3人乗り自転車
1~3歳の幼児を二人乗せる3人乗りの自転車がある。ハンドル位置に買い物籠のように一人乗せ、後部座席にもう一人乗せることができる。もちろん電動式である。育児に追われる母親には願ったりで、園の送り迎えに、活躍している乗り物である。
先日、親子が楽しめるイベントがあり、私はこの会の自転車の管理係を受け持ったのだが、狭い駐輪場に効率良く並べる手伝いをしながら、この種の自転車の自重が相当に重いことが分かった。これに子どもと自身が乗れば、操作は簡単ではなさそう。自転車にはバランスの維持にに工夫がこらされてはいるものの、私の自転車観とは相当に違う違和感があった。閑静な場所ならばいざ知らず、都会のど真ん中の、人混みの中でこの自転車に乗るにはかなりの勇気がいるのではないか。
そうしているうちに、このイベント中に雨が降り始めた。梅雨時で雨の予報も出ていたのである。さて、3人乗りの自転車はどうするのだろう。
すると、予備していた雨具で子どもの座席をすっぽり覆ったまではいいのだが、なんと母親は自分の傘を開いて、片手運転しようとしているのではないか。驚いた。私は大声で注意した。いくらなんでも無謀である。意見を聞いたのかどうか、やがて雨を避けるように首をすくめペダルをこいでいった。事故が起こらなければよいが‥‥。
人混みの歩道を、子どもを乗せた自転車を何度も目にする。しかも、かなりのスピードである。電動式だから、スピードを保持できるのである。
これ、私には運転のマナーの欠如ではなく、母親を急かせるものが何かあるからなのだろうと思う。共稼ぎの母親の場合、仕事と育児を両立させる切羽詰まった無意識があるにちがいない。育児はマンツーマンの生き方である。介護もそうである。急かされる情景に母親たちの悲壮さを感じるのだ。【彬】