処遊楽

人生は泣き笑い。山あり谷あり海もある。愛して憎んで会って別れて我が人生。
力一杯生きよう。
衆生所遊楽。

私の祖国は世界です

2007-10-05 22:28:56 | 
玄順恵著 岩波書店(258頁)

良書である。著者は、在日コリアンの水墨画家で7月に75歳で亡くなった小田実氏の夫人である。小田は彼女を「人生の同行者」と呼んだ。
神戸生まれ。両親は韓国籍。7人姉妹の姉達は韓国籍、朝鮮籍。日本のほかに中国・ドイツ・アメリカでも生活。そこで出会ったさまざまな人たちとの交流や生活を綴った好エッセー。

人権抑圧からの解放運動や平和連帯の活動などを通して鍛えられた知性が、ひかえめながらも説得力をもって迫ってくる。

「神皇正統記以来、日本の支配階級における百済系出身者の痕跡は、まるで戸籍整理でもするかのように消し去られ、意図的に日本の純潔化が行われていったのだった」この表現、右翼がイチャモンつけないか。

「文化は決して歴史を書く側の支配階級からは生まれない。それは、無数の人間の生きた口から口へと伝えられるなかで、生成発展してきたものである」とさらりと言ってのける。

小田実のあとがきの一節
「最近、彼女がいつも日本に対して嘆かわしく思うのは、彼女の少女時代に付き合った日本は、もっと大きく、開かれた日本であったのが、今、日本人は誇りと自身を失ってきているのか、、その結果として偏狭な愛国心に毒された美しい国になりつつあるように見えることだ。
玄順恵が望んでいることは、もう一度日本があの時代のおおらかで懐の深い日本に立ち戻ることだ。私はそこに彼女の並々ならぬ日本に対する愛情を感じ取る」


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