いま、中高年の登山がブームである。80JC* のメンバーでも山登り、山岳マラソンがはやっている。
*80JC=私たちのランニンググループの名称。50数名が会員登録している。
なぜだろう?
登山というのは、現実の生活・街の雑踏から離れ、自然・別世界に遊ぶことで、憧れる人は多い。時間と金がかかるので、若いときできなかった中高年が、余裕ができた今、乗り出してきた、というのが普通の見方だろう。 80JCの中高年で、登山や山岳マラソンが盛んになってきたのは、平地のマラソンではタイムに限界がでてきて、新しい分野に挑もうという面もあろう。
わたし自身のことをいうと、19~30歳まで、盛んに登山をやっていた。今、思い返すと、若かった当時は山を楽しむというより、コースタイムを競ったり、難しいルートを攻略しようとしたりしていた。だが、2回の遭難を経験し、山はやめることにした。
12年前、自然の豊かな茨城に移り、山登りはやらないものの、自然を愛でる気持ちはいっそう強くなってきた。中高年になると、生きとし生けるもの、路傍の野草、かよわい虫たちに、愛おしさを感じることが多くなってくる。そして、身近な小さな自然を求め歩く道は、やがて高みに向い登っているのである。ああこうして、自然を慈しむこと、これがやがて山登りに繋がっていくのだろうか。
中高年の登山ブームはスポーツというより、若い時は希薄だった、自然へのより本質的で素直な気持ちが強くなり、それがテコになっているのだ、と思う。 私はこの中高年の登山ブームの中でも、山登りではなく、里山の自然に遊んでいる。昔の数々の山の思いでは胸の中にしまってある。
絵は北アルプスの春。 6月20日 岩下賢治