帰省して翌日の天気が悪そうな五月三日。
長引いている鼻風邪もあることだし、無理をしないで休日を楽しみたい。
休日用の満足するまで眠っての寝覚めでも充分間に合うのは、春日部(埼玉県)の観音院。
この寺で連休中に限って、所蔵の円空仏7躰が公開されるのだ。
春日部は義妹の実家があるという以外に縁がなく、有名な観光・史跡の地ではないため、いまだ降り立ったことがない。
北千住から東武線の急行に乗り、さらに”各駅”に乗り換えて1駅先の北春日部で降りる。
ここから古利根川を渡って、国道4号に出れば観音院に着く。
丁度、山伏たちによる護摩行が始まった所だ。
この寺、宗旨は修験宗で、関東の修験道場の1つだという。
護摩なので、本堂内の本尊の前で、火柱が高く上がる(火災が心配になるほど)。
その手前に3躰の円空仏が立っている(写真の火柱はまだ小さい方)。
一番大きい聖観音(写真左)は高さが2m近い。
護摩が50分ほどで終ると、やっとわれわれ見学者も堂内に入ることができ、
七躰の円空仏を間近で対面(しかも撮影可)。
小振りながら片足立ちの蔵王権現立像は円空仏として唯一の作。
円空仏は全国に分布するものの、出身は美濃なので、濃尾地方が最も多い。
名古屋宅からも円空仏を尋ねたい。
さて、次に向うは同じ「小渕」(観音院の山号は小淵山)の地に湧き出た春日部温泉「湯楽の里」。
平成16年に掘削に成功したというニュースは知っていた。
なので、春日部に行く機会があればぜひ入りたいと思っていた
(過去、岩槻を訪れた時、同じ東武野田線沿いのここに立ち寄ろうとしたが叶わなかった)。
奇しくも、今回、同じ小淵の地に足を踏み入れたわけだ。
さて、まずは高濃度炭酸泉に入る。
これは温泉ではないが、肌に泡がびっしり着く炭酸泉そのものが大好きだから。
次に、露天の温泉に入る。
日帰り温泉というと、温泉というに値しない薄さの「アルカリ単純泉」がデフォだが、ここは違う。
泉質は「ナトリウム塩化物泉」でれっきとした療養泉。
しかも、珍しくも有り難い”高張性”!。
すなわち成分の濃さが半端なく、どんどん肌から浸透する。
その濃さを薄めることなく、かけ流してある。
鼻風邪の身でありながら、いやそれだからこそ、じっくり温泉の浸透圧に浸る。
充分温まったところで、湯上がりに冷えたビールと熱い揚げ餃子。
ここから、古利根川を渡り返して、春日部駅前まで歩き、ついでに最勝院にまわって、
この地の主だった南朝の武将・春日部重行の墳墓に詣で、
踏み切りを渡って駅の西口に出て、名物とかいう藤を見ようと思ったらもう花はなかった。
のんびり出発して、円空仏と湯に満足した半日旅だった。