2年前にアイドルユニット「スリー・リーブズ」やおたくを演じたメンバーが卒業を迎え、もう一回彼らを登場させたいと思い、「みきりん、アイドルやめるってよ」というタイトルだけ決めて企画を練りはじめました。ちなみにスリー・リーブズという名前は、一昨年大流行した「君の名は」のヒロイン「三葉」に基づいています。
1月に「世界一悲しいオーディション」という映画を観て、方向性が決まりました。 アイドルグループBISHやBISを擁するWACKという会社があります。アイドルに憧れる女の子たちが、その会社のオーディションを受ける様子を描いたドキュメンタリーです。合宿形式で行われるオーディションは、まさに苛酷の一言。そこまでやることが本当に必要なのかと見ている方は感じる。しかし、わかっていてそこに飛び込んでいった子たちは、必死に耐える。
たしかに、守られた環境で、作られた理不尽に耐えられないようでは、現実の芸能界を生きていくのは難しいという、その会社のプロデューサーの考え方には共感もしました。 歌やダンスはもちろんのこと、演劇のワークショップや自己啓発セミナー風のものまで、さまざまなトレーニングを経て、参加者たちは変わっていく。殻を破り、ちがった自分になっていく自覚も生まれる。同時にそれができない子は、途中でリタイアしていくことになる。
今自分がやっていること、やらされていることの意味を、つきつめて考えてはいけない。目の前の課題に、まずは懸命に取り組んでみることがむしろ重要で、合宿の終わり頃には自然淘汰的にオーディションが終わり、同時にアイドルとして活動していく下地ができあがっていく。 指導するのは、その世界では有名なカリスマプロデューサー。
カリスマ的な指導者のもとで、圧倒的な努力を積み上げて、常人を超えた力を発揮させるようにするシステム。これって、(一部の)部活動と似ている……。傍からみれば、そこまでやらないといけないのか、ブラック部活ではないかと言われたりもするが、若い生命体の圧倒的な努力は、ときに想像を超えるパーフォーマンスを生むものです。スポーツでも芸術分野でも。
ということで、はじめてタイムマシンとかレンジャーとか幽霊といった「飛び道具」のない脚本になりました。なので、書いている途中から、共学の学校さんでも使える台本になってるなと思いました(どこかやってくれませんか)。ただし、たくさんの男子が女子高生になるということ自体が飛び道具の極致で、まずはそこを十分に楽しんでもらいたいです。
部活はアイドル育成と同じ。「旬」は短い、ていうかたった3年。そして次から次へと入れ替わる。アイドル活動を終えて、それぞれの道を進んでいく彼ら、彼女たち。そのままつながっている子もいれば、全く疎遠になる場合もある。かりに何年も会ってなくても、突然再会したならば、昔と同じ感覚で話ができる。時には相談にのったり支えになってあげたりもできるかもしれない。それは、現役時代に、ともに苦しみ、ともに泣き、ともに笑い、ともに悲しみ、ともに支え合うという経験をしているからだ。そんな経験が一緒にできるからこそ仲間だ。
楽しいこと、簡単にできることをやるためにちょっと集まって、離れていっただけでは、仲間にはなれない。同じ苦労をしている他校の部員も仲間。ときには当人以上にひやひやして見守っている周りの大人達も、広い意味では仲間かもしれない。そして、ほんとうの仲間だったかどうかは、アイドル時代が終わったあとにわかるのかもしれない、などと考えています。