水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

180秒の熱量(2)

2021年11月28日 | 学年だよりなど
1学年だより「180秒の熱量(2)」


 中学時代に始めたアマチュアレスリングでは、一とき日本のトップレベルの選手だった。
 肩の故障や、信頼していた先輩が亡くなるということも影響して結果を残せず、競技を離れた。
 しかし米沢重隆は、その後も総合格闘技、ボクシングへと格闘技から離れることはできず、33歳でプロボクサーとしてデビューする。
 ボクシングは、年齢制限をもつ唯一のプロスポーツだ。みんなも知っている通り、40歳を越えてマウンドに立つピッチャーもいれば、50歳を越えたJリーガーも存在する。アントニオ猪木は還暦を超えてもリングで戦っていた。
 しかし殴り合いのスポーツであるボクシングは、長く選手生活を続けることで、脳障害の危険が圧倒的に高まる。原則として37歳で強制的に引退を余儀なくされる。例外はその時点でチャンピオンであることだ。
 2013年、36歳の米澤は、現役を続けるためにチャンピオンになろうと決意する。
 この時点で5勝6敗2引き分けという戦績のB級ボクサーにとって、無謀な挑戦だった。
 ミドル級(72.5㎏以下)という重い階級は、そもそも日本人選手が少ない。スパーリングの相手もなかなか見つからない。そもそも残された時間のなかでチャンピオンを狙えるだけの試合数が組める可能性さえ低かった。しかし、ジムの会長の尽力により、まずはタイに渡って1勝をあげA級に進むと、次に日本3位の選手との対戦が叶った。


~ トレーナーの小林は信じられない思いだった。もう足が痺れ、立っているだけでもキツいはず。あの二発はなんだったのか、思わず問いかける。
「あれ、狙ったのか?」
「はい」
 そう答えた米澤の表情は、まだ生きている。まだこのボクサーは闘える。
「よし。最後。この試合のラストラウンド。ボクシング最後だと思ってやってこい」
 再び、今度はレフリー自身が傷口を確認しにきた。米澤は一言「やります」と鋭い表情で告げる。その気迫にレフリーは何も言えずに戻っていった。それを見た有吉会長は誇らしげだった。
 思えば4年前、普通のボクサーなら引退を考える33歳でデビューした米澤は、5歳年下の若者に2回KO負けを喫し、ひとり控え室で泣いていた。他のジムの知り合いには、はっきり、「年齢も年齢だし、彼にプロは向いていない。アマチュアの《オヤジボクシング》でやった方がいい」と真面目な顔で忠告された。その米澤が日本3位と正々堂々7ラウンドを闘い抜き、これだけ打たれても、なお心が折れていない。気持ちの弱さなどどこかへ消えていた。
「最後、悔いのない試合してこい」
「はい」 ~


 対戦相手は地方在住の選手で、試合勘を失わないように相手をしてみるぐらいの感覚だった。
 米澤陣営も、最後の試合になることを内心想定していた。本人以外は。
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180秒の熱量

2021年11月24日 | 学年だよりなど
1学年だより「180秒の熱量」


 「そんな夢を追って何になる」「どうせ食えないだろう」と言われても、それをやらずにいられない人達がいる。とくにこの東京近郊にはたくさんのそういう方が棲息されている。
 役者さん、ミュージシャン、絵描きさん、ライターさん……。そしてプロボクサー。
 米沢重隆選手は、プロのミドル級のボクサーとして毎日トレーニングを積みながら、コールセンターの契約社員として働いていた。


~ 「ボクシングの片手間にやってるってことは絶対ないですね。僕は正社員ですけど、僕なんかよりもずっとちゃんとしてるんじゃないですか」と評す。
 米澤はいつトラブルが起きても会社に駆けつけるし、普段の電話回線工事計画にしても綿密なスケジュールを組み、ほとんど狂いがない。また何よりも13年間、遅刻を一度もしていないらしい。会社は米澤を正社員に誘ったことが何度もあったが、このままの生活がいいと決して首を縦にふらない。(山本草介『180秒の熱量』双葉社)~


 日本チャンピオンクラスでも、試合の報酬だけで「食べて」いくことはできない。スポンサーさんのバックアップや、所属ジムでの仕事などでやりくりをする。チャンピオンでないボクサーは、つまりほとんどのボクサーは、プロと言いながらも、ボクシング以外の仕事で生計を立てている。
 米澤さんのシフトは不規則だ。夜勤を終えて家に帰らずドトールで2時間ほど寝てロードワークに出る、そのままジムでトレーニングして、夕方から夜勤に入るという日もある。
 トレーニングと仕事の両立は、「文武両道」などと言ったあまいものではない。


~ 午後10時。遅い“昼食”の時間がやってきた。休憩室へ降りた米澤はタッパーに入れたお弁当を開いた。中に入っていたのは味付けも何もしていない茹でた鶏の胸肉だけ。他には何もない。その鶏肉にポケットから取り出した二種類の粉末をふりかけ、お湯を注ぐ。すると緑色の液体に白い胸肉が浮かんできた。
 これは食べ物なんだろうか。僕のそんな疑問も気にしない様子で、米澤はレトルトパックの玄米をレンジで温めながら、この緑色は青汁で、味付けのためにわかめスープのもとを投入していると説明する。つまり、これは「青汁わかめスープ味の鶏肉」という〈おかず〉で、玄米ご飯が〈主食〉なのだ。 ~


 毎日の昼食と夕食(夜食)は、ほとんどこれを食べ続けるという。
 こういう食生活で毎日1700~1800キロカロリーを摂取する。好きなだけ食べている高校生の半分ぐらいだろうか。身長180㎝の米澤が72.5㎏以下のミドル級を維持するための必然だった。
 睡眠時間をけずり、鶏肉しか食べず、もちろん他の娯楽は何もない日々。そこまでしてボクシングを続けたいのはなぜか。
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校内アンサンブル発表会

2021年11月24日 | 日々のあれこれ
校内アンサンブル発表会@小講堂

1 弦・打楽器4重奏「趣味嗜好寄せ集めメドレー」
2 木管6重奏「マイ・ホームタウン」
3 ホルン2重奏「ジュラシック・パーク」
4 トランペット4重奏「ソナチネ」
5 サックス4重奏「リベルタンゴ」
6 弦・バリチューバ6重奏「フレンド・ライク・ミー」
7 木管4重奏「フォルモサの風」
8 金管打楽器8重奏「ミスティック・ブラス」
9 全員合奏「オーメンズ・オブ・ラブ」「You can't stop the beat」

 おこしいただき、ありがとうございました!!
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語彙力アップ 鷲田清一「自分の身体」

2021年11月22日 | 国語のお勉強(評論)
語彙力アップ⑧ 鷲田清一「自分の身体」
空欄に漢字・読み方・意味・対義語etcを記入しなさい

1( 媒体 )ばいたい……二つのものをつなぐ( なかだち )となるもの  
( 終生 )しゅうせい ☆( 終身 )しゅうしん ( 畢生 )ひっせい
2 逐一( ちくいち )……順番に一つ残らず。「ちくいつ」とも
3( 露出 )ろしゅつ ☆ 露わ( あら わ)
4( 一喜一憂 )いっきいちゆう←→( 泰然自若 )たいぜんじじゃく
5( 戒 める)いましめる……過ちを犯さないよう注意する
 ☆ 窘める( たしな める)……犯した過ちを注意する
 ☆( 諫 める)いさめる……目上の人の過ちを注意する
6( 触覚 )しょっかく  7( 嗅 ぐ )かぐ
8( 末端 )まったん←→( 中枢 )
9( 凝集 )ぎょうしゅう←→( 拡散 )
10 漏出( ろうしゅつ )……出てはいけないものがじわっと外に出る
 ☆ 漏洩( ろうえい )・( 流出 )りゅうしゅつ
11 隔たる( へだ たる) ☆( 隔離 )かくり
12( 統御 )とうぎょ……全体をまとめて支配する ☆ 統べる( す べる)
13( 不意 を 襲 う)ふいをおそう ☆ 意( おも う)・こころ
14( 貫禄 )かんろく……( 見た目 )から感じられる人間的重みや風格
 ☆ 禄を食む(ろくを は む)……俸禄(給料)をもらい生計を立てる
15( 欠如 )けつじょ ☆ 如し( ごと し)
16 醸す( かも す)……雰囲気や状態を生み出す ( 醸成 )じょうせい
17 鎮める( しず める)  18( 輪郭 )りんかく
19 メソッド……( 方法 )
20( フィジカル )……身体的 ←→ メンタル……( 精神的 )
21 無意識裡に(むいしき り に)……無意識のうちに ☆ 裡( うち ・うら)
22 浸す( ひた す)
23( 覚醒 )かくせい ☆ 覚める( さ める)・醒める( さ める)
24( 収縮 )しゅうしゅく ←→( 膨張 )
25( 緊張 )きんちょう ←→( 弛緩 )
26( 摂取 )せっしゅ ☆ 摂る( と る)
27( 皮膚 )ひふ   28( 刺激 )しげき
29( 縫 う )ぬう  30 割く( さ く)
31( 縫製 )ほうせい……ミシンで布を製品に縫い上げる
 ☆( 裁縫 )さいほう……手仕事で縫い合わせる
32( 往々 にして)おうおうにして……( 望ましくないこと )が起こりがち
33( 特殊 )とくしゅ←→( 普遍 )
34( 逆説 )ぎゃくせつ……( 通念 )と逆の矛盾する言い方で主張を述べる
35( 了解 )りょうかい…… 了わる( お わる) ☆ 了 V・V 了……Vし終わる
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懺悔ノート

2021年11月19日 | 学年だよりなど
1学年だより「懺悔ノート」


 『ユメタン』の木村達也先生は、灘高校を退職された後、全校各地で授業や講演を行われている。 英語の学習について、勉強に仕方について、高校生の生き方について、人生について……。
 そして生徒や保護者からのたくさんの質問にも答える。先週の山形県立酒田西高校でも、講演の後「単語の覚え方」「リスニングの伸ばし方」など多くの質問に答えたと書かれていた。


~ たとえば語彙に関しては、自分のメモ帳を作れと指示しました。
 動画でも同じことを言っていますので、参考にしてみてください。
 ただね、大事なことはこういったメソッドやコツじゃないんです。
 僕は同じことを言っているのです。講演でも授業でも動画でも。
 ところが、成績が上がる子と上がらない子がいます。
 それは「語彙力を身につけたければ、自分のメモ帳を作れ」にしても同じです。
 なんだかわかりますか。成績が上がる子と上がらない子の違いって。
 上がる子は、メモ帳をコンビニに買いに行くんです。
 上がらない子は、実践しないんです。
 あるいはもっと楽ちんな方法を探そうとして、ネットサーフィンするんです。
 上がる子はなににしても実践する子なんですよね。
 (木村達哉【KIMUTATSU JOURNAL】第230号)~


 先週、河合塾の宮坂さんのお話をきいた後、「懺悔ノート」を用意した人はいるだろうか。
 「模試は受けた後が大事」とみんなが言う。みなさんも言葉ではわかっている。
 実際にやったかどうかが、すべてだ。解き直したか、できなかった問題の解法を覚えたか。出来なかった問題をストックするところまで含めて、模試の「後」だ。ストックすべき問題は、コピーしてノートにはっておく。
 模試に限定せずに、覚えるべきことを一冊にまとめていた先輩を、昨年はかなり見かけた。


~ 勉強法がわからないって子はいないんです。みんなわかっているんです。
 「わからない」のではなく、もっと楽な方法がわからないだけなんです。 ~


 みんな、たぶんわかっているのだ。やればいいことを。ただし人間だから楽をしたい。
 勉強方法については、高校に入ってから今までに、相当量耳にしている。あとはやってみないことには、効果があるかどうかはわからない。楽な方法を探すのではなく、素直にやる、愚直にやる、コツコツやる、言われたことは試してみる。それしかない。
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オンリーワン(3)

2021年11月14日 | 学年だよりなど
1学年だより「オンリーワン(3)」


 自分の将来に漠然とした不安を抱える人、自分の現状に満足していない人達にとって、「オンリーワン」という言葉は、麻薬のようにしみわたった。
 「今でこそ、こうしてくすぶってるけど、自分は価値ある人間だ、いつかそれが立証される日もくる、自分はオンリーワンの人間だ!」と。
 それを証明しようと「自分探し」をしてみるものの、なかなかこれというものが見つからない。 自分は何ものでもないのかな……と、気づけた人は幸せだったのかもしれない。
 そして、何ものにもなれないのは、まさに自分の責任だと思い知らされる。
 「自分の夢を叶えよう」という言葉は、自分の幸せは自分でつかむしかない、社会はそれを用意できないという意味だった。
 そのような本質に気づかない大人が、もしくは気づいていながら目をつぶっている大人が、家で学校で「自分の好きなことを見つけよう」と言う。
 そう語っている自分自身はどうなんだろう? と疑問を抱きながらも、子どもたちは、若者たちは自分探しを強いられる。
 将来の目標を書かされる、キャリアプランなるものを提出させられる。
 「夢」というほどのものは見つからない、特にやりたい仕事とか思いつかないと感じながら、むりやり書いて提出すると、「もっと自分に本気で向き合ったらどうだ」とお説教される。
 お互いに、そろそろ「オンリーワン幻想」から脱した方がいいのではないか。
 将来やりたいことが早々と見つかる人は幸せかも知れないが、あまりにも純粋にそれを追い求めすぎて、思うようにならなくて(多くは叶わないから)傷つくことになる。
 人生どうなるかわからない、極端なことを言えば明日命を失うことだってあるくらいなのだから、将来のことについては、そんなに「しっかり」イメージしようとしなくていい。
 たまたま明日も元気でいられたらラッキーではないか。
 がちがちの夢を設定しなくてもいい。
 みんながみんな「自分をいかせる仕事」を目指さなくてもいい。
 みんながみんな「たくさんの人を笑顔にできる仕事」に携わらなくていい。
 みんながみんなキラキラする必要はないし、できない。
 ふつうに働いて、自分でごはんが食べれるようになれば、何も恥じることもない。
 地味に、地道に、地に足をつけて毎日を過ごすなかに、かけがえのない人生はある。
 目先の勉強をしっかりし、その時々に求められることに逃げることなく取り組んでいけば、やることは向こうからやってくる。それが全く予想もしなかったことであっても、やってみると、やりたいことになったりする。
 文系・理系を決める、ざっくり行きたい学部を決める、行きたい大学を思い切り高望みしておく、今はこれくらいで十分だ。何学部にいくと就職がいいのだろうなどという発想は、全く不要だ。
 まずは、地に足のついた勉強をしよう。覚えることをじっくりしみこませていこう。
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オンリーワン(2)

2021年11月12日 | 学年だよりなど
1学年だより「オンリーワン(2)」


 「自分さがし」「夢は叶う」「ほんとうの自分」……。歴史の浅いこれらの言葉に翻弄され、自分を「こじらせる」若者が増えたのは、「ロスジェネ」以降だった。
 社会の流れに従っていれば幸せになれる時代、「大きな物語」を信じていられた時代の後に、「夢物語」のようなバブルの時代が現れる。
 あっけなく夢から目覚めさせられ、「就職氷河期」と呼ばれる時代には、「いい大学」を出ても、なかなか思うような就職先がない。
 上の世代を見ると、自分と同じくらいの能力、いやそれ以下にしか思えないのに、「一流」の企業に勤めている人がいるように見える。
 そんななか、自分の好きなことをやろう、夢を追うことはすばらしいと言う声が聞こえてくる。
「そうだ、無理に働く必要はない、社会の歯車になるより、自分らしく生きよう……。」
 無理に気持ちが入らない仕事につくより、本当に好きなことを探してみよう、見つかるまではフリーターでいようと考える。
 幸い、アルバイトや派遣での働き口はあった。社会はむしろ、そのような存在を求めていた。
 アルバイトに精を出せば、普通に就職した同級生の初任給を同じくらい稼ぐことは、困難ではなかった。上司に怒られ、いやな飲み会に参加し、残業におわれている友人たちより、むしろ自由で生きがいがあるとも感じられた。
 ただ、アルバイトはあくまでもアルバイトだ。若いうちは自由を謳歌できても、正規雇用の友人たちが、家庭をもったり、出世したりする姿を見ると、少し不安にもなってくる。
 しかし年を重ねた後、そろそろ正規で勤めよう思っても、思うようには雇ってもらえない。すると好きな人ができても、結婚して家庭をつくることにはためらいを覚える。いったん非正規の道を選ぶと、路線変更は容易ではない。


~ 20世紀の末から21世紀の初めの日本で、約束(あるいは保証)されていたはずの未来(あるいは将来)を失ったのは、いわゆる「ロスジェネ世代」だけではない。企業組織の構造改革や労働法制の〝改正″による雇用の流動化、年金問題などにより、若年世代に限らず、それより上の世代の多くの人びとにとっても、20世紀末から21世紀初めは、確実に思えた未来が不確実になり、そのなかで自分の将来が不安になる時代として経験されてきた。
 現代日本のロスジェネ世代以降の人びとは、そしてまたそれ以前に生まれた人びともまた、それぞれの未来を一人ひとり、自己の責任でかなえるべきだという圧力のなかにある。そこにあるのは、「歴史」という大きな物語を見失って迷子になった一人ひとりの、小さな未来の物語への強迫である。(若林幹男『未来の社会学』河出ブックス)~


 「失われた10年」は、いつしか「20年」とよばれるようになる。正規で職を得ていた人も、定年まで安泰とはいえない時代になっていく。
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アンサンブルコンテスト

2021年11月09日 | 日々のあれこれ
埼玉県アンサンブルコンテスト 大会2日目

11月9日(火)久喜総合文化会館

 12番 木管四重奏 「フォルモサの風」 11:20演奏

 24番 金管打楽器八重奏 「ミスティック・ブラス」 13:33演奏


木管4重奏 たぶん今までで一番いい感じに吹けました

金管打楽器8重奏 金賞いただきました! 県大会頑張ります

 応援ありがとうございました!!
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オンリーワン

2021年11月08日 | 学年だよりなど
1学年だより「オンリーワン」


 「やりたいことを見つけよう」「自分の将来を設計しよう」「夢はかなう」……。
 今ふつうに見かけるこれらの言葉は、大昔からあるものではない。
 江戸時代にはなかったし、近代国家を目指し始めた明治時代、誰もそんなことは言わない。
 太平洋戦争に負けてぼろぼろになった時にもない。個人の夢うんぬんを語っているヒマなど、日本人にはなかったからだ。
 その後、焼け野原からわずか十数年で経済大国への仲間入りという、奇跡的な発展をとげる。
 1950年代後半からは高度経済成長とよばれる状態が続き、そのまま1970年代に入ると、そろそろみなさんのお父さんお母さんが生まれた頃だろうか。
 その頃の若者も「自分で夢を見つけよう」とは言われなかった。「勉強して、いい大学に入り、いい会社に入れ」と言われた。勉強が苦手だったら、「手に職をつけて、地道に働け」と言われた。
 大金持ちにはなれなくても、ふつうに働いていれば、食うに困ることはない、ふつうに幸せになれると、みんなが信じていた。うまくサラリーマンになれれば、毎年少しずつ給料が上がって、定年まで働けた。自営業なら、働けるだけ働いて、その後は年金で暮らせた。
 就職して結婚して子どもをつくり、孫を抱いて、のんびり老後をすごし、家族に看取られて旅立っていくという人生の姿を、ごくふつうに手に入るものとして、日本人はイメージできた。
 「一億層中流」意識が生まれ、よその国の人から「ジャパンアズナンバーワン」という言葉をいただいたのも、この頃だ。
 しかし1990年代、「バブル経済」が崩壊し、景気低迷期が長引くにつれて、「それなりに頑張って、ふつうに幸せになる」というモデルを、人々が疑い始める。


~ 20世紀末から21世紀初めの日本では、バブル経済の崩壊と就職難、その後の不安定な雇用と貧困化が、戦後日本が高度経済成長期以降もち続けてきた、より豊かな未来への希望を多くの若者たちから奪い、既存の社会体制や価値観への信頼を失わせたという認識が、「ロスジェネ」という言葉が21世紀の初めに他称・自称取り混ぜて用いられたことの背景にはある。現代日本のロスジェネたちはまた、「将来」や「夢」と呼ばれる個別的な未来と、それに対する自己責任への強迫に曝されるようになった世代でもある。社会全体で「輝かしい未来」という夢を見ることが難しくなっていった一方で、個々人が自分の「夢」をもち、「将来」に向けてそれを実現してゆくための準備と学習が求められるようになり、「夢はかなう」とか、「夢をありがとう」といった言葉が、決まり文句のように始終耳に入り、目にするようになった社会。それぞれの人間が「オンリーワン」の可能性をもっており、個々の努力と責任で、必要とあればリスクを取ることもいとわず、「将来の夢」に向けて努力することが推奨される社会。それが一九九〇年代以降の日本社会である。
     (若林幹男『未来の社会学』河出ブックス)~



 幸せを手に入れられるかどうかは「自分次第」「自分の責任」という時代になり、「オンリーワン」という言葉が誕生する。
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がんばらない

2021年11月05日 | 学年だよりなど
1学年だより「がんばらない」


「最初は趣味程度で続けられればと思っていたので、正直、ここまで伸びることは予想していませんでした」と友田先輩は言う。
 大学で続けることを諦めていたとはいえ、決して陸上がいやになっていたわけではない。今年のインターハイ予選の際には、後輩達のサポートをしに来てくれたりもしたそうだ。


~「高校だと顧問の先生がメニューを決めます。気分が乗らない日もあったんですけど、大学では走るのは週2回だけです。弱点を克服するための練習をして、かつ、練習時間を大切にしようとする意識が強くなりました。1回1回の練習では質を高めています。東京理科大には指導者がいないので、自分で考えてできているのが好結果につながっているんじゃないでしょうか」~


 「自分でやれる」ということは、そもそも「好きなこと」なのだ。
 引退して球団代表補佐を務めるイチロー選手は、現在でも、どの選手より早く球場にきてトレーニングしている。それくらい野球が好きなのだ。大谷選手が「二刀流」を続けるのは、記録を残したいのではなく、投げることも打つことも好きでしょうがないからだ。
 いろんな分野で活躍する人を思い浮かべてみると、お金のためとか名誉のためとかではなく、その人がそのことをいかに好きなのかが、ほんとうによく伝わってくる。
 その人にとっては、それをすることが自然であり、そうしなければ生きていけないくらいなのだ。


~ トレーニングも同じだ。「痩せたい」、だから「苦しいけど頑張る」と思ってるうちは絶対に痩せたりはしない。人間の身体はそんなふうに出来ていない。走ったりウエイト・トレーニングをしたりエアロビクスしたりするのが楽しくて仕方なくなって、ハッピーでこんな習慣誰かに「やめろ!」と言われても「絶対イヤ!」となったとき、肉体は初めて変わり始める。
 そして人生というものは、無理したり頑張ったりしても決して変えることは出来ない。もしも変えられるとしたら、以前の生き方よりも新しい生き方の方を好むこと、愛すること、楽しいと感じることしかない。
 無理して頑張ることが悪いことだとは思わない。何しろ人生には辛いことが否応なくある。それを乗り越えたとき、人間的に成長するということがないとは言わない。けれど、別に好き好んで苦行をやる必要なんてどこにもない。
 人生を変えるのは楽しいこと面白いこと、愛してやまないこと、誰に何と言われようともやめたくないと思うことだけだ。
      (東良美季「映画・音楽・本について今、僕が語ること。」) ~


 苦行の意味での「がんばる」を言いながらやっている状態は、がんばっていない状態がデフォルトのままだ。そのままだと、どこかで力つきることになる。
 はたからは「がんばってる」と見える状態が自分のなかで普通のとき、もしくはやるなと言われてさえやっている自分がいるとき、それは「やりたいこと」だ。
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