この3月に他界した母は、若い頃は苦労したが、余裕ができてからは父と旅を楽しんでいた。中国、東南アジア、カナダ、ヨーロッパなど、今の若い人並み以上であった。だが、中近東には行けなかった。エジプトに行きたかった、というのが悔いる言葉だったようだ。遠いい国だった。
中近東のトルコ、アラブ諸国などの国は、一般の日本人にとって、遠くて、謎めき、エキゾチックで行ってみたいと思わせるものがあるだろう。だが、今の情勢ではそれは難しくなった。遠いい国々が一層遠くなりつつある。
これらの国々は今イスラム文化圏であるが、それは8世紀以降のことである。その遥か昔にも素晴しい文化が栄えていた。
例えば
①シリアについて。約2千年前の、古代ローマ帝国の時代、シリア砂漠の中央に、シルクロードの中継都市として、パルミラ王国が栄えていた。3キロ四方を城壁で囲み、人口5万人の当時としては最大級の都市で、王女ゼノビアの時代が絶頂期であった。現在、ギリシャ、ローマ様式の建造物の遺跡が世界遺産となっている。
②イラクについて。古代メソポタミア文明の中心であった。
今、苦しい状況にあるシリア、イラク他の国々。遠い昔、これらを含む周辺の地域の人々の英知が素晴しい文化を創り出してきた。今の大変苦しい状況が、現在の英知ある人々の手によって克服されることを信じる。
絵は、パルミラのベル神殿遺跡から、私が元の姿を想像したもの。 3月24日 岩下賢治