松井一郎市長(おおさか維新の会)下の大阪市教委は2020年8月25日、市立中学130校(在校生徒約5万人)が来春から4年間使用する「歴史」と「公民」の教科書について、2015年に橋下徹市長が引き起こした混乱騒動の中で採択した「育鵬社版」を止めて、「歴史」は東京書籍や日本文教出版を、「公民」は東京書籍や帝国書院などを採択した。2015年の採択時(橋下徹市長)にはそれまでの8採択地区を強行に変更し、市内全域を「一つの採択地区」として採択したが、今回は、今だ住民投票が済まず(私は住民投票反対派)、結果が未知数であるにもかかわらず、大阪市教委は、すでに都構想が実現するものとして特別区区割り案と同様の「4つ」に分けた地区ごとに(これは職権乱用行為であり、問題として取り上げなければならない)採択した。
また、採択にいたる経過として、15年の採択時には、「学校調査会」を完全空洞化し各教科書会社ごとに文章で「特に優れている点」「特に工夫・配慮を要する点」を報告するだけで優劣をつけず、学校としての採択希望が分からない報告となったが、今回は4つの地区の校長や教員らが、各社版の「優れている点」と「工夫・配慮を要する点」を調査し、市教委に答申する形をとった。そして、山本晋次教育長が「歴史」と「公民」の教科書について各4地区の答申内容を説明し、5人の教育委員(15年時の委員は今回の採択までに全員交代)からは異論はでなかった。ちなみに、不動産大手フジ住宅における教科書展示会アンケート事件を調査した市外部観察チームによると前回の教育委員は「教員らの答申を重視していなかった」と報告書にのこしている。
前回、育鵬社版を採択したが、今回他者版へ切り替えた自治体は、横浜市、東京都の都立中高一貫校、神奈川県藤沢市、大阪府の東大阪市・河内長野市・四条畷市、愛媛県の県立中高一貫校・松山市などである。
しかし、このような他者版への切り替え傾向は、手放しで喜べるものとは言えない。それは、06年の教育基本法の改悪、14年の教科書検定基準の改悪によって、教科書ごとの記述の差がなくなり、安倍自公政権やその補完勢力につらなる「教育委員」が育鵬社版にこだわる必要がなくなったという状況が生じているという事を示している事だからである。
※「育鵬社版」教科書採択問題の詳細については、拙稿カテゴリー「おおさか維新の会」内に、関係する内容を3本投稿していますので、ご覧ください。「おおさか維新の会」の体質と手法が顕わです。