洋画でいいのがあった。
「これが私の人生設計」は、なかなか観る機会のないイタリア映画だ。
世界をまたにかけて活躍してきた有能な女性建築家が、母国イタリアにもどりローマを拠点に働こうとする。
しかし、母国はあまりにも男性優位社会だった … 。
まず感じたのは、日本以上の男性優位社会が、まさかヨーロッパにあるなんてという驚きだった。
ある会社と契約を結ぶという段階になって、「妊娠したら解雇する」という条項を見つけ、主人公のセレーナが席をけって憤然とビルを出るシーンがある。
日本でそのような契約書ってつくれるだろうか。そっか、最初からそう書いてある方が、周囲の圧力でいられなくなる日本の会社より潔いとは言えるかもしれない。
そんな男社会で、アラサーの才能ある女性がばりばり実力を発揮するには、いろんな障害を乗り越えないといけない。
容姿もそこそこ美人という設定なので(実際にいたら相当美人のわくに入る女優さんだろう)、仕事にかこつけて食事に誘われ、行ってみると仕事は二の次でただのエロおやじだった、というような経験は、働いている女性の多くが経験しているのではないだろうか。
セリーナが、公営住宅を大々的に改築するためのコンペに参加する。
彼女の案が高い評価を受け、ほぼ採用という流れの面接で、「で、ボスは来てないのかい?」と聞かれる。
つまり、彼女はアシスタントだと思われていたのだ。正直に自分の作品と言えば採用されないと咄嗟に判断したセリーナは、噓をつくことにする。
ボスはいま日本に出張にいっていて、帰国できないのだと。
さあ、ボス役はどうするか。あるレストランで知り合ったチョーイケメン、フェロモン出まくりの男友達に頼むことにした。
出会ったとき、一瞬でセリーナはこのイケメンのレストランオーナーのフランチェスカに心を奪われていた。
でも、フランチェスカはゲイだった。
デートに誘われてショーパブに行き、気づいたら隣にいたはずのフランチェスカがゲイダンサーに混じって「ふぉーっ」って叫びながら踊っているのを呆然とみつめるセリーナの顔とか、笑ってしまった。
男中心社会を生きるキャリアウーマンの苦悩を描く … といった重いものではない。
でも(だからかな)、彼女を生きづらくさせる周囲の無意識の圧力がより鮮明になり、「ふざけんな!」と立ち向かうも、すぐにへこたれ、また立ち向かっていくというセリーナのけなげさが、ほんとに愛おしい。
個人的には、ゲイだとわかっても、なおさら好きが募りどうすることもできないセリーナが、仕事がうまくいかないのよりもせつなかった。
社会派コメディーというジャンルなのだろうか。
つい声をあげて笑ってしまうシーンがいくつもある映画って、なかなかないじゃないですか。
日本のものだととくに。でもこれはあっけらかんと笑えて、気づいたら泣いている。
ゲイのフランチェスカが、昔結婚していた時に生まれた息子もいい味わいを出している。
どうしても紹介したい泣けるセリフがあるけど、ご覧になる方が一人でもいらっしゃるかもしれないので書かない。
見終わって、明日からおれもがんばろう! と思えた、今年みたベストです。