ぐるり240°くらい

2010-03-03 01:41:08 |  乗鞍話し
乗鞍岳の主峰は剣ヶ峰と言います。
山頂を目指し歩き出しはしたものの、片道一時間の道のりを考えるととても億劫でした。
歩き始めてしばらくは何度も引き返そうかと思いましたが、引き返すのも億劫で(なんだそりゃ)、そのまま歩きました。
軽い高山病に罹ってたのかもしれないですね。

道はしばらく自動車が通れる位、広く整地されています。
途中にあるコロナ観測所や肩の小屋に物資を運ぶのに使うのでしょう。
小屋の向こうの斜面には、夏遅くまで雪渓が残り、真夏でもスキーしてる人がいます。
初めて見たときはびっくりしました。
こんな季節に滑ってるよ、おい。
もちろんスキー場ではなく、大きいとはいえ雪渓です。
滑れる距離は数十m程。
リフトなどある訳無く、斜面の上まで板を担いで登ってます。
結構な斜度なので、降りるのはあっという間。
なのに、登るのにやたら時間がかかる。
好きなんだなあと思わせる眺めでした。

さて、道はそこから登山道に入ります。
登山道とは言ってももはや森林限界をはるかに越えた高度なので、植物は草とハイマツが黒くゴロゴロとした溶岩に張り付くように生えてるだけで、ずっと上のほうまでどんな道なのか窺う事ができます。
登っていく人、下りてくる人がアリンコのように繋がっています。
結構、人気。

特に危険な場所も無く、ざらざらと粒の巨大な砂場のような踏み応えの道を、ずるるずるると靴を滑らせながら登る。
上るにつれて、左に広がる山並みの奥行きが増していきます。
小さなピークを2つ3つ越えて、山頂に到着。
たった200mほどしか高度は違わないのですが、富士見岳で見た眺めより見下ろす角度が大きくなり、明らかにもう一段深くなった山の重なりが眼前に広がります。
青空の下、彼方の山の稜線は空と水色に溶け合って、境は定かでありません。
北方の北アルプスの山々から、東の山並み、遙か南には白く靄った大気の海に浮かぶ御嶽山。
うっひょー。
登る前の億劫さはどこへやら。
この眺めに魅了されて、この後数年、乗鞍岳を訪れればそのたび、剣ヶ峰まで登ってはその眺望を飽きることなく楽しんだのでした。(この後はいつ来ても晴れてくれました。)


山の西側は風がそちらから吹き付けるからか、いつも雲が覆い眺めはありません。
1度だけ西側も晴れたときがあって、乗鞍岳の裾野が遠くまで伸びる景色が広がっている様を観察できました。

ジーンズにシャツ2枚という舐めた格好で登ったので、晴れているとは言えそこは3000m峰、吹きさらしの山頂の風は冷たく、長居できません。
名残惜しくも山頂を後にしたのでした。