キバナコスモス
私たちは国の戦力とか、外交のことについては全くの無知である。当然である。私たちの日常生活からもっとも遠い国家機能だからである。
しかし、今回、たまたま黒人武士・弥助の話が話題で、その関係から外務省という組織が、海外の大使館でどんなことをしているのか、明らかになって唖然としている。私だけではあるまい。
大使館というのは、在留邦人の保護が主で、同時に相手国との各種通路を開き、良好にこれを維持するのが仕事と思いきや、スパイもどきの宣伝活動=プロパガンダもするのだと、恐れ入ったのである。
具体的に言うと次のようになる。すなわち、2018年の在モザンビーク大使・池田敏雄氏は挨拶で次のように述べた、とされている。
「1581年イタリア人宣教師ヴァリニャーノは織田信長に謁見した際に,従者として連れていた黒人を信長が召し抱えたいと所望したため献上しました。その黒人はモザンビーク出身であり,信長は弥助と名付け武士の身分を与えて家臣にしたと伝えられます。弥助は訪日した最初のアフリカ人とされています。」
これは問題となっている、トーマス・ロックリー(日大准教授・イギリス人)の『信長と弥助』(ネットゲームの原案にもなっている)をもとにしていると思われる。まず弥助がモザンビーク出身だというのはロックリーの想像で、何の根拠もない(最近は南スーダンと言っている)。外務省はカメルーンでも、上記のような観点から、「弥助展」をやって宣伝活動をしている、と言うのである。日本史の専門家にとってなら、弥助=カメルーンの黒人とか、全く根拠のないことは自明である。こんな事例を出して海外活動をしていることが驚きである。もともと弥助というのが曖昧である。それを外国でキャンペーンするなんで、とんでもないことである。外務省はこんな曖昧な史実で、外交をおこなっているのか。
外務の仕事がどんなものなのか、国会でもっと追求してもらいたいものである。岸田首相は外務大臣を長らく務めてきた。その経験が今日の活発な海外活動の背景をなしていよう。国会を疎かにして外交に力点を置く施政が、私には不快である。【彬】