太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

お迎え

2020-05-05 10:37:34 | 不思議なはなし
死ぬ前に、既に他界した家族などが現れることがある。
そういうケースがあまりに多いので、そのことについて研究している医師がいるそうだ。
それによると、お迎えが来るケースは、その人の年齢が上がるにつれて多くなるらしい。80代になると、半分ぐらいの人にお迎えが見えるという。
80代の女性は、先に亡くなった夫が迎えに来たが、「松の内はやめてくれ」と言ったら
「それならもう来ないから、一人で来いや」と言って帰って行った、とか。


その記事を読んで思い出したことがある。

昨年12月に亡くなった父が生前に、父の部屋にたくさん人が集まっていた、と言ったことがあったのだ。
それほど広くはない個室に、10人ほどの人が来て父を見ていたという。
それが何日も続いた。
彼らが誰であったのか、父に聞く機会はなかったけれど、父のよく知る人達であったと思う。
その話をするとき、父は楽しそうな顔をしていたという。
父が亡くなる、1週間ほど前のことだ。


ずいぶん昔の、母方の祖父の臨終間際のこと、母たち子供が見守る中で、
「ああ、ばあさんや、きてくれたかえ」
と言って微笑んで、息を引き取ったという。
私の母は、中学生のときに母親を亡くして、それから60年もたってから祖父が亡くなった。
祖母が亡くなったとき、祖母は「ばあさん」ではなかったはずで、
でも祖父は心の中でずっと祖母と会話をしていたのだろうと思う。


私の父が亡くなった、その夜、父が母のところに会いに行った。
母は、息を引き取ったあとの父に会っているが、その夜、改めて父が来た。
「さーちゃん(父のこと)、あんた死んじゃったってじゃん」
と母が言うと、
「おぅ」
父ははにかむように笑って言ったという。
それはいかにも父らしく、私はそれを聞いて嬉しくなった。


私たちがほんとうに何度も生まれ変わっているのなら、何度も死んだことがあるはずだけど、
毎回リセットされてくるから覚えていない。
初めてやることが不安なように、死んだらどうなるか不安になったりする。
けれど、何度も死んだ「わたし」がこうしているように
確かに死んだ人たちが、達者に(?)やっているように
なんだかしらないけど、大丈夫なのだ。


今、父のことを書いていたら、父が近くにいる気がすごくした。
体の芯のほうで鳥肌がたつ感じがして、あたたかい。

「おとうさん、私が死ぬとき迎えに来てね、頼んだよ」

声に出して言ったら、決壊したダムのようにダーッと泣けてきた。