村上龍の最近作「歌うクジラ」は、作者の特徴である俗っぽさを存分に生かしながらの壮大なSF小説である。その中に、人類の医療革命の中で、体温計の発明がどんなに多大な成果であったかについて触れている一節がありました。なるほど、と思ったものだから文章を紹介しようと思い立ち、作品を点検したのですが、該当箇所が見つかりません。
記憶違いかな、あるいはボケたか。
体温計の発明者はベネチアのサントーリオという人だそうです。ガリレオの時代。村上の言うところだと、体温の変化によって病気が意識され、その治療の研究が進むようになったとのこと。それまでは病気は悪魔的な行状だったのかもしれません。
指摘されてみると、我々の身の回りは、たくさんの文明の成果が取り巻いていることに気づきます。自動車や飛行機といった大型なものではなくとも、である。
自然回帰というのが、アンチ現代文明として述べられることが多いのだが、体温計のことを思うとそう単純なものでないことがわかる。 【彬】