2018年6月30日の新聞が、神戸朝鮮高級学校の生徒たちが北朝鮮修学旅行で持ち帰った土産物を大阪税関関西空港税関支署が不当に押収した、とする記事を載せていた。それによると、
税関支署は「個別の事案については答えられないが、法令に基づいて適切に対応している」と発言。
税関関係者は、安倍自公政府は核実験などへの制裁措置として、北朝鮮からの全ての貨物について、経産相の承認がない限り輸入を禁じている。税関では旅客の土産品なども含め、そのつど経産省に確認している、と発言。
経産省貿易管理課は「個人の携帯品は、出国時に持ち出したものや旅行中に使用したと認められるものを除き、個別に承認する事になる」との事。
新聞が「不当押収」という言葉を使用しているので、税関が酷い対応をとった事を想像できるが、ここからは別の情報から、税関支所による「押収」が実際にはどのようになされたかを紹介しておこう。
まず、税関は生徒たちに『任意放棄書』なるものを強制的に書かせているのであるが、そのタイトルを「任意放棄」としているところには、呆れた事であるが、税関側(安倍自公政権)の責任回避のための姑息な手法であるという以外の何物でもない狡猾さが表れているとみるべきである事を押えておこう。ついでながら、メディアはこのような点も併せて報道する視点が必要である。もしこのような視点を意図的に排除していないとすれば、記事作成の視点がステレオタイプ化しているという事を示しており、それはメディアにとっては危機に陥っているという事を示している。それは柔軟で複眼的な思考をもって物事を理解判断しようとする読者の求めに応える記事内容にならないからである。
そして、フォトジャーナリストの伊藤孝司さんの取材(7月13日発行『週刊金曜日』に寄稿)によれば、
経産省は使用している物は押収(没収)しないと言っているにも関わらず、北朝鮮で購入し使用したスポーツウエアを押収している。また、日本で他人からもらって北朝鮮へ持って行ったポーチを、日本から持ち出した事を証明できないとして押収している。また、ハチミツ3ビンだけでも押収している。
そして、引率の教員のフェイスブックによれば、
泣きわめく女子生徒、悔しくて悔しくて怒りの抗議をする男子生徒。地獄絵図でした。税関の対応は「上の指示で輸入が禁止されているから」のみ。若干18歳の高校生に「任意放棄書」なるものを「強制的に」書かせる当局の方々には人の心がないのでしょうか。あまりの悔しさに、せめてクッションなどのお土産の紙だけでもと一枚一枚回収する男子生徒。ゲートを出た瞬間に泣き崩れていました(しかも飛行機の遅れもありゲートを出たのは0:00過ぎていました)。悔しさに今も眠れません。……もちろん、お土産を奪われたショックも大きいです。でも生徒たちが何に泣き、何に怒ったか。自分たちの「朝鮮人としての尊厳」に傷をつけた担当官、当局への涙、怒りであり、「モノ」への執着ではなかったのでしょう。結果は分かっていても、怒りに震え、私の手を何度も振り払いながら講義する生徒たちを見ながら、心の底からそう思いました。……
とありました。
このような税関の対応に対し、日本国内では朝鮮総連が翌日29日に安倍自公政権に抗議する会見を開き、国際統一局長が「日本政府が対話を望むならば、非人間的な措置をやめるべきだ」と主張している事を新聞は載せているが、抗議の声はこれだけではなかった。日本では報道していないが、韓国のソウルでは日本大使館に多くの市民団体の代表者が抗議に訪れ記者会見を開いていたのである。また、日本人の組織も税関や経産省へ抗議行動や抗議署名をしていたのである。
安倍自公政権の上記のような行政姿勢に対し、主権者国民の多くが「見て見ぬふり」をしているように見えるのは私だけなのか。