ヒメジオン(左)ハルジオン(右)
オリンピックの後、新しい国立競技場は周囲の植え込みも整理され、あたりにその威容を溶け込ませている。でも、奢らず、圧倒するのでもなく、古風だがモダンな姿となっている。この建物を中心に神宮外苑一帯が再開発されることになっていて、設計図が出始めているらしい。目玉は野球場とラグビー場が取り変わること。その他、テニスコートやら運動場なども、再配置されることになるだろう。都内の貴重な緑地帯なので、どんな形に再生されるのか、今からワクワクしている。
ところが、この計画に対し、樹木を守れという運動が起きているらしい。大木があるので、それらの木を伐採するな、と。
そうした動きに、私は賛同できない。あたりにどんな樹木が生えていて、どんな手入れをされているのか、この人たちは知らないのだろう。明治神宮もそうだが、外苑は自然林でなく、植林されたものである。だから樹種も多様だ。ヒトツバタゴやタイワンフーなど珍しい木、備長炭の材料となる大きなウバメガシなどもある。しかし、それらの木も、周囲の設備や建物などの変化によって、生育環境が必ずしも適しているとは言えなくなっている。そんな中で、木を守れと言っても仕方ない。それよりも全面的に作り替え、環境や雰囲気にあった木々に植え替えることの方が格段いいことはわかり切っている。外苑ゆかりの観兵エノキは、今では、すっかり枯れてしまっているのだ。
小林秀雄はかつて、自然とは手を入れたものだ、と言った。人間の手が加わり、手入れされることで、初めて自然と呼ぶにふさわしい風景ができるのである。
そんなことを思っていると、東京都千代田区の警察通りで、銀杏並木伐採に反対する人たちがいるとの報道があった。伸びた枝が車の運行に支障があるというので、区は伐採するというのだ。銀杏は各地に並木として植えられているが、街路樹としては適していない。落ち葉は滑るし、実は悪臭がする。今の生活環境とは全く異なった時代の遺物として残っているものである。地元の人たちが、伐採に反対するというのが私には理解できない。歩道を広げ地域にふさわしい樹木を植えることで、新鮮な街路に整備できるのだ。【彬】