薄手のセーター1枚で過ごせるくらい暖かい。2年前は伊吹山が冠雪していたのに。昼間は調子よく過ごしている。夜はなんと汗をかいて目が覚める。目が覚めると、昼間とは違うバージョンになる。様々な感情が出てきて、眠れなくなる。少し本を読めば眠れるので楽だが。
イッセイ尾形の「とりあえずの愛」のなかに、花とカルピスの君という短編があった。夫はプロの登山家で、事故に遭い半身不随で車いす生活をしている。妻はシナリオライターで生計を支えている。ある日、二人は交通事故を住まいのマンションから目撃する。若い女性がヘルメットをかぶってまま事故に遭い死亡した。翌日から自己現場の横に瓶に入った花(ガーベラ)と缶詰のカルピスが添えられていた。二人はそこから花を飾る人をいろいろ想像し始める。おそらく、彼女の恋人でないかと。男の人がガーベラを飾るなんてとか。双眼鏡を使いながら夫婦はそのうち唇の動きから何を祈っているのか想像するようになる。ある日、若い男の人は女性を伴って花を捧げに来る。この人は誰だろうとしきりに想像し合う。新しい恋人かな?いや、お姉さんじゃない?在宅で過ごす時間の長い二人はささいな行き違いをしながらも、この想像を楽しみに日々を過ごしていく。そして、ある日この男の人と奥さんが会うことができて、男の人になぜ花とカルピスを供えるのか質問した。
「でえ、その質問なんスけど、俺ってえ、マジで恋人とかじゃないんスよ。」で始まる答えだ。大学の同じサークル(バトミントン部)の後輩で、彼がこの近くに住んでいるんで、サークルみんなで49日まで供養することになったという。それで近いので自分が一番供養に訪れたそうだ。ガーベラとカルピスは彼女が明るい子だったのでサークル女子が決めたという。
その話の後、夫婦は「えっ!恋人でなかったのか!」と大声で笑ったそうな。はっと思った。親友が彼とのことを「所詮、自分の心の中の妄想の世界なのよ。彼もね」と。そうなんだよね、知っていることなんてほとんどないんだ。自分の想像の中の人を想っているに過ぎない。一緒に住んでいてさえもそうだろうなぁ。誰に対してもそうなんだから、自分の想像は自分の心の写しなんだ!と思った。
人を悪く言う(思う)のはやめよう。いい想像をしよう!ああ、あの人は人を悪く言わないなぁ・・・。そう思ったら、意地悪ばあさんと思っていた人も許せた。