太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

異次元にいった(かもしれん)猫

2020-05-17 15:11:42 | 不思議なはなし
家にいる時間が長くなって、今まで気づかなかったことに気づくようになった。
庭の樹や花とか、鳥たちとかも、そう。
今は渋滞がないので、夫が家を出る時間が遅くなり、朝6時ぐらいに起きても間に合う。
目覚ましはかけておくけど、だいたい鳥の合唱で目が覚める。
ちゅんちゅん、なんてもんじゃない、いろんな種類の鳴き声が一斉に、まさに「蝉時雨」ならぬ「鳥時雨」。
1年中を通して窓は開けたままなので、森の中で寝ているような感じ。
カーディナルやメジロ、ボウボウやシャーマなどの中で、ひときわ目立つ赤い鳥。

近くに行くと逃げるのでこれで精一杯

カーディナルの1種で、オスが赤で、メスはもっと地味な色。
ツーッツーッツーッ、という独特の声で鳴く。
緑の中で、彼の赤は目立つ。天敵がいないハワイならではかもしれない。
彼はどうも、モンキーポッドの樹の又のあたりに住んでいるようだ。


今日、不思議なことがあった。


お昼近くに、猫たちを外に出した。
30分ほどして、呼んだらボーイはすぐにやってきて家に入れたが、ガールがいない。
食い意地が張っているので、ドライフードが入ったコンテナをしゃかしゃか振りながら
「ごはんーーーー」(うちでは夫も猫には ごはん と言うのだ)
と呼べば、いつもならどこからか突進してくる。
縁の下にいることもあるし、ジャングルのほうから駆け上がってくることもある。
今日は呼べども呼べども戻ってこない。
そのうち帰ってくるだろう、といったんは家に入ったが、さらに30分後、再び探しに出る。
ジーンズをはいて長袖を着て、スニーカーを履いて、ジャングルの中まで行った。
竹林を分け入り、樹が密生している中を名前を呼びながら探す。

心配なのは車ではなく、イノシシとかムカデだ。
イノシシは姿を見かけたことはないけれど、ドライブウェイに足跡があることがある。
こっちのムカデは大きくて、毒も強い。
カメレオンのつもりでちょっかいを出して、ムカデに刺されて倒れているのでは、と心配になる。
声を持たないボーイは、危険を知らせることができないが、
ガールはおしゃべりなので、耳を澄ませてみる。


私の妄想は悪いほうにとめどなく広がってゆく。
食いしん坊だけど、おしゃべりだけど、世界一かわいい猫なのに・・・
窓からこっちを見ているボーイに
「あんたの妹、どっかに行っちゃったよぅ」


「かみさま、チーズケーキを無事に返してくださーい」
頼むのは神だ。

毎日話しかけて、悩みなんか打ち明けているモンキーポッドに頼んでみる。
「チーズケーキが無事に元気に帰ってくるように助けて」

私はドライフードが入ったコンテナを抱えたまま、モンキーポッドの下の木陰にいた。
心地よい風が吹き、晴れ上がった空を見上げていた私は、
ふと斜め後ろを振り返った。
何もない芝生の上に、突然、ガールが現れた。



ここが不思議なところなんだけど。



ガールはどこからか走ってきたのではなく、何もないところに現れた

ように見えただけで、私がまばたきをした間に走ってきたのではないかとか、
30分以上も庭にいて、脳が沸騰してしまったのだろうとか、思ってもみたけど、
やっぱり、突然そこに現れたように思えてならない。
首を傾げつつ、ガールを家に連れて入った。
少し頭を冷やしてから、夫にそのことを話してみた。
黙って聞いていた夫は、言った。

「庭のどこかに異次元のポータルがあるのかもねー」

今、Different Dimension(異次元)って、言った?

「そんなこと、あるのかなあ」

「あっても不思議じゃないよね。まばたきしている間に走って来れるほうが不思議だと僕は思うけどね」

さらっとそう言われてしまうと、何と言っていいやら。


お願いをきいてくれた神と、モンキーポッドにお礼を言った。
モンキーポッドさん

植物は、黙っているけれど、私たちが思うよりもずっとたくさんのことを知っていると思う。
そして、そう思って接していると、何となーく通じるものがあるような気がしてくる。
たとえばハワイはそこいらじゅうにモンキーポッドはあるけれど、
うちのモンキーポッドは他のモンキーポッドとは明らかに違う樹だと思う。


異次元にいった(かもしれん)猫は、おおせいにゴハンを食べ、呑気に昼寝をしている。

異次元の夢をみているのか。