乗鞍エコーライン

2010-03-09 01:46:50 |  乗鞍話し
今回は乗鞍エコーラインのお話しをしたいと思います。

登頂後、晩に誘われていたユースホステルのある方向に山を下りました。
乗鞍スカイラインとは反対側にも道路が敷かれ、麓まで伸びています。
こちらは無料の一般道路で、通称乗鞍エコーラインと名付けられています。
地図で存在は知っていたのですが、これまで走ろうと思った事がありませんでした。
当時は有料道路が一番景色が良くて、面白いのだと言う固定観念があって見向きもしなかったのです。
しかし、山頂から眺めた時、なだらかな斜面をくねくねと這い、景色の一部となった山岳道路は、走ると面白そう。
実際走って見て、これまでのいいかげんな評価は一変。
高度が高い内は麓の方角の見晴らしが利き、背後を振り返れば、なだらかな山体の乗鞍岳がその全容を見せてくれる。
こんな形してたんだ。
下るにつれて変化する眺め、その表情の豊かさ。
すっかり虜になってしまった。
それからは乗鞍岳を訪れる時は、エコーラインしか使わなくなりました。


正式な起点はどこか知らないのですが、私にとっては乗鞍高原の鈴蘭という所にある広い駐車場がスタート地点です。
乗鞍を訪れた時は、必ずこの駐車場に車を止め、用を足し、一息入れてから畳平へと出発したものでした。
ここからも乗鞍岳山頂を望むことができます。
鈴蘭は標高約1500m。
そこから走り始めると最初は背の高い木々の茂る森の中を道は進みます。
亜高山帯に生育するシラビソ?などの針葉樹が、高い山に来ているんだという気分を盛り上げてくれ、すでに知っているこの後広がるだろうすばらしい景色を期待し、ルンルン状態で運転します。

スキー場を横切る辺りから眺めが良くなって来ます。
道は斜度を増し、ヘアピンカーブの連続。
1速と2速しか使えません。
道は斜面に張り付くように設置され、眺めもどんどん良くなるぅ!。
気分もどんどん良くなり、高度に比例してハイテンションに。
山の雰囲気たっぷりの音楽を収録したカセットテープが2つあって、ここを走る時は必ず流したものです。
2つのアルバムの趣は全然違うのですが、それぞれ高山になんともぴったり。
私の中では乗鞍エコーラインのテーマみたいになって、他の場所で聞いてもエコーラインの景色が眼前に広がるようになってしまった。はは。
位ヶ原山荘辺りは見上げる斜面に樺の木他の白っぽい幹が目に付き、樹層が標高を上げていることを伝えてくれます。
ううっ・・、いい。

乗鞍岳が再び見えるようになると、道はなだらかになり、うねうねと潅木の中に連なっていきます。
頂上に近づくにつれて、渋滞がひどくなる。
前出の雪渓の下をエコーラインは通っているのですが、その手前ぐらいからピタリと止まってしまうことが度々。
でもここを走っているときは全然気になりません。
というか止まった車中から最高の眺めをじっくりと堪能することができ、願ったり適ったりの状態。

ある夏の日は非常に天気がよく、朝から雲ひとつ無い青空が広がる中、登ったことがあります。
麓まではただ青かった空が、高度を上げるにつれて青さを増し、渋滞につかまる山頂直下では紫がかった藍色にまで青が深くなり、見上げる稜線の緑との境のコントラストが凄い。
窓を全開にして山の気で励起した空気を満たした車の中、躁状態になった私は奇声を上げ、山の音楽に合わせて踊ってしまったことがあります。

このまま高度を上げていくとどんどん深みを増して、漆黒の宇宙に繋がっているのだなと思わせる色だった。
あの時の光景は目に焼きついていて、乗鞍エコーラインで過ごした時間の中で最良の刻となっています。