著者 今野 敏
出版 中公文庫
331頁
改版3冊 2015.10.10
任侠シリーズの第1巻。想像通りの面白さだがそれ以上ではない。箱根駅伝を除けば、時間を持て余し気味の三が日を過ごすにはうってつけ。
警察ものの第一人者が、一転してのコミカルな任侠もの。シリーズはこのあと、「学園」「病院」・・と続いている。とくれば、「博物館」「役場」「新幹線」「農場」・・と任侠ものの視野が無限に広がってくる。ミスマッチであればあるほど読者は喜ぶ。着想の良さと言えるだろう。
裏社会の生態がさりげなく書かれている。 " やくざが四六時中黒のスーツなのは、切った張ったの義理の世界。親分・身内・叔父・兄弟の葬式にいつでも駆け付けられるように " とか " 一人の時に鏡に向かって笑い顔の練習をしている" とか。
思うに、浅田次郎の『きんぴか』や『プリズンホテル』に刺激されての新境地の作品というところか。作者自身が面白がって書いているのが伝わってくる。