絵=入沢光世
この夏、実感的には、いつもに比べて暑いように思う。35度なんて連発だ。
夏の暑さにまいるのは夜の温度である。できることなら、25度を下回ってもらいたいものである。こう暑くては、夜遊びもできやしない。
私の子供の頃は、夜は涼しくなって、寝冷えをしないように腹掛けするのが、風習だった。クツワムシなど、夜に捕まえにいくのだ。
で、東京の暑さで思うことがある。外気温と冷房された室内の温度差である。外の熱風に晒されて、涼しいところに移動するば、ほんとにほっとするが、しばらくすると足元や二の腕あたりがひんやりしてきて、震えがくることもある。気温の変化に身体が追いつけないからだが、これは温度の性質にも原因があるように思う。
大気の温度は日光だけでなく、空気に含んだ湿気に影響されている。我々の肌は、空気中の湿度に媒介されて温度を感じるのである。湿度が低ければ、多分30度の気温も平気なのである。
冷房された部屋で、嫌な寒気を感じるのは、そこが冷気、つまり湿気で充満した低温が蔓延しているからである。エアコンの使用は、冷房ではなく、除湿で行なってもらいたい。特に、電車など、極度に温度差が生じている場所はなおさらである。
クールビスなどという言い草が一般的になっているが、そんなエコ感覚で夏は凌げはしない。むしろ、皮膚と外気を遮断するクールウエアでこそ、夏服なのである。【彬】
*最近、パリ住まいの人から彼の地の気温を聞く機会があった。夏は30度を越すが、夜はほんとに涼しいそうだ。だから各家庭にはエアコンがないという。大陸型の気候なのだろう。