仕事で知り合いになった歯医者さんの書かれた本である。清水先生は、興味・関心が多方面にわたっている多芸多才な方だ。歯科医としても、やっていることが一般的な歯科医の範疇を大きくはみ出ているスケールの大きな方である。西洋医歯学と東洋医学を含む代替医療を咀嚼し、豊富な歯科診療経験を元に生み出された清水理論ともいえる栄養健康法が展開されている。一般的な栄養学とは少し違った視点からユニークな提案が次々と出されていくが、とくにタンパク質の健康における重要性が強く主張されている。
清水先生の歯科医院での診療内容は、口腔内だけにとどまらない。口腔からはじまって全身の健康や病気に目配せしていく。その内容を本書からそのまま引用する。
『ここで、当医院で行っている診療の流れをご説明しましょう。
はじめに顔貌を観ます。顔色、肌つや、頸部のイボ、顔のシミ、目の下のクマの有無などを確認します。
次に、歯、歯肉、舌、顎骨を観察します。被せものや詰めもの、矯正治療等の歯科の既往歴を確認します。
続いて、「口臭」を測定します。口の中の環境を担っている「唾液」の量と質を調べます。
舌、歯垢、唾液の「虫歯菌」を培養して調べます。
歯周病菌と虫歯菌のゲノムを調べて、虫歯と歯周病の潜在感染のリスクを判定します。
その後、歯肉の滲出液を顕微鏡で観察して、虫歯菌、歯周病菌の状態、赤血球の状態、白血球の状態を調べます。
以上が、全身状態を把握するためのスクリーニングになります。
口の検査に続いて、全身状態を把握します。138項目の問診で、本人が日常で自覚している心身の健康状態を確認します。72項目の血液検査と尿検査をもとに、心身の状態を把握します(直接、間接的に、不調がわかる血液検査の項目を文中に載せています)。
検査データの基準値の幅を狭く解析することで、予防を目的とした心身の状態と、不調の根本的な原因がわかります。
具体的には主に次の情報を入手します。
・未病(生活習慣病のように、長い潜伏期間がある発症前の状態)
・家系的弱点、体質的弱点
・不足している栄養素
・生活習慣(食事、運動、睡眠、自律神経のバランス、嗜好性)
以上の検査で得られた情報をもとに、根本的な改善策(根治療法)を検討します。
治療を要する明らかな「病気」が見つかったら、専門医やかかりつけ医に依頼して、医科歯科の連携を図ります。』
歯科医院でここまで調べるのだという。一般的な歯科検診や人間ドックを受けてもわからないようなことまで診てくれるのだ。
本書を読んで個人的に該当しそうだと思ったところは、逆流性食道炎では、胃酸過多として制酸剤が処方され、長期の服用でタンパク質の消化能が低下して、結果的にタンパク質の不足になるので注意が必要であること。また、食べたタンパク質が未消化のまま大腸に運ばれると、悪玉菌のエサになってしまうこと。さらに、大腸で悪玉菌の餌となって腐敗発酵した未消化のタンパク質は、大腸ポリープや大腸がんの原因になるということ。また、胃酸の不足で、ビタミンB群不足となり、肩こりや、咽頭炎から風邪を引く原因になるという。
まさに、私の病態を表しているとしか思えない。現状では、制酸剤を止めることはできないので、せめてタンパク質を消化したペプチドやアミノ酸、ビタミンB群の補給をしたほうがいいのではないかと思い至っている。
このように、本書を読んでみると、きっとだれでも思い当たることが出てきて、栄養補給について意識的になれるものと思う。
歯科も口腔外科も同じ歯学部の中に
入っているからそこまでの広がりは
分かりやすいが、この先生はそんな
範囲をはるかにはみ出て、人の
からだの不調や未病を総合的に洗い
だす。
歯や歯茎の悪くなっているところを
診て、そこを集中的に治すなんてこと
を普段はやってないから、普通の歯科医
では基本的な治療である歯を削るなんて
ことは実は下手だったりして(笑)。
そんなことはないですね。
最後のところの制酸剤とタンパク質との
関係は悩ましいですね。また
未消化のタンパク質が流れていって
しまうとそれも厄介なことになると
すると、ますます困る。
私はこちらで診てもらったことはないので正確にはわかりません。しかし、歯科衛生士さんの話では、予約のとき、他の勤務医と比べて院長に指名が集中するらしく人気が高いらしいです。また、手先が器用なので(人形師としても有名です)、歯の治療に関しても腕がいいのではないかと想像しています。
あれもこれもと手を出すんだけれど、全て極めたいみたいな欲がある方です。