萩です。
九州から関東に至る今年の大型台風災害は、かつての伊勢湾台風に匹敵するほどの甚大さである。国からの激甚災害指定を受け、復旧は昼夜を選ばず進められているようだが、その際思うことがある。せっかくの機会だがら、これを契機にして今日の社会状況に応じた都市計画を進めてはどうか、と。
被災者はそれどころではない、外部の人の勝手な思い込みだと言うかもしれない。しかし、関東大震災の時も、戦後復興の時も、都市計画は策定されたのだ。が、資金不足や対象地域が広すぎて思うように進められなかった。でも今日の先進的な土木技術、建築技術をもってすれば、限られた地域なら、理想的な地域社会が一気に推進できるのではないのか、と思う。問題は住民たちを説得し、それを推進するリーダーが存在するかどうかだ。
シャッター街が象徴するように、地方都市、あるいは農村社会の問題は、交通インフラが現代の車社会に適応していないことである。その上、土地にしがみつく農村社会の名残を強く残していて、家々が分散していることが効率的な社会インフラを作る上の障害になっている。利便性を優先し、家々は一定地域に集合したい。そしてその中心を何にするかが地域の選択だ。庁舎など問題外である。私なら高齢化社会を念頭にした総合病院を中心に置く。その病院の周囲を家々と広い歩道が囲み、そしてより大きな地方都市に繋がる衛星地域にする。当然ながら電気、ガス、上下水道は完備される。住宅は戸建のほか、集合住宅が点在し、地域のまとまりを稠密にしていく‥‥などなど次々に思いは膨らんでいく。
屋根瓦を飛ばされた家屋の復旧作業をテレビなどで見ると、複雑な思いがする。瓦屋根は半世紀前だと豊かさの象徴だった。今の建築技術なら、瓦は使わないだろう。土台も、地層を深く掘って、そこに鉄筋コンクリートを打ち、構造をしっかりしたものにするだろう。
一年間、仮設住宅で我慢すれば、都市計画に基づいた立派な農村都市が完成するはずだ。
今日、大都市であろうが、田舎の小都市とか、あるいは農村社会でも、電気、ガス、電波、上下水道は、必須のインフラストラクチャー。災害の中で、電気が問題になっているが、もっとも重要なのは、上下水道である。水道は通っても下水道が完備していない農村は多い。インフラの中で、電気は最上位なのは間違いないが、復興にあたっては、この下水処置のことをよくよく考慮してもらいたい。
災害を契機に従来の都市のあり方、農村社会のあり方を作り直す、今日的な都市計画が望まれていると思う。その実現は難しいかもしれないが、平時の時から構想だけは持っていもらいたいものだ。【彬」