本稿は『在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい』から
一部抜粋・再構成してお届けします。
☆「病気」よりも「やせ」が危ない?
高齢の親に、できるだけ長く健康でいてもらうために、
いちばん気をつけておかなくてはならないことは何なのか、みなさんはご存じですか?
じつは、もっとも注意すべきが「低体重」、すなわち、「やせてしまうこと」なのです。
日本には、60代を過ぎ、70代、80代の高齢になると
「もういい年なんだから、年相応、少ない量を食べればいいんだ」
と食事量を落とし、体重を落として、やせていってしまう人が少なくありません。
ただ、やせて体重が落ちてくると、
低栄養状態になり、筋肉量が落ち、運動機能が低下していく・・・。
そういう悪循環にハマって、どんどん弱っていってしまうケースが非常に多いのです。
高齢者にとって低体重が危険なことは、データにも表われています。
みなさん、BMI(ボディ・マス・インデックス)をご存じですね。
そう、身長(m)を2乗して、体重で割ると求められる値です。
一般的には、BMI22が、病気のリスクがもっとも低くなる「標準体型」とされていて、
BMIが25を超えると「肥満」、18・5を下回ると「やせ」とされています。
ところが、高齢者の場合、BMI27の「ちょい太め」、「軽度肥満」くらいが
もっとも死亡リスクが低くなるのです。
つまり、高齢者の場合、「BMI22の標準体重=いちばん健康」とは限らないということ。
文部科学省の研究班が65~79歳の高齢者を11年間調査した研究では、
「男性はBMI27・5~29・9、女性はBMI23・0~24・9のとき、
いちばん死亡リスクが低い」という結果が出ています。
また、この研究では、高齢者では太っていると、死亡リスクが低くなり、
やせていると死亡リスクが高くなる、という傾向も明らかになっています。
さらに、全国の訪問看護を利用している高齢者のBMIを調査したところ、
BMIが18・5にも満たない低体重の人が、60%にも上ることがわかりました。
しかも、BMI16未満の「重度のやせ」の人が28%もいたのです。
これは、ガリガリにやせてしまった危険なレベルで、
女性の場合、BMIが16未満だと、BMI22の人に比べて、
死亡リスクが2・6倍にアップすることもわかっています。
このように、日本には、やせすぎによって健康を危険にさらしている高齢者がたくさんいるのです。
☆やせていると「肺炎」や「骨折」のリスクが急上昇
高齢になってやせてしまうことが、なぜ危険なのか。
それは、筋肉量が減少して「サルコペニア」や「フレイル」につながりやすくなるからです。
サルコペニアは「筋肉減少症」とも呼ばれ、
運動機能に支障をきたすほどに、筋肉が落ちてしまう現象。
フレイルは、「虚弱」と呼ばれ、運動機能だけでなく、認知機能も衰えて、
要介護や寝たきりの一歩手前のような状態になることを指します。
やせて体重が落ちると、こうした衰えが進みやすくなるうえ、
転倒して骨折をしたり、肺炎になったりするリスクがたいへん高まります。
低栄養でやせた高齢者は、たいへん骨折や肺炎に陥りやすく、
骨折と肺炎は、在宅高齢者が救急車で緊急入院する理由のじつに45%を占めています。
しかも、やせていると、「入院する」ということ自体が大きなリスクになります。
やせた高齢者が、衰えが進み始めた状態で入院してしまうと、
とても高い確率で、身体機能や嚥下機能、認知機能が低下してしまうことになるのです。
高齢者が入院すると、基本的にベッドの上で安静にしつつ、
検査や治療のために食事制限をされることになります。
とくに、誤嚥性肺炎を起こした患者は、口からの食事を止められるのが一般的です。
すなわち、ろくに動かず、食事も満足に食べられない状況が続くうち、
筋肉や体重が落ち、てきめんにサルコペニアやフレイルが進んで衰弱していってしまうのです。
低体重の人は、とりわけ衰弱の進行が激しく、
アメリカの研究では、やせた高齢者が入院すると、
死亡のリスクが4倍に上がるという報告もあります。
そのため、やせた高齢者が入院すると、それっきり家に帰れなくなるケースも少なくありません。
たとえなんとか帰ってこれたにしても、体力や筋力がガクンと落ちた状態での帰宅となり、
そのまま寝たきりになってしまうケースが目立ちます。
おそらく、みなさんの身近にも、入院をきっかけに一気に衰えて、
そのまま亡くなってしまったお年寄りが、いらっしゃるのではないでしょうか。
☆世界の高齢者はもりもり食べている
では、骨折や肺炎を防ぎ、サルコペニアやフレイルに陥るのを防ぐため、
高齢になった親に、どんなことを勧めればいいのでしょうか。
そのもっとも効果的な対策が「しっかり食べて、体重を増やすこと」なのです。
私は15年以上、在宅医療の専門家として6000人を超える高齢の患者さんを診てきました。
また、世界各国の高齢者施設を訪ねて、どのように食事や健康を管理しているのかを調べてきました。
そうしたなかでたどり着いた結論が「太っているお年寄りほど健康」ということなのです。
はっきり言って、こんなにも「やせた高齢者」ばかりが目立って多いのは、
日本だけのようなもの。
世界各地の高齢者施設を訪ねると、たいていどの国でも長生きをしている健康なお年寄りは、
みんなもりもり食べて、コロコロと太っています。
たとえば、中国の上海のある老人ホームでは、
平均年齢85・2歳、平均BMIは24・7の元気で自立した高齢者ばかり。
出されていた食事は、肉などの動物性たんぱく質が5品に、
油で炒めた野菜が1品、たっぷりのごはんに汁物・・・。
書き並べただけで、かなりボリューミーであることがおわかりいただけると思いますが、
このメニューをおかわりする人も少なくないそうです。
日本の高齢者と比べると、食べている量にかなりの差があることがおわかりでしょう。
また、日本の高齢者の場合、やれ「脂ものの摂りすぎは、よくない」とか、
やれ「添加物やジャンクなものは、避けたほうがい」とかと、
口に入れるものを自己規制してしまっている場合が多いのですが、
世界の長寿者は、そんなことあまり気にせず、
自分の好きなものをもりもり食べている傾向があります。
つまり、高齢になってきたら、食事で大事なのは「質よりも量」。
高齢者にとっては、とにかくたくさん食べてカロリーを蓄え、
体重を増やしていくほうが、健康長寿につながりやすいのです。
それに、もりもり食べて、体重や筋肉量をキープしていれば、
運動機能をあまり低下させずに済みます。
また、筋肉がしっかり保たれていれば、
転倒して骨折をするリスクも小さくなりますし、嚥下機能もキープされ、
誤嚥性肺炎のリスクも小さくすることができます。
さらに、しっかり食べて体重をつけている高齢者は、
仮に入院したにしても、あまり衰えることなく自宅へ帰還して、
わりとスムーズに回復できるケースが多いのです。
私の診てきた高齢の患者さんにも、太めの体型の人には、
あれこれ病気を抱えながらも、健康コンディションを良好に保って
長生きをしてらっしゃる方が少なくありません。
☆若いときと高齢期では健康常識が「180度」変わる
ですからみなさん、もし老齢の親の衰え加減が心配になってきたなら、
とにかく「よく食べて、体重を増やすこと」を勧められてみてはいかがでしょう。
目指してもらうのは、BMIが標準よりも高めの「ぽっちゃり肥満体型」。
人間は、しっかり食べてこそ、長く健康に生きられる生き物なのです。
ただ、高齢の親にはたくさん食べて太ることを勧めても、
みなさんご自身は、あまりマネしないようにしてください。
若い世代や中年世代など、まだ問題なく体が動く現役世代は、
やはり、健康のために、太りすぎないよう注意していくほうがいいのです。
現役世代の方々にとっては、やはりBMI22くらいがもっとも病気になりにくいライン。
若くて元気なときと、高齢になって衰えてきてからでは、
健康をキープするために守るべきことが180度変わるのです。
ぜひ、その点をしっかり押さえておくようにしてください。・・ 》
注)記事の原文に、あえて改行を多くした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/4a/f299fccd286fde36bcbadfd0bca6a4c7.jpg)
《・・高齢になると『もりもり食べる』のが正解・・》に関して、多々教示されたりした・・。
何かと制約の多い中、私は体重が数キロ増えて、
今年の6月頃より、食事の時に御飯とかブタ肉とかロースト・ビーフの量を減らして、
コンニャクを温めて焼き肉のタレを加味して少し炒めた簡素な料理、
そして『トコロ天』を加えて、間食は中止として、過ごしてきた・・。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/7a/eb6770bf83660ff627b02cc00a1ba463.jpg)
私はあと3年過ぎれば、生かされていれば満80歳となるが、
何とか健康寿命で迎えたい、秘かに念願している・・。
もとより私の自助努力は大切であるが、
私の友人、知人の多くが、この世を去った今、