2020年12月10日の新聞が「市立の高校 府へ移管」「大阪市議会 条例改正可決」という見出しの記事を掲載した。
市教委は移管により「府と教育のノウハウが共有できるほか、少子化が進む中で効率的な学校運営ができる」と説明。
ところでこの条例改正には重大な問題がある。それはこの計画は、大阪維新の会が推進していた11月1日実施した「大阪市廃止・4特別区設置」、いわゆる「大阪都構想」住民投票で「賛成勝利」を見越した上での計画であったからだ。そして、結果は「反対勝利」と決定したにもかかわらず、市議会(大阪維新の会と公明党で多数派形成)は「府へ移管」するための条例改正をしようとしたので、大阪市立高校教職員組合は今議会に改めて、「府への移管」は「民意に背く」として「中止」を求める陳情書を提出していたのであるが、市議会は採決する事なく、条例改正を可決したのである。
市立小中学校教科書の4採択地区決定もその根拠は市廃止・4特別区設置、いわゆる「都構想」である事が問題なのである。4採択地区と4特別区はまったく一致しているのである。
大阪市(当時橋下徹市長)は2015年の教科書採択で、育鵬社の教科書を市内全域で採択する事を目論見、採択地区をそれまで8採択地区であったのを、市民の反対を押し切って廃止し、全市1区とした。そして、その理由を「全市で教科書を統一する事で教科書研究もスムースになる」などとしていたのである。しかし、2017年3月に実施された市外部監察チームによる「教科書採択」調査報告で「不正の温床の一つは全市1区採択制度にある」と指摘を受けた。そのため市教委は2018年に「全市1区採択制度」を廃止し、2019年度小学校教科書採択より採択地区細分化を決定した。
2018年8月には吉村市長(当時)が「市教委事務局の4分割検討」を言い出した。その理由を「分権型行政の観点から、ブロック毎に現場の意見に沿った教科書の採択ができる、採択された教科書について児童・生徒の状況に応じた研究ができる」としたのである。しかし、「なぜこの4地区割りなのか」という納得できる合理的な説明はしていない。しかし、市教委も「4分割」を既成事実化して対応したという事である。上記のように、大阪維新の会の主張は支離滅裂で整合性がないのである。常識的には、「全市1区採択制度」を廃止するのであれば、それ以前の「8採択地区制度」を復活させるべきであろう。また、さらに細かい地区に分けたり、「市内24行政区各区毎に24採択地区」を設定するなどを検討してもよさそうに思うが、そのようにしようとせず、住民投票で否定された4特別区設置に合わせて4採択地区での教科書採択を強行しているのである。この事は大阪市24区行政区を実質骨抜きにし、大阪市民の大勢が、大阪市を廃止し、4特別区を設置する事を受け入れていくように既成事実を次々と作り上げているといえるのである。大阪維新の会は公明党と結託し、市民に気づかれないように、彼らの政治目的(政令指定都市・大阪市の廃止)を実現するために、公教育をも都合よく作り変えてしまおうとしていると言って良い。