7月26日付けの、「この夏の読書」の続きになります。
この度、アンドレ・ジッドの「狭き門」、la porte etroiteを読み終わりました。夏の間にと思いましたが、少し時間がかかりました。最近、今までやってきた事柄を振り返り、総括しようとしている、そんな流れの中で、高校時代からの愛読書を読み返したもの。
この作品は、愛と信仰との相克を描いたもので、読むたびに感動する。フランス語でじっくり読むと、百年以上前の、中流社会の情景、匂い、息遣い、等が感じられる・・・・気がする。
最後の部分は涙をさそうものがある。それは・・・
主人公ジェロームとアリサは愛し合っていたが、アリサは信仰のため独り神への道をすすむ。そして病で亡くなる。死後10年経ち、ジェロームがアリサの妹、ジュリエットを訪れる。その二人の会話・・・・
Si je comprends bien, c’est au souvenir dAlissa que tu prends rester fidele.
Je fus un instant sans responder.
Peut-etre plutot a l’idee qu’ elle se faisait de moi…Non, ne m’en fais pas un merite.
Je cruneois que je ne puis faire autrement. Si j’epousais une autre femme, je ne pourrais faire que semblant de l’aimer.
……………………………………
……………………………………
Allons! Fit-elle enfin; il faut se reveiller……
Je la vis lever, faire un pas avant, retomber comme sans force sur une chaise voisine; elle passe ses mains sur son visage et il me parut q’elle pleurait……
Une servant entra, qui apportait la lampe.
私の理解するところ、貴方はアリサの思い出によって、独身を貫いているのね。僕はしばらく返事をしないでいた。むしろ、アリサの僕への考えに対してなんだ。いや、僕をそんなに貞節な人と見ないでくれないか。僕はそれ以外のやり方ができないんだ。もしほかの女性と結婚していたら、その人を愛しているふりをしているだけになるんだ。
..........
.........
「さあ!」ようやく彼女が言った。「目を覚まさなければ。」
彼女が立ち上がるのを見た。一歩前に進み、力なく近くの椅子に倒れ込んだ。彼女は顔に手を当てた。僕には泣いているように思えた。・・・・・
女中がランプを持って、部屋に入ってきた。
日本語は岩下訳
2022年10月17日 岩下賢治