ホタルブクロ
こんなにも暑いのに夏の象徴とも言える蝉のたぎりきった鳴き声が聞こえない。いくつか脱殻を見つけたから、蝉はいることいるのだが、途切れ途切れの鳴き声も弱々しく響くだけである。
私が初鳴きを聞いたのは、7月21日、弱々しいミンミンゼミだった。普通だとニイニイゼミが最初で、次にアブラゼミ、ミンミンゼミと続くはずだが、アブラゼミは依然として聴こえてこない。
地中に何かが起こっているのだろうか。
昆虫の専門家である小松貴さんは、
「セミに限らず、昆虫が成長するためには温度の積み重ねが必要なんです。これを有効積算温度といいます。昆虫は変温動物ですから、外気温の変化に左右されるんですね。種によってその有効積算温度は違いますが、幼虫やサナギから羽化するまで、トータルで一定の温度を積み重ねなければ成虫になれない。しかも有効温度帯というのもあって、極端に寒かったり、逆に暑かったりすると、それはカウントされないんです。今年の春先は例年にも増して寒かったですから、急に暑くなったとはいえ、数日間の気温の急上昇では間に合わない」(デーリー新潮)
地中の温度が揺れ動いていて、変温動物が活動する条件が整っていないのではないか、と言うのです。変温動物は環境の温度が一定の温度に治まっていないと活動しないそうで、あまりの高温や低温の中では、その温度を切り捨てるそうだ。だから彼らは急に暑くなっても、活動する適温と感じないのだろう。
蝉は暑いのは大好きなのか、と思っていたのだが、そうではないらしい。
大気の温度も異常だが、地中の温度も不安定なのだろう。変温動物にとっては大義だ。
そうこう思っていると、先週末にはヒグラシの鳴くのを聞いた。もっとびっくりなのは晩夏を知らせるはずのツクツクボーシの鳴き声を聞いた時だ。まだアブラゼミは鳴いていないのに。
地中を含め、大気はひどく流動的のようである。【彬】