学年だより「経験」
同じ環境で、同じ内容の仕事を与えられた時に、やりがいを持ってその仕事をやり続けられる人と、大きなストレスを抱えてその仕事を投げ出さざるを得ない人とが生まれる。
人によって差が生まれるのは当然とは言えるが、時に病気になってしまうほどのストレスを抱えてしまうかどうかの差はどこにあるのだろう。
人として世の中を生きていく以上、ストレスの全くない生活はありえない。
そんな中で自分を保ち健康に働くために何が必要か。、
筑波大学で「産業精神保健学」を講じられる松崎一葉先生は、次の三つが大切だと述べられる。
~ 1 有意味感 … どんなことにも意味を見出す力
2 全体把握感 … 状況を把握し、先を見通す力
3 経験的処理可能感 … きっとうまくできると確信する力
(松崎一葉監修『こころを強くする メンタルヘルス セルフマニュアル』) ~
これをまとめて「SOC(sense of coherence)=首尾一貫感覚」と言うそうだ。
「有意味感」があると、一見自分には意味がないように思えることも、いつかは役に立つ、自分のためになるはずだという思うことによって、前向きな姿勢が生まれる。
「こんなことをやって何の意味があるのだろう」という思いをいだいたままだと、その仕事は苦痛になってくる。
どうせやらないといけないことなら、「有意味感」をもつにかぎる。
「全体把握感」があると、今はつらいけど、いついつまで頑張れば、これくらいの成果が得られるはずだという心のゆとりが生まれる。
大きな仕事が目の前に立ちはだかったときは、パニックになる前に一歩ひいたところから全貌を見渡したり、分割したりしてみて、終わりはあるという意識をもつことだ。
松崎先生は、職場でのストレスをどう減ずるかという立場で説明されているのだが、これはまさしく受験勉強という大きな課題に対しても役に立つ考え方だ。
もちろん、部活でも、高校生活全般においても。
学校生活とは、「経験的処理可能感」を経験するための大切な場所なのだ。
~ 「経験的処理可能感」とは、出会う出来事に対して、何とかできるだろうと思える感覚です。
仕事で言えば、新しい課題と向き合ったときに「今までの経験や周囲の助けなどがあるのだから、うまくできるだろう」と、ある程度楽観的に思える力です。処理可能感が低いと、新たな課題に対して不安に感じてしまいます。少しずつでも課題を乗り越えて、自信がついていくと処理可能感は高まります。 ~
高校、大学時代に、「ここまでやれた!」という経験を積むことが人生の基盤になる。