草を喜んで食べるのですが、自分で調理しようとはしません。 ぶじこなどは、「『ごうさ』の炊いたの、持ってきて」 なんてリクエストするんですよ。