水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

復活 男祭り

2023年09月23日 | 演奏会・映画など
  吹奏楽 秋の男祭り 2023

日時  2023年9月23日(土)
    13時15分開場、14時00分開演 (入場無料)

開場  ウエスタ川越大ホール(東武東上線・JR川越駅西口より徒歩5分)
        
内容  男子校単独ステージ  共学校男子合同バンド演奏
    全員合奏(  客演指揮 武生商工高等学校 植田薫 先生 )

参加校 
 県立朝霞高等学校  県立朝霞西高等学校  県立浦和高等学校    
 県立川口高等学校  県立川越高等学校   川越東高等学校
 県立川越南高等学校  県立熊谷高等学校  慶應義塾志木高等学校
 県立坂戸西高等学校  城西川越中学校・城西大学付属川越等学校
 城北埼玉中学・高等学校  西武台高等学校  県立所沢北高等学校
 豊昭学園     細田学園中学校・高等学校  県立松山高等学校
 武蔵越生高等学校  山村国際高等学校  山村学園高等学校
 立教新座中学・高等学校  県立和光国際高等学校
 早稲田大学高等学院中学部
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2021年の映画

2022年01月22日 | 演奏会・映画など
作品賞
 日本アカデミー賞の発表にさきがけて、2021年の映画から、私的ノミネート&ベスト1の発表です。
 優秀作品賞ノミネートは、以下の6作品。
 「ホリミヤ」「すばらしき世界」「あの子は貴族」「子供はわかってあげない」「彼女の好きなものは」「ドライブマイカー」
 そして輝く、今年の一作と言えばこれしかないで賞は……ジャラジャラジャラジャラ……でん。
 沖田修一監督作品「子供はわかってあげない」。
 これがノミネートされてない日本アカデミー賞は、見る目がないと言うしかないでしょう。

主演男優賞 
 役所広司「すばらしき世界」世界の役所。
 綾野剛「ヤクザと家族」安定、安心のお芝居。
 若葉竜也「街の上で」単館系のキング。
 古田新太「空白」振れ幅。
 西島秀俊「ドライブマイカー」池袋シアターイーストのロビーで生でみた時、ほんとかっこよかった。

助演男優賞 
 鈴木亮平「孤狼の血2」千変万化。何になってもそれしかない造型になる。
 仲野太賀「すばらしき世界」仲野さんを出しておけば安心。 
 豊川悦司「子供はわかってあげない」見事な父親役。
 山田裕貴「ヒノマルソウル」せつなかっこいい役ならこの人。


主演女優賞
 上白石萌歌「子供はわかってあげない」役者フィジカルの高さ全開。「若さ」というか「生きる力」というか「生のまぶしさともろさ」とかの抽象を具現化したらこういう生き物ができあがりましたというような今年最高の役者体があった。
 高畑充希「浜の朝日の嘘つきどもと」主演の喬太郎師匠が、「みつきちゃん、ほっんと顔ちっっちゃいんだぜ」って高座でうれしそうに言ってた。朝ドラヒロインも帝国劇場のヒロインもやって、この若さで殿堂入りのキャリアだけど、こういう規模の小さい映画で観るのが一番すてきな女優さんだと個人的には思う。
 水原希子「あの子は貴族」田舎の進学校から上京してきた女子大学生が観たら、100%泣くでしょ。
 松岡茉優「騙し絵の牙」ほんとは助演なのかな。いや主演でしょ。スキルの高さは最高峰。

助演女優賞 
 大久保佳代子「浜の朝日の嘘つきどもと」大久保さん、絶妙に高校の先生だった。それも国語の先生でちょっとアウトサイダー的立ち位置の、県立高校にいそうなタイプで、実は小説書いてます、昔かなり芝居やってましたみたいな雰囲気の。
 斉藤由貴「子供はわかってあげない」永遠の尊さ。なぜ色褪せないのでしょう。
 山田杏奈「彼女の好きなものは」「ひらいて」こじらせぎみの女子高生をやらせたら日本一。

新人賞
 久保田沙友「ホリミヤ」この子に叱られたい。
 石川瑠華「猿楽町であいましょう」「うみべの女の子」よくがんばった。これからも楽しみ。西武文理から上智の理工学部出身なんだって。教え子にこういう子がいたら人生棒に振りそう。
 エミリー「リスタート」品川庄司の品川監督作品。もっと撮ればいいのにな。そんな簡単なものではないのだろうか。HONEBONEのライブに行きたくてファンクラブ入ってしまった。

アニメ作品賞
 「映画大好きポンポさん」映画愛あふれてる。

ミュージカルは最高で賞
 「キンキーブーツ」。これぞ。ザ・ミュージカル。本場のはちょっと格がちがいすぎる。だから日本人は日本のミュージカルやるべき。
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浜の朝日の嘘つきどもと

2021年09月15日 | 演奏会・映画など
 福島県の南相馬市に「朝日座」という映画館がある。
 昔ながらの映画館だ。このへんでいうと川越スカラ座のような。
 あとは……、吉祥寺プラザぐらいかな。
 もう、こういうタイプの映画館は、廃業するか、別の資本が入って大改装するかみたいになっている。
 当然、福島県で営業し続けるのは難しい。
 実際に何年か前に閉館し、いまも建物が残るという「朝日座」を、そのまま舞台にした作品だ。
 映画館の館長? 館主? は、柳家喬太郎師匠が演じる。

 スーパー銭湯に身売りして小屋をたたむことになった館主が、映画のフィルムを燃やしているとこに、東京から若い女が現れる。
 「フィルム燃やしてんじゃねぇよ、じじぃ!」
 「廃館なんかさせない、私が立て直しに来た」と、高畑充希ちゃんは言う。
 喬太郎師匠はおれより二つか三つ年下なのに、すっごい「じじぃ、じじぃ」言われてた。
 そっか、そういう扱いか……としみじみしながら、充希ちゃんになら「じじぃ!」って強くののしってもらいたい気持ちも生まれていた。
 「だいたい、おまえは誰だ、名を名乗れ」と言われた充希ちゃんは、とっさに「ええと、もぎりこ……茂木莉子」とうそをつく。
 浜野あさひが本名で、この名前が彼女の「不幸な」歴史のもとにもなっているのだが。
 あさひが尋ねてきたのは、高校時代の恩師である大久保先生との約束があったからだ。
 大久保先生じゃないか。役名、なんだったっけ? いいかこれで。
 大久保佳代子さんそのままのたたずまいで、本当にこんな高校の先生いそうな感じで演じていた。今年の助演女優賞候補にぜひともあがってほしい。高畑充希ちゃんはあまりに上手すぎて気持ち悪いくらい(いい意味で)。

 あさひは、高校時代に大震災を経験する。そのあとのいろいろで、家族の心も離れ、友達ともうまくいかなくなる。
 ふらふらと屋上に歩いていくあさひを、大久保先生が見かけ、声をかける。
 むりやり自宅につれて帰り、一緒に映画を観る。
 「人間てみんな最後は死ぬんだよね、あわてることないよね」とつぶやく。
 家の事情で東京に転居することになり、あさひは転校するのだが、新しい学校にもなじめずに退学してしまう。
 家出してきたあさひを、大久保はかくまう。そして映画を観る。
 「あたしさ、すぐ男の人を好きになって、つきあうんだけど、すぐふられてしまうのよ」
 そのたび大久保は、映画を観て自分を慰めてきたという。
 そんな先生の影響をうけ、後にあさひは映画の配給会社に勤めることとなった。

 時は流れる。
「もともとやってけなかったんだけど、コロナにダメ押しされたんだよ」
 大震災とコロナ禍という、人の力ではいかんともしがたい二つの大きな災厄を生きる福島の人々を描いた作品ともいえるだろう。
 さらに、大久保先生は、病気というあらがえない運命をかかえることにもなった。
 その知らせを受け、残された日々と少しでも一緒にいたいと、あさひは病室に足を運ぶ。
 そして、大久保が足繁く通った朝日座をつぶさないでほしいという願いを聞く。

 あさひは、映画に救われたというより、映画を愛する大久保先生に救われた。
 だから彼女の愛する映画館を守りたいと思ったのであり、それが亡くなった大久保先生を救う行為なのだろう(まわりくどいか)。
 「本当はなくたって生きていけるもんだけどね。」
 大久保先生は言う。
 たしかに、そのとおりだ。映画がなくても生命の維持はできる。
 でもそれは人として生きていると言えるのか。
 声高にそんな問いかけをする作品ではない。 
 何がムダかという問いかけをつきつめたら、生きることのほとんどはムダになってしまう。
 それなら、できる範囲でいろいろあらがってみるのもいいんじゃない? と背中を押してくれてるようだ。
 映画にかぎらない。
 音楽でも文学でもスポーツでもアイドルでも、人はいろんなムダなものに救われながら生きている。
 タナダユキ監督にはずれなしの原則は揺るぎない。
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子供はわかってあげない

2021年08月18日 | 演奏会・映画など
 今度は妹にやられた。
「子供はわかってあげない」は日本の映画史に残る傑作で、萌歌さんの今年の最優秀主演女優賞はまちがいない――。
 いや、そんな外形的な評価など、この作品の奇跡の前には何でもない気がする。
 テアトル新宿で目にしたものは、一体なんだったんだろう。
 若さのかがやき、不安定さ、純粋な心、失われない子供の部分……。
 大人との対比で、今の親と生みの親との対比で、もっと幼い子供との対比で、同級生たちとの対比で描かれるそれら。
 高校2年生、17歳という年齢の少女のもつあやうさときらめきが具現化されたもの。
 アニオタで、かわいくて、水泳の選手としてもそこそこで、親に嘘をついて冒険するくらいの勇気をもち、嘘をついたことを心から悪いと思う純粋さがあり、真剣になればなるほど笑ってしまうという癖があり……。
 こんなキャラクターをここまで自然に演じられる女優さんているだろうか。
 いそうな気がするけど、かわいすぎても、色っぽすぎてもいけないし、上白石萌歌という子をキャスティングした時点で、この作品が奇跡に近づく大きな一歩になっていたのだろうと思う。
 もちろん細田くんもすばらしいし、千葉雄大くんもはまっていたし、義父の古館寛二さんの安定感は言うまでもないし、母親の斉藤由貴さんはもはや神。
 実父で元新興宗教の教祖という不思議な父親役は、豊川悦司以外には考えられない。
 劇中だけで使われるアニメを、最高のクリエイターと声優で作ってしまうこだわりは、おそらく作品全編に貫かれている。
 一回観ただけでは全然味わいきれてないから、近くの劇場でもはじまったら、もう一回観るべきかもしれない。この夏のもやもやをすべてふき晴らしてくれる作品だった。
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アメリカンユートピア

2021年05月30日 | 演奏会・映画など
~ 「アメリカンユートピア」は、デヴィッド・バーンによるアルバム「アメリカン・ユートピア」が原案の舞台を映画化。2019年秋よりブロードウェイで上演された舞台を再構築し、デヴィッド・バーンと11人のミュージシャンやダンサーたちが舞台に上がる。『ドゥ・ザ・ライト・シング』などのスパイク・リーが監督を務め、デヴィッドと共に製作も手掛け、ラジオDJや音楽評論家などの肩書を持つピーター・バラカンが字幕監修を担当している。~ 


 みなさんご存じですよね、元トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーン。
 ちなみに自分は知りませんでした。
 前に予告編を観たときから、公開を心待ちにし、自粛で延期され、やっとはじまったのを観ることができた。
 そのまま中継したものではないが、オープニングからアンコールまでライブが堪能できる。
 今いろんなライブが配信されるようになった。音楽家、役者さん達の苦労には頭が下がる。ただ、やはりパソコンやスマホの画面ではなく、同じ空間で空気の振動を感じたい。
 客席の人々はたんなる傍観者ではなく、一緒にライブを作る存在でもある。
 そういえば、寄席も、配信できるから無観客にするよう都から要請され、結局閉館せざるを得なかった期間があった。寄席に一度でもいったことのある人なら、そんなのが成り立たないことぐらいわかるはずだ。
 ただし、映画館という特殊な空間は、プライベートな画面で感じられないものを感じさせてくれる。
 空気の振動はないけど、客席からは見えないものまで見せてくれるのが大きい。
 そもそも、ブロードウェイでやっているショウを見ようと思ったら、何十万円のお金も必要だ。
 それだけのお金を本当に使ってしまっても悔いは残らないだろうと「キンキーブーツ」を見たときは思ったけど、この「アメリカンユートピア」も同じ感覚だ。
 これを、たった1800円で見ていいのか。
 映画化してくれた関係者にお礼を言いたい。
 そして、部員のみんなにも勧めなければならない。
 市立柏の石田先生が、いろんなエンタメに触れる、観に行く、経験することは、すべて勉強だ、とおっしゃっていた。
 全部初めて聴く楽曲なのに、からだにしみこんでくる気がするのは、曲を聴いているのではなく、歌と踊りと演奏との境界がないパフォーマンスを観ているからだろう。
 これを観ておくのと、そうでないとでは、これからのポップスステージの作り方に大きな差ができると思った。
 観ている途中からいろんなアイディアが生まれてきた。
 原則日曜部活休み期間のおかげで、すばらしい自己研鑽になった。
 もしかしたら、このあまりにもお買い得な体験ゆえか、帰りに寄った東武デパ地下で、とんでもなくお買い得なお惣菜3パック1000円を手に入れることもできた。
 デヴィット・バーンさんの御利益はすごい。
 いや、御利益はお惣菜ではないな。70歳近いデヴィット・バーンさんが、歌い、踊り、ギターを弾く姿はあまりにかっこよく、部活の参考どころか、生き方を啓示してくださった感覚さえもった。
 年上でばりばりファンクな植田薫先生を想起してしまったのも、音楽は違うけど、同じ匂いを感じたからだろう。また薫陶を受ける場をつくれたらいいなと思う。
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茜色に焼かれる

2021年05月21日 | 演奏会・映画など
「生きる意味とは何か」などと、なぜ人は考えてしまうのだろう。
 考えたことのない人もいるかなあ。もしいるとしたら、それは幸せなことだ。
 そうか、ここに真実があるのかもしれない。幸せの渦中にいる人は、自分が生きる意味を問いたださない。
 演奏会の直前の練習で、急にセリフが入ってきた部員たちの様子にこっそり目頭があつくなっている状態で、おれはなんで生きているのだろうとは、たぶん考えない。
 卒業式の後ありがとうございましたと言いに来てくれた子を握手してるときに、おれの存在意義は何かと思い悩まない。
 そんな日ばかりではないけど、ありがたいことに今の生活に不満はない。でも世の中の理不尽に対し、あまりに無力な自分を意識したとき、さびしくなることもないわけではない。
 まして、尾野真千子演じる田中良子さんのような境遇で、いろんなことが裏目裏目になっていく流れに人生が入ってしまった時、何か救いになるものはあるのだろうかと見入ってしまう。
 七年前に夫を交通事故で失い、中学生の息子と二人暮らしの良子。
 生活に余裕がないことは想像できるのだが、亡くなった夫と他の女性との間に生まれた子供の養育費を負担し、施設に入った義父のその月々の費用も払っている。昼は花屋で、夜は風俗店で働いても、それでも生活が苦しいことは容易に想像がつく。
 客観的に見れば払う必要のないお金を払っているのは良子の勝手だ。
 夫が亡くなったとき、事故の賠償金を受け取らなかったのも、同じだ。
 「相手から謝罪の言葉がない、うちの旦那は虫けらじゃない、金ですべて解決するな!」という尾野真千子はかっこいいけど、かっこつけすぎてるんじゃないかとも思う。
 日々の暮らしに押しつぶされそうになりながら、「ま、がんばりましょう」と笑顔を見せる。
 押しつぶされそうな人を見かけると、同じようにはげます。
 そんな良子が感情をあらわにしたのは、昔の同級生と再会し、恋愛関係に近い状態になったときだ。
 自分の思いとはうらはらに、相手は完全な遊びであることを知る。
 世の中の理不尽はあまんじて受け売れながらも、自分の気持ちをないがしろにする相手だけは許さないのが、彼女の矜持だった。
 石井裕也作品の根底にあるのは、これかな。
 社会的弱者、アウトサイダー、クラスでういてる存在、めめしい親父、日系移民……。
 華々しい活躍とか、栄光とか成功とかの言葉からほど遠い人々を彼は描き、でもここだけは譲れない「自分」をうかびあがらせる。それが自分の元であり、そこさえ保てれば表面的に何をしようと、どんな目にあおうと、自分は自分だと言ってくれる。
 風俗店の店長がつぶやいた「生きる意味って何?」に答えがうかばない良子が、「母ちゃんのこと好きだ」と言った息子の言葉にはっとするところがよかった。
 思わずハグをする母、拒否はしないものの「言うんじゃなかった」と困った顔をしている中学生役の男子もよかった。
 その気になれば、日本アカデミー賞をねらうような大作も撮れるのに、前作の「生きちゃった」もそうだけど、自分にとって今撮るべきものしか撮らないという矜持を感じさせる作品だった。
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東京佼成ウインドオーケストラ@ルネ小平

2021年05月16日 | 演奏会・映画など
 「東京佼成ウインドオーケストラ」コンサートを聴きに、ルネ小平に出かけた。
 前半はリード先生の「音楽祭のプレリュード」でスタートし、続いて今年の課題曲五曲の演奏、最後は「五月の風」。
 毎年、課題曲が発表になる頃、ひととおり聞いて、どれかな、なんかぱっとしないななどと思ってしまうことが正直ある。でも本気で練習しはじめてみて、この時期に佼成ウインドさんの演奏を聴くならば、どれもが名曲であり名演だ。数ヶ月前の自分が恥ずかしい。
 ふつうだったら、たくさんの中高生で、客席が一杯になる企画だろう。中高生は少なかったが、仲間の先生たちとは会うことができた。休憩中、K北先生と静かに会話していると、「ロビーや客席での会話はお控えください」のフリップみたいなのを持ったお姉さんが近づいてくる。大声出してないし、いいじゃないかと思いながらさらに小声で話していると、別のおねえさんがまたその札をもって近づいてくる。これって、たんに俺が気になってただけなんじゃないか。
 後半は、「百年祭」「ルーマニア民俗舞曲」「たなばた」「シェナンドウ」「アルメニアンダンス」。中高生でも演奏できる名曲群だが、さすがとしか言いようがない演奏。「百年祭」以外は演奏したことがあるが、こうしてちゃんとした演奏を生で聴いてみると、全然譜面を読めてなかったなとも思う。アンコールの「さくらの歌」と「百年祭」がとくに心にしみた。N島先生とも意見があった。サウンドがいいのは当然なのだが、大人の血が通うと人生が見えてくるねと言いたくなる演奏だ。
 非常事態や、蔓延防止の期間のあと、少しずつでも好転していくといいな。6月の西部地区発表会も2年続けてなかったら寂しい。 とにかくみんなでワクチンうって五輪もコンクールもやりたい。そのために、毎日ちゃんと手洗いしてるし、マスクもしてるし、軽く一杯も我慢しているのだから。
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街の上で

2021年05月11日 | 演奏会・映画など
 下北沢という街を舞台にして若者たちの日常を切り取った作品。
 お芝居の世界に「静かな演劇」という言葉があるが、「静かな映画」とよびたい作品だ。
 「水の東西」の個人的な定番発問にこういうのがある。

Q「『鹿おどし』が動いているのを見ると、その愛嬌の中に、なんとなく人生のけだるさのようなものを感じることがある。」とあるが、筆者はなぜ「人生のけだるさ」を感じるのか。
A 単純で緩やかなリズムがいつまでも繰り返され、結果的に何事も起こらない鹿おどしの動きは、平凡な日常の積み重ねで成り立つ人生のあり方と似たものに感じられるから。

「何処住んでるの?」「下北沢」。
 上京して仮に下北と言える範囲に居を構え、帰省した折にそれを告げたなら、八割方は「どこ?」となり、ごく一部の意識高い系は「え! 芝居やってたっけ」ぐらい言ってくれるだろう。
 でも下北だからといって、毎日演劇祭が行われているわけではないし、有名な役者さんが街を流しているわけではない。
 芝居小屋はたくさんあるし、田舎には絶対ないような文化を感じさせるお店はたしかにいろいろある。
 だからといって、そこに棲息する人々が毎日毎日非日常的な日常を過ごしているわけではない。
 華やかな噴水のような毎日ではなく、むしろ、なんかありそうで何も起こらない「鹿おどし」のような暮らしぶりだ。
 この映画に噴水はない。
 凶悪犯罪もないし、スーパーマンもゾンビも出ない。
 ヤクザの抗争もなければ、カーチェイスもない。役所広司も有村架純ちゃんも出ない。
 下北に住む若者や周辺の人々の「鹿おどしぶり」をそのまま描き、でも時折訪れる出来事をちょっとだけドラマティックにする。
 読解力の乏しい人は、「ご当地映画」と感じるだろうが、実は普遍的な青春の造形になっている。
 普遍性を描くのにふさわしく、すばらしいキャスティングだった。下北沢に広瀬すずや浜辺美波を住まわせてはいけない。
 主演の若葉竜也くんのあじわい。そして魅力的な四人の女優さん。穂志もえかさん、古川琴音さん、萩原みのりさん、中田青渚さん。
 皆さんほんとに自然に演じている。中田青渚さんのセリフなんか、アドリブ?と思うときもあり、すべて書き込まれてあったセリフだとしたら、それもすごい。
 外連味たっぷりの大型エンターテインメントをつくろうとすると、どうしても洋画に見劣りすることがあるけど、こういう「静かな映画」は、邦画の真骨頂ではないだろうか。個人的な好みの問題かもしれないが。今年のベストかなと思った(もう五個ぐらいベストって言ってるかも)。
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約束の宇宙

2021年05月05日 | 演奏会・映画など
 何かをなしとげようと思ったなら、それ以外の多くのものをがまんしなければならない。
 あたりまえの原則だが、ときどき忘れそうになる。
 試合に勝ちたいけど練習がもう少し楽ならいいなあとか、仕事の成果をあげたいけどのんびりしたいなあとか。
 そんなことはあり得ないのに。
 仕事と遊びに境目がなく、人生を謳歌しながら億万長者みたいな人はたしかにいるが、彼らもおそらくいろんなものを捨てて今があるはずだ。われわれ一般人にそれが見えないだけで。
 世間の耳目を集め華々しい活躍をしている人、たとえばアスリートとか、アーティストとよばれる人も、その華々しさの元には、一般人の想像を超えた積み重ねがある。
 
 幼い頃、宇宙飛行士になりたいという夢を持ち、女の子は無理と言われ続けて、それでもあきらめずに努力し続けてきたサラ。
 その過程で出会って結婚した夫との間に一女をもうけ、しかし離婚してシングルマザーとして娘を育てながら、宇宙飛行士の訓練を続けている。
 そして、ついに宇宙飛行士に抜擢されて、数週間の実践的訓練に経て、宇宙へと旅立っていく……。
 彼女のこの一連の過程だけ見れば、努力が報われて夢がかなったハッピープロセス、ハッピーエンドだが、それは幼い娘と離れて暮らすことでもある。
 娘のステラちゃんは小学校低学年の設定だと思うが、高1に1年会えないのとではやはり意味が異なる。
 母親の庇護があってはじめて心が落ち着く年齢だし、成長の度合いもまるっきり違う。
 先輩の飛行士が「大事なのは、帰還したあとの生活だ。自分抜きで1年間暮らしがすすんでいるから」と話してくれる場面があった。
 自分抜きで娘が育っていくこと。母親にとっては、一番せつない夢の代償かもしれない。
 二人の涙は、母親経験がない者の涙も誘う。
 夢の実現には、女性であることの困難もつきまとう。
 熱を出した娘の対応で訓練に遅れればいやみを言われ、しょせん女にはつとまらない、はやく辞めろ言われる。
 子育てしながら仕事との両立に苦労する女性でなくても、その切実さが伝わる。
 それでも、彼女はあきらめない。
 「もうムリ!」と思わず口にするほど追い込まれながら、なんとか自分を保てているのは、やはり娘の存在のためだ。
 この辛さから逃げたなら、かえって娘に顔向けできないから、というような。
 ロケットを見せるという約束を果たし、あれに乗っていくからねという母親を見つめる最後のシーンでは、一人の女性としてがんばってと言っているかのような落ち着いた笑顔を見せるステラ。
 この子役の子、なんて上手なんだろ。かわいいし。西洋人のかわいい少女は反則なぐらいかわいい。
 あんまりたくさんの映画館でやってる作品ではないが、地に足のついた名作だと思う。

 夢を叶えるためには、友達を楽しく過ごす時間も、ゲームをしたりマンガを読んだりする時間もなくなる。
 お酒を飲んでわいわい騒ぐ時間もなくなる。仕事のために親の死に目にあえないなんてこともある。
 たくさんのことを失う。でもおそらく別種のものを手に入れられることも間違いない。
 どっちをとるかは、その人の考え方、生き方の問題であり、そこに正解はない。
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ミナリ

2021年05月04日 | 演奏会・映画など
 移住した韓国人一家の移民物語がアメリカで好評を博したのは、アメリカ人が根本的にもつ移民アインデンティティを刺激されたからなんじゃないかな……て言えるほど、アメリカのことは知らないけど。
 でも、たとえば「あの子は貴族」の主人公の気持ちを、よほど生粋の東京っ子以外の東京人がなんとなく感じ取れるみたいな感覚はあるような気がする。
 思い描く理想の新生活は、そう簡単に手に入るものではないことを、誰もがわかっている。
 わかっていながら夢を追い、明日を信じてしたたかに生きる移民の暮らし。
 水辺に芽を出し根を張っていくミナリはそんな暮らしの象徴だ。
 センターの小説問題の最後に必ず出るタイプの、わかりやすい象徴。
 若い一家がすべてを失って川辺に行ったとき目にするのは、亡くなったおばあちゃんの植えたミナリが大きく根を張っている様子だった。そしてそれ以上説明しないのがいい。邦画だと、ここで「もう一回がんばろう」って言わせちゃったりしがちだ。
 あじわい深い作品だった。おばあちゃん役の方がアカデミー賞の女優賞を受賞されたのも納得できる。
 インタビューで、(隣にいる)ブラッドピットさんはどんな匂いですか? と尋ねられ、「私はイヌじゃない」と笑顔で答えられていた。アメリカにも日本と同じくらい低レベルのインタビュアはいるものだ。いつか樹木希林さんにもとってほしかった。きれのあるインタビューを見たかった。

 アカデミー賞が発表された翌朝、天声人語がなんか的外れなことを書いていた。
 もしかすると自分に気づけない深い洞察があるのだとしたら、読解力不足を謝るしかないのだけど。
 でも、昨今の情勢のなかでのアカデミー賞で、アジア出身の監督さんが作品賞を、韓国の女優さんが主演女優賞をとるということになんの言及もなく、もちろん一般人のYAHOO映画のコメント欄レベルならいいけど、天下の朝日新聞の一面がこんなレベルでいいのかと驚いた。
 ミナリとはセリの意味だと紹介し(映画に興味ある人は知ってるって)、セリ鍋がブームになって久しいと述べ(ほんとに?)、子供世代のために働く親という意味がセリにあると紹介し、セリの食感が恋しくなった……とまとめる。
 入試の小論文で書いたら、まず点数をもらえないだろう。自分の講習を受けている生徒さんから提出されたら赤だらけになる。
 文章のうまい下手以前に、志が感じられない。
 悪口ではない。自己防衛としてそう感じる。
 小論文の勉強に「天声人語」を読もうなどとのたまわれる同業者が、今もいると聞くので。
 正直、他校の生徒さんがそうしててもかまわないのだけど、国民を育てる仕事に携わる者として、ほおっておけない思いがふつふつとわいてきた。逆にこの天声人語自体が、小論文講習のネタにはなる。
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