学年だより「免疫力を高める(2)」
真面目一筋で生きてきた人が、大人になってから何かの拍子に「遊び」にはまり、身を持ち崩すほどのめり込んでしまう … 、というような話がある。
そんな時、「あの人は○○に免疫がなかったから」という表現で評したりするものだが、その言葉のニュアンスは全く正しいと、免疫学の第一人者である野本亀久雄先生(九州大学名誉教授)はおっしゃる。
~ 私たち人間にとって、軽い病気は体のトレーニングになるのです。
体の仕組みには、いろいろなレベルで防衛線が張られています。
すごくきれいな環境で生まれ育ってきたところに、初めてボーンと敵が攻めてきたなら、無防備なのは当たり前です。
免疫がないから、ダダダッと敵は本陣まで攻めてきてしまいます。
ところが、それまでに体がトレーニングを受けていれば、バリアが最後の砦まで何段階にも張られています。
昔から言う予防注射は、狭い意味の免疫力です。
実は最後の砦にたどり着くまでにいろいろなレベルごとに戦線が張られていて、なかなか最後までは到着できません。
たとえできたとしても、最後にそこで闘えるのが「免疫」です。
一方で、そういうトレーニングを受けた力を「免疫力」とも言うわけです。
免疫力というのは、自分がもともと持って生まれたものと、みずからのトレーニングで培って強いものにしていったものとがあります。
… 病気にかかったことで体がトレーニングを受け、同じようなあるいは似たような病気にかかった時に闘える、それが免疫です。
女遊びばかりしてきたオジサンなら、ずっとトレーニングされているので、今さら若い女のコごときにはだまされない免疫があるんです。 (野本亀久雄・中谷彰宏『免疫力を高める84の方法』ダンヤモンド社) ~
持って生まれた免疫力で病気になりにくい人は、抵抗力がある人と言われる。
もともとの抵抗力はたいしたことがなくても、トレーニングによって免疫を身につけて、どんどん強い人になっていくこともある。子供のころ「体が弱い」と言われていた人が、いつのまにか風邪ひとつひかない大人になっている例も多々あるが、そういうことだ。
生まれもって抵抗力の強い人はそれはそれですばらしいことだが、身体の弱い人も、小さなストレスを断続的に与えられることで、免疫ができてくる。
ちょっと辛い経験、面倒な仕事や人間関係から逃げ回っていると、いつまで経っても成長できないのと同じだ。「女遊び」は早いうちにしておくものだ。
さしあたり「受験勉強」ぐらいのトレーニングも、さくっと経験してしまった方がいい。
無菌室に逃げ入ろうとばかりしていると、大人になって「大病」にかかる。