赤岳山頂の南斜面から見た横岳。稜線が登山道となっている。北斜面は岩場が多く、特に急峻である。途中にあるのは山小屋・展望山荘。周囲の緑はハイマツとシャクナゲの群生。岩場にはコマクサも群れをなして咲いている。
この数年、友人に誘われて夏山登山にいっている。
今年は長野と山梨の県境にある八ヶ岳の山塊の主峰をなす赤岳(2,899m)、横岳(2,829m)に挑戦した。
私は山男ではないが、自分の脚力の衰えを知るちょうどよいバロメーターであることを理由に登っている。ピッチが遅くなって、この数年の衰えは隠しようがない。とはいえ、この山は想像以上に急峻で、切り立った稜線は左右が岩場で、鎖と鉄ばしごの補助なしには登りようがないものだ。特に北斜面はぞっとするような深い谷で、岩にへばりつきながら眼をそむけて、そろりそろりと歩むほど。天候に恵まれたからよいものの風にでも吹かれたら素人では前に進めないにちがいない。
こんな山だからだろう、年配者のツアー登山者にはほとんど遭遇しなかった。しかし、70歳近くの高齢夫婦が登ってきたり、女性の登山者も多くみられ、山の魅力がブーム以上のものであることが実感された。
かつての登山はアドベンチャーであったろうが、現在の登山は装備などが改善され、明らかにレジャーとなっている。山小屋の設備もずいぶんと改善されて、トイレなども清潔になった。でもまだまだである。山稜の空気や風景を単に愛でるためのものではなく、楽しいスポーツとして位置づけられるような環境に早くなってほしいものである。【彬】