サクラ
私は70代の老人だが、知人などで年齢が60代だという人がとても若い風態なのにびっくりする時がある。それだけ寿命が伸び、元気な老人が多い。以前なら60代というと死も近い相当な老人だと思われたものだ。公務員の定年が60歳なのだから。寿命は本当に伸びた。平均寿命は男女とも80歳を超えたし。
寿命が伸びたのは、医療が充実したからだという説が多い。確かにそうだろう。でも私には医療を含め、文明の発展に大きく依存していると思う。以前は時代に追いつけない老人は、かえって早死にすると言われていたものだ。
その文明だが、衣食住でいえば、住まいが大きく変わった。昔の住宅は木造で、隙間だらけ。それがコンクリート住宅になり、外気を遮断し、電気のおかげで夏・冬の寒暖は難なく越せるようになった。薪やコークス、石油を焚いて暖をとっていた時代のように煙を吸うこともない。昔、年寄りは冬場に多く死んだものだ。寒さを凌げなかったのである。
洗濯機や冷蔵庫の普及も大きい。洗濯機のお陰で、毎日清潔な衣服を着ることができる。冷蔵庫も食品の保存に寄与し、栄養摂取のあり方を大きく変えた。
こうして私たちは文明の恩恵を受けているわけで、それらの機器は全てエネルギー源を電気に依存している。電気なしには成り立たない。電気が簡便に容易く利用できるようになったことが文明を支えているわけだ。
原発事故の時、「たかが電気」などとのたまわって無知を曝け出し、顰蹙を買ったミュージシャンがいたが、電気こそ現代社会の基礎なのである。
電気を活用するには、まず電力を作り出さねばならない。その電力を創造するプロセスは、例えば水力にしろ、火力にしろ、原子力にしろ、私たちの目には見えない。電気そのものが見えないからである。だから私たちには電気は無尽蔵でタダのように思える。
先頃、再エネの補助金が減額されると決定されたそうだ。その分、電気代が安くなるとのことだが、電源もそうだが、電柱から送電線を含め、文明の基礎である電気を、実感あるものとして、把握したいのものだ。【彬】