職場の、売り場の商品棚の下には在庫品が置いてある。
そこからローションの入っている箱を出そうとして、手を差し入れたら、巨大なせせらぎがいた。
注)せせらぎとは「ゴ」のつく虫のこと。書きたくないのでせせらぎと呼ぶ
職場はジャングルみたいな中にあり、常時開け放しで、いろんな生き物が出入り自由。
せせらぎは土の中に巣があるから、見つけて駆除したところで焼け石に水である。
食べ物関係だけは倉庫の中に保管しているが、収まり切れない他のものはコンテナ箱に入れて棚の下においてある。
そのとき大変なことが起きた。
その巨大なせせらぎが、あろうことか私の腕を這ったのだ。
6本の脚が手の甲を這う、その感触・・・・・・
しかし私は、声ひとつあげなかった。まわりにお客様がいたからである。
私が忌み嫌う、あの虫が手を這ったのは、忘れもしない30年ほど前、日本でリサイクルゴミの当番をしていたとき以来である。
誰かが出した空き缶の袋の中から出てきたせせらぎが、私のゴム手袋の中に入ってしまった。
私も、一緒に当番をしていた人もパニック、阿鼻叫喚。
お客様がいるところでは、絶対にそんなことは許されない。
たとえアレが手を這おうとも、何もなかったかのように澄ましていなければならない。
私は澄ましてその場を離れ、早足でキッチンに行き(ドアの手前では走っていた)すごい勢いで手を洗った。
ハワイに来て、接客業について10年余り。
私もプロになったものだと感慨深い。