ワビスケ
奈良公園で高齢者の運転する車が歩道に突っ込み、死者が出た。運転者は公園の鹿を移動させる目的で車を操作していたらしいが、アクセルとブレーキを踏み間違えたようだ。
なんとも哀しい事故である。
池袋の事故が代表的だが、高齢者の運転事故が絶えない。運動神経が鈍った高齢者は免許を返上するのが一番だが、私の知人でも返上する人は少ない。私はもともと運転しないから運転者の事情を云々することは差し控えるが、手離さない理由は想像がつく。
以前、述べたことがあるが、誤運転事故の原因を運転者に求めるのは、今日のような技術社会では筋が違うのではないか、と思う。アクセルとブレーキの踏み違いが起こるのは、右足側にアクセルとブレーキを配置する無理に由来していると思う。これはクラッチが必要だった時代の名残なのではないか。アクセルとブレーキは別な箇所に置くべきだろう。例えば、アクセルをハンドルの握り部分に置き、握りの強さで変換できるように変えるとか。ハンドルを切りながら、スピードを調整する。バイクと同じ要領である。手の感覚の方が足より数倍優れているのだし。アクセルとブレーキの位置を変えることはそんなに難しいことではないように思う。
自動運転が実用化寸前のようだが、老人の誤運転の問題は、自動運転、自動ブレーキとは別の観点からのアプローチがあって良いのではないか、とつくづく思う。
と同時に、老人は若者と同じような車に乗りたいわけではないことを再考すべきではないか。老人が必要とするのは、あくまで移動手段だ。だからスペードが抑えられても良い、サイズも小さくて良い。特段、高速道に乗り入る訳ではない。駐車場もそれほど気にしなくても良い。そんな車を開発すべきではないか。
老人の起こす事故に心が痛むのは、私だけではあるまい。【彬】