関東大震災下、「朝鮮人が暴動を起こしている」というデマ「流言蜚語」の発生で、主導的役割を果たしたのは海軍船橋送信所からの発信であり、そのデマを全国に広め、「厳密な取締を指示」したのが、内務省警保局長・後藤文夫であるという。
〇9月2日午後8時20分 船橋 発電
「騎兵20名、7時半警戒の任につきつつあり、附近鮮人不穏の噂。」
〇9月2日午後8時28分 海軍大臣宛 横鎮長官発
「本日午前11時横浜着警備艇の状況報告の要領左の如し。
一、1日午前11時58分激震防波堤税関を破壊し全市の家屋倒壊し、爆発所々に起り不逞鮮人の放火と相俟て全市火の海と化し、死傷数知れず。」
〇呉鎮副官宛打電 9月3日午前8時15分了解 各地方長官宛 内務省警保局長 出
「東京附近の震災を利用し、朝鮮人は各地に放火し、不逞の目的を遂行せんとし、現に東京市内において爆弾を所持し、石油を注ぎて放火するものあり。既に東京府下には一部戒厳令を施行したるが故に、各地において十分周密なる視察を加え、鮮人の行動に対しては厳密なる取締を加えられたし。《この電報を伝騎にもたせやりしは2日の午後と記憶す。当時の衆人の印象はかくの如かりしなり。事後又は他地方の人には考えも及ばざるべし。》
〇鎮海要副官宛 9月3日午前8時30分了解 朝鮮総督府警務局長宛 内務省警保局長 出
「東京附近の震災を利用し、在留鮮人は放火、投擲等、その他の不逞手段に出んとするものあり。既に東京府下には、一部戒厳令を施行せるを以て、この際朝鮮内、鮮人の動静については厳重なる取締を加えられ、且内地渡来を阻止する様、御配慮相煩度。」
〇呉鎮副官宛 9月3日午後0時10分了解 山口県知事宛 内務省警保局長 出
「東京附近震災を利用し、内地在留鮮人は不逞の行動を敢てせんとし、現に東京市内においては放火をなし、爆弾を投擲せんとし、頻に活動しつつあるを以て、既に東京府下に一部戒厳令を施行するに至りたるが故に、貴府においては内地渡来鮮人についてはこの際上陸を阻止し、殊に上海より渡来する仮装鮮人については充分御警戒を加えられ、適宜の措置を採られ度。
9月3日午後4時30分船橋発電
船橋送信所襲撃の虞あり至急救援頼む、騎兵1ケ小隊応援に来る筈なるも未だ来らず。
(2023年9月12日投稿)