
CD club 2月新譜
クミコが本家帰りでシャンソンを歌う。こんなにも自分の解釈で歌う歌手を、他には知らない。「ラスト・ダンス・・」などは、往年のコーチャンファンが聴いたらずっこける事疑いなし。
なぜ、彼女の歌はいいのか。以下は、彼女のこのアルバムを出す弁である。
『私が大事にしているのは、曲の中に生きている「人」や「風景」が立ち上がるまで歌うということ。どの歌にもそれぞれ主人公がいますが、「こんな人っているな」とか、「それは自分かもしれないな」とか、そんなふうに歌を立体化するためには、私自身の想いというフィルタを通すことが重要なんです。シャンソンが面白いのは、年を重ねたほうがその立体化がしやすくなる音楽だからです。若い人が歌っても何だか平面的に感じる歌でも、年を経てきた人が同じ言葉、同じメロディで歌うと、上手い下手とは別に、急に歌が立体化される。私自身、同じ歌でも年を重ねるごとに見えてくるものは全然違いますね。自分が年をとって、やっと説得力を持てるようになったかなと、この頃思うんです』
『人間は、最後には死ぬということと向かい合っていかなければならない。そのなかで、生き続けるために考え出したのが、歌を歌うということではないでしょうか。私はそのお手伝いをしていく。生きることは素晴らしいって何回でも思わせてあげたい、そして自分も思いたい。そうやって心が希望に向いているってことが私のすべてです。生きるということを俯瞰できるようになった今のほうが、歌自体もよく見えるようになりました』
『今回のアルバムに入っている歌を、ひとつひとつ短編小説や短編映画のように思って聴いていただけると面白いと思います。今はとても物語の少ない時代。歌自体にも深みのある物語は少なくなりました。その点、シャンソンには非常に面白い物語がたくさんつまっています。大人の方々の心を満たす物語が必ず一曲はあると思うので、ぜひ聴いていただければと思います』
1、わが麗しき恋物語
2、サン・トワ・マミー
3、愛の讃歌
4、愛の追憶
5、アプレ・トワ
6、夢の中に君がいる
7、もう森へなんか行かない
8、十八歳の彼
9、幽霊
10、雨降る街
11、愛しかないとき
12、帰り来ぬ青春
13、ラスト・ダンスは私に
