プラタナスが実をつけています。
私は、スポーツが大好きだ。するのも好きだが、それ以上に観るのも大好き。上手い下手はあるが、アマチュアからプロに至るまで、それぞれに面白い。勝負事だからではなく、身体の動きを見ることは、例えば動物の動きを見ることと同じように、刺激的だからである。
だから我が家のテレビはいつもスポーツ番組がかかっている。今、好んで観ているのはテニス。錦織選手の活躍のおかげで、世界中のトップイベントが容易く見られるようになった。知らなかったが、テニスは非常にハードなスポーツだ。特にグランドスラムと言われるビッグイベントは5セットマッチ。試合時間が4~5時間に及ぶことがある。それを一人のプレーヤーがこなすのである。しかも、連日。
そんなテニスの醍醐味は、選手の激しい息遣いや掛け声、シューズの滑る音、スマッシュを打ち込む鋭い打球音などである。これは集音マイクのせいではない。プレー中、観客が囁き声をも控えるような静寂さで見守ることの結果である。主審もサーブを打つ瞬間は会場のざわつきを抑えて、サンキュウ、メルシーと、マイクで制する。
こうした静寂の中でのプレイは、テニスばかりではない、バトミントン、卓球、バスケット、フェンシング、剣道、それにラグビーも加わる。
観客は興奮しながらも静かに試合を見守る。そして1プレーが終わると、拍手喝采。変に掛け声をかけると、卓球のようにアドバイスしたと退場処分が出ることもある。選手自身も声援には振り向きもせず、ひたすら試合に没頭する。
これとは反対に、最初から最後まで騒がしいスポーツがある。野球、サッカーだ。選手は応援があったから勇気が湧いたなどと言ってはいるが、本当だろうか。私はこうした応援の騒がしいスポーツは、見ることは見るが、好きではない。Jリーグの観戦に行ったことがあるが、双方の応援団がうるさすぎて落ち着いて席に座っていられなかった。高校野球などもうるささの最たるものだ。わざわざブラスバンドまで引きつれていく。
野球で言えば、1プレーが終わるまでは、シーンとして観戦できないものなのか。投球がミットにおさまる激しい音や、芯でとらえた時の打球音など、本来背筋を凍らすにたる音なのである。
私はスポーツは静寂の中で観戦するのがベストだと思う。
競技と観客は一体とは思う。が、両者は厳然と区別すべきものである。選手は競技に没頭する。その区別があるからこそ選手への尊敬の念が発生するのであって、拍手をもらうことで人気が出るわけではない。ところが応援とは無縁だと思われていた陸上競技の中で、逆に観客に拍手を求めるロングジャンプの選手がいるようになった。そういう時代なのか。
オリンピックが近い。この機会に、観客としての高ぶった意識を、じっと抑え、プレーを心底味わう習慣を養いたいものだ。どんなスポーツでも一流選手のプレーは、観るものを感動させるものがあるものなのだ。【彬】