いやー,本当に素晴らしい戦いだった。よりによってこの日に,夏休みを取っていたことの幸運に,心から感謝したい。
バドミントン女子の準々決勝を制した前田・末綱両選手の健闘は,夢にまで見た晴れの舞台において,完全燃焼するということはこういうことだ,という見本を見せてくれたと思う。サッカー男子の中途半端な戦い振りにも拘わらず「後悔はない」と言い切った監督が,もしこの試合を観ていたなら,どんな感想を持ったのか,聞いてみたいところだ。それくらい,彼女たちが格上の敵に歯を食いしばって食らいつく姿は,感動的だった。試合に臨むということは,相手がどんな強敵であっても,勝利を目指して全力を尽くすことだというシンプルな哲学を,改めて示してくれた彼女たちは,日本選手団の灯台となった。
第1セットの序盤は,世界ランク1位の中国ペアに全く歯が立たなかった。試合開始から連続して6ポイントを取られ,途中でやや盛り返したものの,ミスが目立った前田選手が相手の集中攻撃を受けて,完全に浮き足立ってしまったようだった。
バドミントンというスポーツでは,ランクの違いが,ここまで如実に試合内容に現れるものかと,半ば感心しながら試合を観ていた。
結局第1セットを取られ,第2セットに入ったあたりで,ちょうど北島選手が出場する100m平泳ぎの決勝レースが始まったため,チャンネルを変えた。そして世界新を記録して,見事な勝利を収めた北島選手のインタビューにうるうるした所で,もう第2セットも終わる頃かな,と思い,先程のチャンネルに戻したら,試合終了どころではない,大変な事態になっていた。
第1セットを13点差で取られた日本チームが,世界1位相手に,何と20対20。日本が中盤の大差を追い付いて,ジュースに持ち込んでいたのだ。
序盤はあれだけ敵の標的になっていた前田選手が,思い切った強打で相手の正面を突き,前田選手をしきりに励ましていた末綱選手が,落ち着いたシャトル捌きで,相手の長身,しかしヴェテランの選手を左右に動かすことによって,どんどんと消耗させていった。
技術と高さでは中国ペアが上回っていたが,体力的には明らかに日本が優位に立っており,その結果,試合が長引くにつれて徐々に焦りが出てきた中国ペアは,第3セットの途中から,アウトとジャッジして見送った長いストロークがイン,というプレーで,少なくとも5点は失っていた。
長いラリーにおける集中力,最後まで足の動きを止めない体力,相手に声をかけ続けるチームワーク,失点した時の気持ちの切り替え,相手に行きそうになった流れを引き寄せる冷静な駆け引き,そして,相手が格上であろうが,試合が始まったら勝ちたいと願う気持ち。異なる競技を,何度も引き合いに出すのは気が引けるが,男子サッカーの試合になかったスポーツの試合に勝つために必要な根源的な要素が,全てこの試合にはあった。
試合が終わった瞬間,日本の二人は涙を流しながらコートに突っ伏した。そしてコーチとしっかり抱き合った。そのうちの一人は,中国出身(もう一人は韓国人)だった。
もし中国チームを率いるシンクロの井村コーチが,同じような場面で涙を流した時には(私は門外漢だが,可能性は高いそうだ),日本の観客がみな笑顔と拍手でその業績を讃えたら良いな,と思ったりした。
バドミントン女子の準々決勝を制した前田・末綱両選手の健闘は,夢にまで見た晴れの舞台において,完全燃焼するということはこういうことだ,という見本を見せてくれたと思う。サッカー男子の中途半端な戦い振りにも拘わらず「後悔はない」と言い切った監督が,もしこの試合を観ていたなら,どんな感想を持ったのか,聞いてみたいところだ。それくらい,彼女たちが格上の敵に歯を食いしばって食らいつく姿は,感動的だった。試合に臨むということは,相手がどんな強敵であっても,勝利を目指して全力を尽くすことだというシンプルな哲学を,改めて示してくれた彼女たちは,日本選手団の灯台となった。
第1セットの序盤は,世界ランク1位の中国ペアに全く歯が立たなかった。試合開始から連続して6ポイントを取られ,途中でやや盛り返したものの,ミスが目立った前田選手が相手の集中攻撃を受けて,完全に浮き足立ってしまったようだった。
バドミントンというスポーツでは,ランクの違いが,ここまで如実に試合内容に現れるものかと,半ば感心しながら試合を観ていた。
結局第1セットを取られ,第2セットに入ったあたりで,ちょうど北島選手が出場する100m平泳ぎの決勝レースが始まったため,チャンネルを変えた。そして世界新を記録して,見事な勝利を収めた北島選手のインタビューにうるうるした所で,もう第2セットも終わる頃かな,と思い,先程のチャンネルに戻したら,試合終了どころではない,大変な事態になっていた。
第1セットを13点差で取られた日本チームが,世界1位相手に,何と20対20。日本が中盤の大差を追い付いて,ジュースに持ち込んでいたのだ。
序盤はあれだけ敵の標的になっていた前田選手が,思い切った強打で相手の正面を突き,前田選手をしきりに励ましていた末綱選手が,落ち着いたシャトル捌きで,相手の長身,しかしヴェテランの選手を左右に動かすことによって,どんどんと消耗させていった。
技術と高さでは中国ペアが上回っていたが,体力的には明らかに日本が優位に立っており,その結果,試合が長引くにつれて徐々に焦りが出てきた中国ペアは,第3セットの途中から,アウトとジャッジして見送った長いストロークがイン,というプレーで,少なくとも5点は失っていた。
長いラリーにおける集中力,最後まで足の動きを止めない体力,相手に声をかけ続けるチームワーク,失点した時の気持ちの切り替え,相手に行きそうになった流れを引き寄せる冷静な駆け引き,そして,相手が格上であろうが,試合が始まったら勝ちたいと願う気持ち。異なる競技を,何度も引き合いに出すのは気が引けるが,男子サッカーの試合になかったスポーツの試合に勝つために必要な根源的な要素が,全てこの試合にはあった。
試合が終わった瞬間,日本の二人は涙を流しながらコートに突っ伏した。そしてコーチとしっかり抱き合った。そのうちの一人は,中国出身(もう一人は韓国人)だった。
もし中国チームを率いるシンクロの井村コーチが,同じような場面で涙を流した時には(私は門外漢だが,可能性は高いそうだ),日本の観客がみな笑顔と拍手でその業績を讃えたら良いな,と思ったりした。