今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

半可通ほど世間受けがよく自信過剰になる理由

2021年08月18日 | 心理学

「メンタリスト」と称する人が墓穴を掘って、世間からの逆風を受け、その”専門”知識の浅さまでやり玉に上がっている。
その彼、さすがに「サイコロジスト」(心理学者)とは名乗っていないものの、素人相手に心の専門家※を自称して、一世を風靡していたらしい(私も名前だけは聞き及んでいた)。
※:自称専門家には「心理研究家」と称する人もいる。

実際、臆面もなくハッタリかます性格傾向というのがあるが、ここではもっと一般的に、誰にでも該当しそうな心理として「クリューガー・ダニング効果」を説明したい。

これは、中途半端に詳しくなると自信過剰になり、さらに深く追究すると今度は自信がなくなってしまうという、逆説的な認知バイアスをいう。

まず、自分が知らなかった世界に入りこむと、「知らなかった、そうだったのか!」という感じで新鮮な知識がどんどん入ってきて、自分が今までとは一段違った、いっぱしの”通”になった気になる。
この段階で、周囲に得意げに知識を披露して、自信過剰が促進される。

心理学科の学生でいうと、フロイト理論なんかをある程度勉強した段階で、他人の無意識(本人が自覚していない深層の感情)とやらを頼まれてもいないのに解釈したりする(あるいは健常者をDSM-5※に当てはめようとする)。
※:アメリカ精神医学会の診断マニュアル第5版。日本でも使われている。
なのでこの段階の心理学科の学生は、他学部の学生から嫌われる。

この段階は、素人の物知りレベル以上ではない。

ところが、さらに専門の勉強が進み、大学院を経て、いっぱしの研究者になると態度が逆になる。

研究者というのはその学問領域を推し進める側に立つべき存在なので、勉強を重ねて既知の世界を通り抜けて、既知の世界の最先端に立つことになる。
同時に、今まで信じていた理論に、同じ研究者の視点に立って疑問をもてるようにもなる。
前を見れば未知の世界が拡がり、後ろを振り返れば、今まで信じていたものが信じられない状態。
こういう状態なので、自分の専門分野に対して、「これだ!」と自信を持って言えるものが無くなる。

研究者は研究対象が知り尽くされていないから研究を続けているわけだから、心理学の研究者は、人の心が解明されていないことを一番自覚している人たちだ。

ところが、世間は、自信たっぷりに断定的に話す人と、自信なさげに「まだよく解っていない」と話す人とでは、断然前者を信頼する。
というわけで、「メンタリスト」がもてはやされた現象は、本人の心理傾向だけでなく、世間もそういう人を支持する構造なので、今後も起きることは間違いない。
世間では、いわゆる既存の知識だけの”クイズ王”がもてはやされるから。

ちなみに研究者はひたすら解らない問題を解明することが生き甲斐なので、世間的信頼(人気)を得ることには関心がない。
でもこれでは最先端の知が社会に共有されないので、学術的世界をきちんと世間に説明できる仲介者が必要だ。
残念ながら、日本にはそれができる人が少なすぎる(立花隆はその一人だった)。
なので、私も、気象や防災について、学術的専門分野ではないが有資格者として、その一端をを担えればと思っている。


宿をキャンセル

2021年08月18日 | 新型コロナウイルス

7月に奥軽井沢(本当の軽井沢から峠・県境を超えた浅間山の北麓。北軽井沢の西)の宿に8月末の予約を入れておいた。
毎年母と行っていたこの宿に2年ぶりに行こうと思っていた。
7月の時点では、いくらなんでも8月末にはコロナ禍も一段落していると思っていたから。

ところが、予想に反して、収まるどころかむしろ感染者は増える一方。

変異株はちょっとした油断(ほんの短時間マスクを外しただけ)で感染してしまうようだ。
私も母もワクチンは接種済みだが、今どき、不特定多数の人と互いにマスクを外した状態で一緒になる大浴場やビュッフェバイキング会場に赴くのは、まさに「ちょっとした油断」をしにいくようなもの。
ここまで頑張ってきて、この期に及んで感染してしまったら元も子もない。

ここは我慢のしどころだ。
涙をのんで、キャンセルした。

とうことで、今夏はレジャーでの外出は無し。
マスクをしての買い物と、たまに予約で行く国会図書館以外は、自宅に篭っている。


今年二度目の梅雨明け

2021年08月18日 | お天気

先週から本州に横たわっていた停滞前線は、今年二度目の”梅雨前線”で、
18日現在は、日本海で東から押し上げられた形に変形して、今後本州から北上していく(図:気象庁の天気図)。
東から押し上げているのは、パワーを取り戻した夏の主役の太平洋高気圧※(1018hPa)なので、いわば今年二度目の”梅雨明け”ということになる。
それは梅雨末期の大雨(毎年死者を出す)も二度経験することを意味した。
そしてこの後、8月下旬になって暑さがぶり返し、日本は二度目の盛夏を迎えることになろう。

ということで、今年は非常にめずらしい夏となった。

今回の停滞前線が(今時分に発生しておかしくない)秋雨前線ではなく、時季外れの二度目の梅雨前線である理由は、南からの暖湿空気の流入による前線で、しかも太平洋高気圧に押し上げられて北上し、そのあと暑くなるから。
秋雨前線なら、成因も動きも逆で、北の冷気によって発生し、北から南下して本州を縦断し、そのあと涼しくなる(秋になる)。

※:地上天気図では、夏の太平洋高気圧はその北にある(冷夏をもたらす)オホーツク海高気圧(1024hPa)よりも存在感が乏しく見えるが、
それは世を忍ぶ仮の姿で、高層になるほど強大になり、500hPa面(上空約5500m)では、日本の南岸をすべて覆い、中国内陸にまで達している(左図)。
一方地上では威勢のいいオホーツク海高気圧は高層では見る影もない。
これが通常の夏の状態である。
ということで、地上の天気の原因となる大気高層において夏が維持されていたため、もう一度暑くなるわけだ。

唯一の違いは、朝鮮半島上空の南にふくらんだ部分で、これが停滞前線の北側の要因で、このふくらみに沿って偏西風が蛇行して流れており、これが地上天気の不安定の第一の原因であった。


自宅の災害危険度の事前確認:地震災害編

2021年08月18日 | 防災・安全

ここ2ヶ月の土砂災害(伊豆山、岡谷)でも分る通り、災害危険度は地域どころか家ごとに異なる。
したがって地域内を一緒くたにした自治体の防災には限界があり、最終的には各家ごとに”独自に”対策を立てる必要がある。
それが防災において言われる”自助”である。

当然、避難判断の基準も家ごとに異なる(自治体から「避難指示」が出ても、あなたの家は安全かもしれない)。
家族の命にかかわる一大事を他人任せにすべきではない。
そこでまずは災害危険度について自宅をチェックしてみよう。

自宅の災害危険度の事前確認について、目下のところ参照してほしい「気象災害編」はすでに記した。

ここでは1年間後回しになっていた地震災害について述べておく(本番が来る前に)。


●まず、地域レベルの災害危険度の把握として、「地震ハザードマップ」(居住自治体のサイトにリンクがある)で自宅周辺を確認する。
これは地盤(地質)の強弱による揺れの違いが表現されている。
あとネットの「地震ハザードカルテ」を利用して、自宅付近の地震被害の可能性も確認しておくとよいかも。


●次にそのカルテでも表現される地形に注目する。
地盤の強弱は地形で表現されるので、目で分らない地質よりも、一目で分る地形をチェックするとよい。
特に地盤が軟弱なのは、河川流域の平地(氾濫原)と河口の三角州(埋立地)で、揺れが大きいだけでなく液状化の危険もある。
液状化については、「液状化ハザードマップ」があればそれも確認する。
すると、川・海沿い以外の軟弱地盤も確認できる。
内陸にある沼沢地(しょうたくち)だ。 
沼沢地は埋立てて宅地開発されると見た目では分かりにくいが、地形的には窪地になっていて、地面の傾斜はもちろん、古い地名(○沼、○久保、大久手など)でも確認できる(地名は意図的に改変・統合されるため、古い地図で確認するとよい)。
その例→記事「武蔵小杉は沼地だった」


逆に地盤が固いのは山地だが、山地は土砂災害が発生する。
土砂災害は地震でも気象災害でもどちらでも発生するから一番注意が必要。
家の周囲の地形としては、周囲に崖などの「急傾斜地崩壊危険箇所」がないかを確認(↓のお勧めサイトから確認できる)。

海に近い所では、液状化以上に津波が怖い。
もちろん自治体サイトの「津波ハザードマップ」で確認(海無し県にはない)。
津波は純粋に標高で運命が分かれる。
海岸から離れていても標高が低いと津波が届く。
そういう場所では、避難先として高いビルが頼りだ。
以上は地域レベルのチェックで、地盤の強弱、液状化、土砂災害、津波の危険性を確認しておく。

お勧めサイト→国交省の「ハザードマップポータルサイト


●次にいよいよ自宅をチェックしよう。
まず建築年月がものをいう。
1981年6月以降に建てられた家は「震度7でも倒壊は免れる」が、5月以前に建てられた家は、震度6で倒壊するかも。
この境目で建築基準法の耐震基準が厳しい方向に改訂されたためだ。
実際、家の建築年代によって被害が異なることは熊本地震でも確認されている。

それに加えて、家屋構造でも耐震性は異なる。
たとえば、一階が駐車スペースなどの柱だけのピロティ構造になっている家は弱い。
また屋内に2階まで届く吹き抜けがあったり、一階に人が出入りできる大きな窓や開口部があると弱い。
逆にいえば、窓が小さく壁が多い家は強い。
ツーバイフォー工法は強い(なので地震保険料も安い)。
瓦屋根は弱い(屋根瓦は気象防災用で、地震には逆効果なので、江戸時代には使用を禁止した藩もあった)。
地上階が地震のエネルギーを直接受けるから、建築物は下層がしっかりして上層が軽い構造がベスト。
逆に下層がスカスカで上層が重いと倒壊しやすい。
以上をもとに家全体の揺れに対する強さを評価。

さらに室内で家具が倒れやすいかもチェック。
補強工事をすればなんとかなるが、箪笥や本棚の収納は、下に重く上に軽くして重心を下げること。
仮に倒れても、就寝中の頭を守れる位置であること。
以上で各室内の危険度をチェックすれば、地震が来たら、そこから逃げた方がいい空間と、そこに逃げた方がいい空間が分る。


避難は、地震の場合、事後となるが、まず津波襲来の危険の有無が避難のタイミングを左右する。
タイミングは大雨の最中の気象災害よりも難しくないはずだが、東日本大震災の死者の9割が、地震の30分後に来た津波によることを考えると、余裕がありすぎるのもかえって怖い。
津波の危険がなく、家が頑丈で倒壊の危険がなくても、ライフラインの破壊や火災の延焼などで避難した方がいい場合がある。

避難場所への避難路を事前に確認しておく。
当然ながら避難路は距離の短さでなく、安全性で選ぶ。
まず避難路は海から離れていること(高台を経由する)。

木造家屋が密集している所は、火災が発生する虞(おそれ)があるので避ける。
道沿いに古いブロック塀や瓦屋根、崩れそうな「急傾斜地崩壊危険箇所」がないこと。
以上の判断基準は気象災害と異なる。
ということは、避難先が同じ場所でも、気象災害(大雨の最中)と地震災害(事後で余震と二次災害が発生)とでは危険要因が異なるため、安全な避難ルートも異なることになる。
すなわち2通りの避難路を実地によって確定しておく。

以上、読者のみなさんは、これを読んで終りにせず、上の確認を実行してほしい。