学年だより「団体戦」
言うまでもなく大学合格は大きな目標だ。その目標に達するまでの距離感がつかめなくて、もがき苦しんでいる … というのが、みなさんの現状だろう。
ただし、大きな目標ではあるけれど、あくまでも通過点であることを忘れてはならない。
一昨日、各大学から来ていただいた方のお話しを聞きながら、大学に入った後、どう学んでもらうか、単なる就職斡旋ではないキャリア教育をどう進めるかに、どの大学さんも腐心しているのだなと感じた。
きっと、入学後に燃え尽きたように勉強しなくなってしまう学生の存在が、どの大学でも問題になっているのだろう。
今の時点においても、大学に入ること自体が最終目標だと勘違いしてしまうと、大げさに言うと「人として」なすべきことがいい加減になってしまう場合がある。
具体的に言ってみよう。ものすごく勉強した結果、ものすごく偏差値が上がったとする。
しかし、あいさつができなかったり、ゴミの分別ができなかったり、友達との約束を破って平気な人になったりするなら、その後の人生において自分の目標を達成しにくい体質になってしまう。
現実問題としては、まず就職活動で差がつくことになる。その人間性は、足音一つで見抜かれてしまうのだから。
斎藤孝氏の『就職力』という本の一節を紹介したことがあるが(№7)、斎藤先生は、何かにのめり込んだ経験、元気よくあいさつできること、毎日本を読む習慣こそが、就職活動でいい結果をもたらすと述べられていた。
実はそれらのほとんどは、高校時代に積み上げておける内容ばかりであることに気づく。
あいさつ、返事、身だしなみ、片付け … 。よしやるぞと思わなくても、ふつうにできている身体になっていることが大事で、意識的に経験を積んでいけば、いつのまにか無意識のうちにできる自分になっている。そしてそれらはそのまま他人を思いやる気持ちにつながる。
自分だけよければいいという考えの持ち主が受験で結果が出せないことが多いのは、やはり勉強とはそういうものだからと考えるしかない。
自分との他人との関係、自己と自己以外のものとの距離感をどれくらい測れるか。
その能力を身につけることが勉強の本質だから。
~ ぜひ切磋琢磨し尊敬し合える受験仲間を作ってください。そんな友人がいると、気分が乗らない時でも、「あいつも頑張っているから自分も頑張ろう」とか、辛い時にはコミュニケーションをとって励まし合うだとか、いろいろな意味で安定した勉強の支えになってくれるものです。
進学校の生徒たちの強みというのは、頭の良さ以上に周りに自分と同じように上位大学を目指す仲間がいて、学校全体で頑張る空気ができていることなのです。 (板野博行『勉強の鬼原則』大和書房) ~
「受験は団体戦だ」と言われるのは、このことを言うのではないだろうか。