6月の或る日、梅雨の合間、友人に誘われハイキングに出掛けた。埼玉県秩父市の、美の山辺り。美の山公園は紫陽花の名所。梅雨の季節の花といえば、紫陽花ということでそれを愛でるのが主たる目的ということになる。はたして、公園の紫陽花の群落はさすが美しくこの日は多くの人が訪れていた。
美の山公園までの、ハイキングコースは、日陰でジメジメしている。すると、コース脇に、ギンリュウソウを見つける。高さ7~8cmの茎の先に竜の頭の形の花のようなものをつけている。葉緑素を持たず、白っぽく半透明で蝋細工のよう。樹木に寄生する菌類から養分をえる腐生植物。道ぞいに点々と見られ、この植物に適した環境なのだろう。僕にとっては珍しい植物で、この日の収穫の一つとなった。
ところで、ギンリュウソウは、以前にも一度だけみたことがある。茨城時代に、或る墓地につながる道沿でのこと。数日後また見に行ったが、姿を消していた。別名、幽霊茸(ゆうれいたけ)ともいう。茸の一種とみられたこともあったらしく、言われてみれば、幽霊の姿にも見える。
梅雨の時期の花といえば、一般には、紫陽花ということかもしれないが、僕には、ドクダミに美を感じる。コップに一輪挿しが、梅雨時の風情である。たまたま、この日に、ドクダミの珍しい八重の花を見つけた。これもラッキーであった。
さて、普段の生活のなかでも、ある目的に向かい行動していて、その途中で思いもかけない、出会いや発見というものがある。そういうのが楽しいものだ。
絵はギンリュウソウ。
2020年6月25日 岩下賢治