サザンカ
私は千葉県の下総の出身である。利根川に沿った丘陵地帯である。そこでの特産物といえば、さつまいもや稲であるが、そんな中でユニークなのは落花生である。種類は半立(はんたて)。不思議な名前である。由来を調べてみると、葉が十分に立ち上がらず、横に広がるかららしい。
この落花生、暮れから正月にかけ、おやつやおつまみによく出る。かつて、出された。香り、味とも最高で、子供の頃は食べ過ぎてよくお腹を壊したものだ。
ところが残念なことに外形が不揃いで、収穫も一定ではない。中国産のものなどに比べると見た目はなんとも貧弱である。しかし味見が良いことから、中国産に比べると3倍の値段がついている。ちょっと手が出ない。時に思い切って買ってみると、昔食べた半立とはちょっと違うように思う。味が物足らない。
ひょっとして、炒りあげる段階で、中国産のものを混入しているのではないか、と疑ってしまう。
今、農産物は品種改良がどんどん進んでいる。近年話題なのはブドウ。シャインマスカットなどはこれが昔の青ぶどうか、と思うほど充実している。シャインマスカットのせいで、かつてトップブランドだった、巨峰はカゲを潜めてしまった。
果物に限らず、コメ、ムギ、トマトと、年々、ずいんぶん上質な作物ができるようになった。気候の変化もあるかもしれない。と同時に農家の栽培方法も、ハウスなどで数段向上している。
そんな中にあって落花生はどうしたものか、朗報が伝わってこないのである。粒の大きい「おおまさり」というのが最近出回っているが、味が特段いいものではない。私の好みではない。
千葉県農林試験場の技官の皆様には、ぜひ半立の多収穫化に取り組んでもらいたい。【彬】