今日こんなことが

山根一郎の極私的近況・雑感です。職場と実家以外はたいていソロ活です。

心理学の私が量子力学に接近する理由

2020年03月08日 | 心理学

私も少々「コロナ疲れ」気味なので、その話題から離れて、自分本来の関心事を開陳したい。

大学で「心理学研究法」という授業を担当している。
この授業は、心理学専攻のある大学なら必ず開講され、必修科目となっている。
心理学筋がこの授業に期待しているのは、心理学すなわち「心のメカニズムを科学的に探究する学問」が用いている方法(実験、調査、観察など)の基礎を紹介することだが、
私は、それでは不充分だと思っている。

もともと理系でなかった学生に”科学としての”心理学を紹介する授業ならば、
その”科学”とは何か、という問題から、すなわち方法(method)を基礎づける”方法論”(methodology)から始めるべきだと思い、それを実行している。

その”科学”だが、具体的には物理学が理想モデルとなっている。
ただし古典物理学である。
測定値を入れれば、予測値が一義的に計算される(ケプラー〜ニュートンで確立された)決定論的モデルだ。
それを科学の理想的在り方として、授業をしている。
心理学の1年生なら、まずはそれでいいと思っている。

ただ、研究者としては現代心理学が準拠している科学モデルが、17世紀の古典物理学のままであることに疑問を感じているので、現代物理学すなわち量子力学を参考にしたいと思っている。

もともと統計分析に依存している心理学は、個人の挙動を説明するものではなく(世間はここを誤解している※)、決定論ではなく確率論でしかものをいえないから、そちらの方がいいと思う。

※:”この選択肢を選んだ人はこういう性格です”って断言するそこらの”ニセ性格テスト”は心理学とは無関係。心理学の性格検査ではこんなことやらない理由をこの授業で説明している。

量子力学に接近するもう1つの理由がある。
それはスピリチュアルな領域における、古典物理学、とりわけ物質(粒子)的実在論では説明できない現象の解明を期待してのこと。
心的現象を波動・エネルギーととらえる、すなわち人間という現象の粒子的側面が身体で波動的側面が心という視点を確立し、
さらには、超能力的現象も量子力学的現象として説明できるのではないかという期待がある。

※:この表現自体が、古典物理学的常識に準拠したもの。

つまり、粒子的な測定で確認できないから、スピリチュアルな領域は存在しない、という視点を反証できないか。

ただ、ここで注意したいのは、量子力学の我田引水的な(都合のいい部分だけの)適用。
それは疑似科学のやり方だ。
たとえば古代からのスピ系思想が好む、マクロ(宇宙)とミクロ(人間)の現象の相似的対応(ブラフマンとアートマン、天人相関、相似象)は、量子力学では排除されている(ミクロな世界の現象は、古典物理学が通用するマクロな世界とは異なる(非相似)現象だというのが量子力学)。
また、常識に反する理論でも、ちゃんと実証という検証をクリアしているのが量子力学であり、その実証なしに、常識に反する部分だけ共通化してもそれは単なる”妄言”でしかない。
たとえば、それが本当に”波動”だというなら、まずはその振動数(周波数)などを測定して、それに基づいて論を進めなくてはならない(なので振動数データを示さない”波動理論”は疑似科学に分類する)。

量子力学の泰斗ニールス・ボーアは、古代中国の陰陽論☯を気に入っていたというが、科学的議論においては、古典物理学的文法(科学的コミュニケーション言語)で表現すべきと主張して、個人的好みをおくびにも出さなかった。
それが科学者としての矜恃であり、また古典物理学をモデルにした科学論の存在価値でもある。

ただ、こう開陳したからには、今後、このブログで、私が関与しているスピリチュアルな諸現象と(自分が理解した限りでの)量子力学※とを対話させるつもりである(整合させるというより、ぶつけてみたい)。
※:本文では古典力学と対比する意味で「量子力学」と称しているが、波動や場を重視するなら「量子論」とするべきだな。


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2 コメント

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心理学と量子力学の両立性 (森羅万象福祉学提唱者)
2022-05-10 21:48:57
初めまして。
量子力学の考えを土台とした新たな社会福祉学として、「森羅万象福祉学」を提唱する私ですが、貴殿のプログ記事に同感するものを感じました。
私は科学者の異端として、扱われるのであって、大学院は出ておらず、大学卒業論文で仮説で終わっておりますが、最近、量子コンピューターの出現などでいよいよ量子力学を土台とした科学が主流になると感じております。心理学も量子的心理学に発展していくであろうと感じます。社会福祉学もこれまでの概念を超えた新たなアプローチを持つ量子的福祉学が当たり前になっていくであろうと感じます。長文になり、申し訳ありません。ますますの発展をお祈りいたします。
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Unknown (山根)
2022-05-11 00:33:03
森羅万象福祉学提唱者さん、コメントありがとうございます。
科学であること、さらにはそれを支える論理そのものが、古典力学的なものから量子力学的なものに置き換えられていくことを期待しています。
「心は量子である」とまでは断言しませんが(実証が必要)、粒子(モノ)還元的な物質観から波動(コト)的な現象観に移行することで、モノではなくコトを扱う社会科学にも適用可能な論理になると思います。
個人的には古典的な二価論理(Aかつ非Aはありえない)を脱構築する大乗仏教の論理(Aかつ非Aは両立しうる)を仲介したいと思っています。
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