ヴァチカンで、イエスの亡骸を抱いたマリア様を拝見した。
美しい。
世界一の美女である。
何かの本でそういうふうに書いてあった。だから、一度でいいからお会いしたいと思っていた。
なるほど、美しい。
あさましや、あさましや、あさましやとしか言えないボキだけど、それ故にこそマリア様との出会いは、対象として鑑賞するというようなものではなかった。絶体絶命まで追い込まれた悪人としてのボキをそのまま抱いてくださっているのである。
知的な分析対象ではないということ、そういうふうに感得させていただいた。ヴァチカンに来てよかった。
それでも、ボキはまだまだ悪人として生きている。絶対悪を生きていくしかない凡夫として。
死ぬまでは。